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23歳

彼女はそこにいた。
大きな交差点の傍らに。

冷たい風が吹き、彼女は口元をニットに沈めた。

安っぽいクラクションがいたるところで鳴っている。

彼女の隣には、一人の女性。

ブツブツと文句を言いながら、タクシーに手を振っている。
車に駆け寄っていく。

彼女は視線を右に外した。
少し遠くに海がある。

バケツとスコップを持った男性が見える。
虫かごに星形の生き物を入れている。
あれは、いったい何だろう…。

女性が戻ってきた。

日本人だと乗せてくれない、ばかにしている。
ブツブツ呟き、また手を挙げる。

眼前には、灰色の建物。
窓にカーテンはなく、無数の四角い枠の中に
人々の暮らしが見せ物のように晒されている。

全てが灰色だった。
時間も、風も、道路も、海も、人も、星形も、ビルも、車も。

対向車線に車が止まっている。
隣にいたはずの女性が大きく手を振り、彼女を呼んでいる。
いつの間に向こう側へ行ったのだろう。

クラクションで何も聞こえない。

ただ手袋が、赤く、大きく揺れて彼女を呼んでいた。

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