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問い: エビデンスを重視してマーケティングに成功している国内ヘルスケア企業はあるか?

答え

「現状どこも無いのではないか?」

詳細な問い

ヘルスケア"サービス"を提供している企業に絞って考えた時に、エビデンスを重視してマーケティングに成功している企業はあるのか?

例えば、アメリカの事例を見ると、Livongo Healthやwelldocは、HPに自前のエビデンスを掲示するなどして、医療費削減効果や疾患管理の効果を示している。(ex: 糖尿病であればHbA1cの値など)

また、この両者は経済的に見てもとても成功している企業であると言える。Livongoは上場後、Teladocにより買収されている。またwelldocもアステラスとアライアンスを組むなどして世界進出を進めている。

では、翻って日本の状況はどうか?そのようなプレイヤーは現れているだろうか?様々なヘルスケアサービスが登場してくる中でそのサービス品質(医療効果及び顧客満足度)は担保されているのだろうか?

エビデンスを重視する事はとても重要である一方で、それなりのいや、かなりの負担/コストがのしかかる。それをやり切った企業が市場でも報われると良いが、当然エビデンスの有無が直接売り上げに比例するわけではない。

果たして国内のヘルスケア企業でサービスの効果のエビデンスを示しつつ、そのエビデンスを持ってマーケティングに成功している企業はあるのか?いくつか思いたる企業のHPを見ながらこの問いの答えを考えてみた。

HPに自前の論文が掲示されている企業

CureApp
https://cureapp.co.jp/outcomes.html
=> 自前論文をいくつも出している

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PREVENT
https://prevent.co.jp/
Mystar
=> 基礎になっている過去自前論文あり

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類似論文を掲載していたり、アンケートベースでの結果/満足度を掲載している企業

バックテック
https://pocket-therapist.jp/
ポケットセラピスト
=> 社内実績

住友生命
https://vitality.sumitomolife.co.jp/
Vitality
=> アンケートベース

O:SLEEP
https://o-sleep.com/
=> 他社データを活用

ニューロスペース
https://www.neurospace.jp/service/biz
=> アンケートベースの満足度

Save Medical
https://medit.tech/save-medical-dainihon-sumitomo-dtx-for-diabetes-type2/
=> 大日本住友製薬と一緒に第三層試験を実施中

結論: エビデンス創出に取り組んでいる企業はあるが、それが果たしてマーケティングの成果に結びついているかどうかは疑問

上記に列挙しただけでも、いくつかのヘルスケアサービスの提供企業はそれぞれサービスの効果の根拠となるエビデンスの掲載を行なっている。

しかし、そのエビデンスの内容に関わらず直接的にマーケティングの効果があるかどうかは疑問である。少なくとも上場するレベルで売上や利益が上がっているという噂は聞かない。

もちろんCureAppなどはこれから保険収載されて、その後の売上がどうなるのかという未来はあるが。

この、「エビデンスを重視した結果、それがマーケティングに直接的に成果を出しているのか?」については、企業側を否定する意図はない。

むしろ、これからもっと市場と制度が成熟して、エビデンス重視の風潮がより強くなる事を願っている。

原因: 課題は市場構造にあるか?

エビデンスを重視してもなぜそれが直接的に売り上げにつながるような事が少ないのだろうか?原因としては以下の内容を中心にした市場構造にあるのではないかと考えている。

1. 医療機器認定を受けるハードルの高さ

(しょうがないけど)
医療機器認定されるよう、治験を行うにはハードルが高すぎて、その戦略を取るヘルスケア企業は少ない。(企業としてのエビデンス創出の力だけでなく、国や医療機関へのロビーイングやコネクションもある程度必要な世界だと認識している)

2. 医療機器認定未満のエビデンスは市場では評価されにくい

ヘルスケアサービスのエビデンス、特に医療費削減効果や疾患管理状況の改善効果に対して価値を見出すのは現状、医療費の支払い者である保険会社や健康保険組合が中心である。

しかしアメリカのような民間医療保険ではなく、国民皆保険制度がある日本では、保険収載されない範囲でのエビデンスを重視する構造にはなってないのではないか?

3. サービスの買い手のスキル不足

サービスの買い手側にエビデンスを評価する文化やスキルがまだない。toCでもtoB(特に健康保険組合や健康経営を実施する企業)でも同様な状況だと認識している。

例えば営業資料にエビデンスを説明するページを入れたとしてもほとんど読み飛ばされるだろう。きちんと読み解き評価できる人はとても少ない。

もちろん一部の買い手の中にはエビデンス重視の方もいるだろうが、少なくとも市場全体にそうした力学があるわけではない。

対策: エビデンスを重視するヘルスケアサービスの提供者は何に対して努力するべきか?

現状の市場構造では、自前でエビデンスを作り発信をしていく事は、コスパが良い状況だとは思えない。一方でその動きは止めるべきではない。市場が成熟し評価されるようになるまで耐える必要がある。

サービス提供者には、以下の動きが必要なのではないか

1. 自社のエビデンスをよりオープンに開示する事。そしてサービスのエビデンスを分かりやすく発信し伝える続ける事

2. エビデンスが評価される市場構造になるための制度設計をしてもらえるような、国に対する働きかけ(業界団体をつくるなど)

3. よりエビデンスを重視する企業が増えるように、エビデンス創出のためのノウハウのシェア

以上、何が現状の考えに間違いや指摘点がある方はTwitter( https://twitter.com/aritaku03 )の方にどしどしご連絡ください。

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