【共同親権法案】「国会は採決を急がず、熟議に努めてもらいたい」(社説2023年12月~2024年3月)
国会で審議中の共同親権法案について、4月以降、各紙が「拙速な法改正は許されない」などとする社説を続々と掲載していることをお伝えしました。【共同親権法案】地方紙が続々と社説 ―「拙速な法改正は許されない」「今国会成立にこだわるべきではない」
この記事では、昨年12月から今年3月までの各紙の社説をレビューしました。「DV対応に万全を期せ」など、「懸念材料を残したまま拙速に導入を決めてはならない」等、丁寧な審議を求める論説が掲載されています。
また、家裁の体制の拡充が不可欠であることも各紙が指摘しています。
3月8日の閣議決定以降、拙速に審議が進められており、各紙が指摘した課題はいまだ解決していません。
<各紙の主張>
(家裁の)体制を拡充し、準備を整えてほしい〔読売新聞〕
子どもに不利益が及ばないよう、議論を尽くす必要がある〔毎日新聞〕
懸念の払拭が不可欠だ〔秋田魁新報〕
あらゆる観点から慎重に審議し、改正案に足らざる点があれば補う賢慮ある国会審議を望みたい〔東京新聞〕
DV対応に万全を期せ〔静岡新聞〕
懸念材料を残したまま拙速に導入を決めてはならない〔神戸新聞〕
(家裁の)態勢整備や専門性の向上は不可欠〔山陽新聞〕
懸念の払拭が大前提だ〔徳島新聞〕
慎重さが求められるテーマであるという認識で、国会審議は行われなければならない〔高知新聞〕
国会は採決を急がず、熟議に努めてもらいたい〔西日本新聞〕
懸念の払拭が大前提だ〔沖縄タイムス〕
懸念の声に耳を傾け、法改正に当たってはより丁寧な議論を深めるべきだ〔琉球新報〕
※2023年12月から2024年3月の間に、離婚後共同親権などの家族法改正について社説を掲載した全国紙・ブロックし・地方紙は以下の通りです。
朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、産経新聞、日経新聞
陸奥新報、秋田魁新報、東奥日報、東京新聞、静岡新聞、京都新聞、神戸新聞、山陽新聞、徳島新聞、高知新聞、西日本新聞、熊本日日新聞、沖縄タイムス、琉球新報
【京都新聞】共同親権 子どもに最善の環境を
(2023年12月21日)
虐待など心身被害の恐れの重大さを踏まえ、実効性ある措置や運用を確保することは大前提になろう。
(略)
的確な家庭状況の把握や親との関係構築など、家裁の判事や調査官の役割はいっそう重くなる。人材確保と質の向上は不可欠だ。
【陸奥新報】共同親権導入へ「子どもの幸せと福祉を第一に」
(2023年12月28日)
共同親権の導入はあくまで一里塚であり、当事者同士がいかに子どもの幸せを優先するかが、制度を真に生かすカギになると考える。
【静岡新聞】離婚後の共同親権 DV対応に万全を期せ
(1月22日)
家族の形がかつてない変化にさらされる中、子の利益をいかに守るか考えるとき、DV対応は避けて通れない。被害者の不安を置き去りにしないよう、制度設計などで万全を期すべきだ。
【沖縄タイムス】「共同親権」導入へ 懸念の払拭が大前提だ
(2月1日)
DV被害者らは「そもそも力関係に差があり、対等に話し合えない」「話が通じない」ことを懸念する。家裁による判断についても、密室のDVや児童虐待をどのように確認するのか。
【朝日新聞】離婚と家族 子にとって最善の形に
(2月2日)
家裁は従来、養育能力、子への愛情、生活環境などを基準に親権者の決定に関わってきた。共同親権が選択肢になれば、父母が協調関係を続けられるかも考える要素に加わる。たやすい判断ではない。
関連法案は今国会に提出される見通しだが、家裁の態勢や専門性をどう充実させていくかも合わせて、議論を詰めなければならない。
【秋田魁新報】共同親権要綱案 懸念の払拭が不可欠だ
(2月3日)
詰めるべき論点は多岐にわたる。拙速は避けなくてはならない。さまざまなケースを想定し、懸念を一つ一つ取り除いていくことが不可欠だ。
【熊本日日新聞】離婚後共同親権 子にとっての最善追求を
(2月3日)
【東奥日報】子の利益守る議論尽くせ/離婚後の共同親権導入
(2月4日)
【毎日新聞】離婚後の共同親権 子どもの幸せを最優先に
(2月5日)
見直し案では、家裁の役割が重要になる。当事者の事情を的確に把握し、公正に判断するためには体制の充実が不可欠だ。子どもの安全に関わる場合は、慎重な対応が求められる。
子どもの意思に最大限配慮する手立ても欠かせない。
政府は今国会に民法改正案を提出する方針だ。子どもに不利益が及ばないよう、議論を尽くす必要がある。
【琉球新報】共同親権導入へ 懸念は払拭されていない
(2月5日)
家裁の役割が拡大することが予想されるが、迅速かつ適切に家裁が判断できる態勢も整備する必要がある。
家族の在り方や価値観も多様化している。さまざまな家族の形に対応し、子どもの利益を最優先するためにも、これら懸念の声に耳を傾け、法改正に当たってはより丁寧な議論を深めるべきだ。
【産経新聞】共同親権導入へ 健やかな成長守る環境を
(2月6日)
子供の健やかな成長を願っての制度変更が、子供のリスクになることは許されない。
父母が親権をめぐって合意できない場合には、家庭裁判所が審判を行う。暴力の有無や子供への悪影響などを考慮して単独親権とする。家裁は子供にとっての最善を的確に判断する必要がある。
【山陽新聞】離婚後の親権 子どもの利益どう守るか
(2月8日)
これまでも家裁は養育能力や生活環境を基準に親権者を決めており、今後、共同親権が導入されれば求められる役割は拡大する。両親間、親子間の関係の実態を見極めるために態勢整備や専門性の向上は不可欠だろう。
【徳島新聞】共同親権導入へ 懸念の払拭が大前提だ
(2月6日)
【西日本新聞】共同親権の導入 「子の利益」国会で熟議を
(2月11日)
3年近くにわたり37回の会議を重ねても議論は平行線をたどり、最後は異例の多数決に持ち込まれた。通常は全会一致である。
それほど懸念は根強い。国会は採決を急がず、熟議に努めてもらいたい。
【高知新聞】【離婚後の親権】子どもの利益を第一に
(2月12日)
共同親権への根強い不安は、法制審部会の開催の経緯が物語る。3年近くの審議期間、計37回の開催はいずれも異例の長さ、多さで、それでも見直し案の採決は賛否が分かれた。それだけ慎重さが求められるテーマであるという認識で、国会審議は行われなければならない。
論点の一つになるのが、家裁の体制だろう。共同親権を導入すれば、DVや虐待の有無なども含めた当事者家族の実態の把握、父母が対立した場合の申し立ての受理と判断など家裁の役割は重くなる。
【日経新聞】離婚後の子の利益が最優先だ
(2月16日)
子どもの健やかな成長を、父母が、そして社会全体で支えるためにさらに何が必要か、国会審議で幅広く議論してほしい。
【東京新聞】共同親権の導入 子の不利益生じぬよう
(2月20日)
仮に共同親権を導入するなら、DV防止など被害者を守る制度拡充をはじめ、問題を抱える家族への支援拡充が前提だ。あらゆる観点から慎重に審議し、改正案に足らざる点があれば補う賢慮ある国会審議を望みたい。最も尊重されるべきは子どもの利益である。
【読売新聞】共同親権の導入 「子の利益」確保を最優先に
(2月22日)
家庭裁判所が親権をどうするか判断することになる。家族の事情は様々で、裁判官が親子のあるべき姿を見極めるのは容易ではなかろう。
家裁に多くの案件が持ち込まれることが予想される。体制を拡充し、準備を整えてほしい。
【神戸新聞】離婚後の親権/子どもの幸せを最優先に
(2月22日)
法が成立すれば、離婚後の家族の在り方は大きな転換点を迎える。子どもの将来を左右しかねず、審議会では反対の声もあった。懸念材料を残したまま拙速に導入を決めてはならない。
【毎日新聞】養育費の不払い対策 子の利益につながるよう
(3月24日)
公的な関与を強める検討も続けるべきだ。欧米では国や行政が養育費を立て替えたり、強制的に徴収したりする制度を設けている。
子どもの利益につながる仕組みを設けるため、国会で議論を深める必要がある。
お読みいただき、ありがとうございました。
なお、過去の報道関連は、こちらのマガジンにまとめています。
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