ありがとう、ジッタちゃん。

こんにちは、有澤です。
プロフィールには「旅の話をする」と書きましたが、今日も旅と全く関係のない話をします。

明日でAdobeのFlash Playerの提供が終了しますね。
私は子供時代にゲーム機を親から買ってもらうことができず、ゲームをほとんどしないで育ったせいか、大人になった今でもゲームとは疎遠な日々を送っています。

しかしながら、そんな私が過去に珍しくハマったFlashゲームがあります。
その名は「Reisen」シリーズ(全10話)。
https://www.no1game.net/author/no1game/reisen/game001.html

「Reisen」と書いて『ライゼン』と読みます。ドイツ語で「旅行」という意味です。あ、旅と関係あるな!(ないよ)

タイトルこそドイツ語ですが、全編日本語で制作されています。
では、なぜタイトルがドイツ語なのかというと、「第二次世界大戦末期のヨーロッパ(ポーランドと思われる)の強制収容所にいるユダヤ人の女の子が、収容所から逃げ出してスイスに住むおばあちゃんのところへ向かう」という内容の脱出ゲームだからです…いや、のっけからヘビーだな!?

このあらすじだけ読むと、ゲームをしようという意欲が悲しみでメリメリと削がれていくのを感じる(そして読者がUターンしようとするのも感じる)のですが、ちょ、ちょっと待って!主人公のジッタちゃん、めちゃめちゃかわいいから!萌え系の絵柄じゃないけど(待て待て、Uターンするな)、サンリオ的な万人受けする絵柄だと思うの!一回でいいから騙されたと思って今すぐ上のリンクをクリックしてほしい。明後日にはもう見られなくなってしまうから。
本作がこんなにもシリアスな内容なのにゲームとしてのエンターテインメント性を失っていないのは、偏にこのほんわかとした絵柄のおかげだと思われます。この絵柄じゃなかったら、絶対にゲームの途中で心がベキバキに折れてたわ。

でもって、ジッタちゃん、めちゃめちゃポジティブなんですよ。
第1話で強制収容所を無事脱出できたものの、スイスに入国するまでは再収容の危険と隣り合わせの日々。しかも、ジッタちゃんの服の胸元にはユダヤの星が縫い付けられているから、街の子供たちに声を掛けただけでいじめられるし、お金がなくて食べ物が買えないから働こうとしても門前払いを食らう…書いてて涙出てきたわ。
でも、彼女はめげない。ちょっとネタバレになるけど、いじめられたときに出た鼻血すら脱出アイテムとして使うし、こんなにひどい目に遭い続けてるのに、街の墓地で(この戦争で亡くなった人のために最近作られたと思われる)新しいお墓を見て「生きてるって事は、すごいことだぞ」って言うんですよ…あれ、さっきと違う理由で涙が出てきたな。
どう育てればこんな明るくてポジティブな性格のこどもになるんだよ。後世のためにも、ジッタちゃんのご両親は子育て本を残しておくべきだったのでは。

やがて、底抜けポジティブガール・ジッタちゃんの人柄に惹かれて味方になってくれる人達も登場し、彼らと和気あいあいと過ごしたり、その生き様を垣間見たりしながら、お話は進んでいきます。

個人的な感想ですが、本作は脱出ゲームとしての体裁を取ってはいるものの、その本質は「人種・性別・社会的立場、その他一切の縛りや区別を超えて、互いの人間性を尊重することの重要性」をテーマとしたストーリー性にあるのではないかと思います。
なお、作者であるSNEEDLE氏は「Reisen」シリーズの他にも、紀元前1世紀ごろのローマを舞台とした「SPQR」シリーズ(http://www.no1game.net/author/no1game/spqr/game001.html)や、現代が舞台の「Dragon Girl」シリーズ(http://sneedle.xyz/index.html)も制作されていますが、各ゲームの根底には同じテーマが流れているように感じられます。

※「Dragon Girl」はSNEEDLE氏がご病気のため未完となってしまいましたが、最終話のあらすじが順次公開されているところです。病床からのサイト更新、本当にありがとうございます。

こうやって文章化すると引いてしまう人もいそうな重いテーマながら、ジッタちゃんをはじめとするキャラクターそれぞれの魅力や絵柄の可愛さ、脱出ゲームそのものとしての面白さとの相乗効果で、気が付いたら完走してしまっている不思議なゲーム。ゲームクリア時には、良質な少年少女向け冒険小説を読んだ後のような爽快感を味わえます。(※個人の感想です)
あと、ジッタちゃんのポジティブさはプレイヤーに伝染する。落ち込んでいるときにジッタちゃんのことを思い出すと、なんだか前向きになれるような気がする。無理なときもあるけども。

この年末、Flash Playerが動くパソコンと時間だけはあるぞ、という方は、ジッタちゃんに会いに行ってみてはいかがでしょうか。

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