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「セイレーンの懺悔」読了

「セイレーンの懺悔」
中山七里 著 小学館
文庫版/ 384頁

マスコミは人の不幸を娯楽にする怪物なのか

葛飾区で女子高生誘拐事件が発生し、不祥事により番組存続の危機にさらされた帝都テレビ「アフタヌーンJAPAN」の里谷太一と朝倉多香美は、起死回生のスクープを狙って奔走する。
しかし、多香美が廃工場で目撃したのは、暴行を受け、無惨にも顔を焼かれた被害者・東良綾香の遺体だった。綾香が"いじめられていた"という証言から浮かび上がる、少年少女のグループ。主犯格と思われる少女は、6年前の小学生連続レイプ事件の犠牲者だった……。
マスコミは、被害者の哀しみを娯楽にし、不幸を拡大再生産する怪物なのか。
多香美が辿り着く、警察が公表できない、法律が裁けない真実とは

面白かった!胸がスッとした。

「切り裂きジャック」の事件で登場したプロデューサーが繋がり、こんな風にスピンオフを生むとは。さすが中山先生です。

今度の主人公は、女子高生の誘拐事件を追う駆け出し2年目報道レポーター朝倉多香美。そしてその手綱を握る先輩里谷太一。
警視庁と記者クラブの仕組みについて描かれていたり、報道番組製作側の都合、価値観、チームワークが描かれてる。
事件そのものは単純なように見えて、各人の過去や生き方がリアルに書かれていて読み応えある。このシリーズでの新しい警察関係の登場人物、宮藤刑事もイケメンなのかー!中山先生の描く警視庁、イケメン率高くない?(笑)

事件は、中山先生の王道パターンとも言える。
犯人が捕まり解決したと思いきや、その裏にもう一つのストーリーがある。一筋縄ではいかない。犯罪を犯してしまうのも、被害者になるのにも。そのパターンがあるから最後まで気が抜けないのよね。

ところで。
私は最初から、犯人のとある一言に引っかかったよ。「あれ?それって…なぜそんな言い方するの?」って。なので犯人わかってからすごーくスッキリした。「うむ、やはりな」って。

そして、結末にもスッキリ。
青臭くも清々しい多香美のスピーチ。
ここのところ、テレワークしながらワイドショー観る機会が増えて、正直それには辟易することがあったけど、多香美の最後のコメントのように、マスコミには高い倫理観をもって仕事をして欲しい、そうあって欲しい、と願う。

続編希望!


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