お前へ
私のおなかに今、もう一つ心臓がある。
トクントクンと小さな脈をいつも刻んでいる。
それは、窮屈そうに寝返りを打ったり、手足を伸ばしたりしながら、私の中でもう9か月も暮らしている。
この子との共同生活は、思ったよりも楽しい。
いつでも話を聞いてくれる仲間が一人増えた感じ。
外の生活で嫌なことがあって涙が止まらなくなったとき、それまで静かにしていたのに、トントン トントンと動いてくれた。
こんなに小さな存在でも、一緒に誰かがいてくれるだけで人ってとても安心する。
私はお前のこと、好きだよ。
お前に血や酸素や居住スペースを分けてあげてるから、肩こりやこむら返りや寝苦しさもあるけど、全然許すよ。
だってまあ好きだから。
お前が生まれてきてからも、私は困ったり悩んだりすることがたくさんあるかもしれない。
でもそれはお前のせいではなくって、私が勝手に困ったり悩んだりしているだけだから気にしなくていい。
私が気づいて、お前も含めたほかの誰かと協力して、どうにか乗り越えて、すすんでいくだけだから。
お前は適当に過ごしてくれ。
お前はお前が感じるままに、考え、表現して、私にもたまに相談してくれていいから、自分の信念をみつけて生きてほしい。
私はお前が好きだから、9か月でお前のことをすごく好きになったから、夫や両親、弟や友達と同じようにずっと大切にしていくよ。
あと少しでひとり立ちするお前へ
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