『三十の反撃』この数字に敏感なあなたは読むべき
9月3日といえば「セプテンバーサン」を思い出すRADWIMPSファンの方もそうでない方も、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
中学生の時、RADWIMPSの大ファンの友人がCDを貸してくれ、聞いている内になんとなく好きになった、そんなバンドが今や超人気バンドになっており、気後れも甚だしいのですが、時折聴くと心地よい。そんな僕はセプテンバー。
さて、小話はほどほどに現実への直視と共にお届けする一冊『三十の反撃』。
以前紹介した『アーモンド』と同じソン・ウォンピョン著。韓国の小説です。
タイトルの三十は年齢でございます。
敢えてアラサーと自称しない私ですが、なぜなら言ってしまったが最後、老け込んでしまう気がするからなのだけど、現実として刻一刻とその
20代から数字が少し変わっただけで、一気にインパクトが増すわけですが、自分がついにその大台に乗ったことは現実として受け止めなければならないので、読まざるを得ないタイトルでした。
結論、すごく良い。おすすめ!
読み始めた動機はなんとも言えないけど、軽快な書き口と時系列の運びのお陰でスルスル読めた。
ストーリーも面白い。でも、それ以上に色々な考えが詰まっていて興味深い。
加えて、ことわざや言い回しの中に韓国の文化や歴史を知れる。
恐れ多いながらも訳が惜しい、と思ってしまった『アーモンド』と違って、今作はそれを微塵も感じなかったのも良き。
もしかしたら、自分を重ね合わせてみて、人生を見つめ直してみる人や、勇気をもらう人もいるかもしれない。そんな読み方もできると思う。
29歳、意地でもアラサーとは言わず、20代ラストイヤーを貫いたけれど、何故なのだろう、30歳という響きのパワフルさ。たった1つ数字がプラスされるだけなのに。
私は30歳まで正社員に落ち着かない、と宣戦布告していた。
新卒の就活をせず、フリーターして、旅して、鬱になって、働いて、旅して、大学院行って、勉強三昧して、修了して、コロナのせいで海外行けなくて、だから働くことにした。
そんなわけで、29歳と2ヶ月で正社員になった。
30歳待たずに定職に就いてドヤ顔だったけど、宇宙人が江戸時代に行ったくらいの認識のギャップが、私と会社の間にあり、半年後には求人検索を始めてしまうようなところで。就職ミスったなあ、と転職意欲満点だったのだけど、冷静に考えてオフィスワークが向いてないことに気付いて、フリーで働けるスキルを身につけることにした、という現状。
なんとなく30歳までなら自由にしていても許されるかな、と今までは思っていた。
でも、別に何歳になっても自分の好きなようにしたらいいんだって最近気付いた。
ゆとり世代ど真ん中なので。
って言ったら真面目に頑張っている同年代に怒られると思うので、それは冗談ということにしておく。
都合よく人生を解釈している私と違って、主人公のキム・ジヘは履歴書送りまくってて偉いなと思う。
履歴書を送るという行為がそもそも勇気を要する。
生産性を求める経済活動で形作られた社会に求められていないことへの反骨精神、というわけではないんだけど、私の場合は学びたいことがあまりにも多すぎる。
中国語マスターしたいし、そのために中国に留学したいし、もっともっと色々な国に行きたい。プログラミングも勉強したい、バルも開きたい。
どんどん話にまとまりが無くなってきたところで、そういえば三十と言えば、私が旅した国の数であることに気付いたので脱線を続ける。
私的には国の数なんてどうでもよく。
あまりにも質問されるから、数えてみたら30だったというだけ。
何回も行っているスペインも、一度しか行ったことのないシンガポールも、ローマしか行ってないイタリアも、いくつかの街を回ったミャンマーも、同じカウント。
記念すべき30ヶ国目のロシアも、行ったのはサンクトペテルブルクとモスクワだけ。
スペインでも知らない街はたくさんある。
そもそも、住んでいる日本でさえ行ったことのない地は五万とある。
等々。
何が言いたいって、プロフィールに「旅した国は30ヶ国」って書いているけど、あくまでも分かりやすさ重視の便宜上であることを強調したいってこと。
そうは言いつつも、往々にして「スペインは~」とか大きな主語で語ってしまいがち。でも、それって色々な大事なことをこぼしてしまうから、気を付けないといけない。
何事も一般論では語れないから。
なんか、あまりにもキム・ジヘの話から逸れてしまったけど、最後に痺れたセリフを紹介。
「誰でも心の奥底に、いろんな姿をした人が何層にも重なってたくさん入ってるってことを」(p.266)
マトリョーシカを出会ってきた人に重ねる、ユ・チーム長のセンスが光る一言。
家の玄関に飾っている、モスクワの広場で買ったマトリョーシカを見ながら、次ロシアに行った時はたくさん買おうと決意。私も真似してプレゼントするんだ。
ああ、平和への渇望が止まない。
ではまた、ごきげんよう。
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