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盲ろう者の田畑さんとなにかの本を作ろうと思っている件 その13

これまでのお話はこちら

だらだら書いてきたので読みやすくまとめねばいけないと思うのですが、時間がなくて……、雑感ということで、そのまま続きます。

前回が一月のことでした。今回は三月。

やっとやっと、21_21 DESIGN SIGHTの企画展「トランスレーションズ展 −『わかりあえなさ』をわかりあおう」へ。http://www.2121designsight.jp/program/translations/​

日にちや時間が何度も変わり、コロナもあって、どうなるかなと思いましたが、決行。
田畑さんと、前回の夏実さんと、ほかにどなたかがいらっしゃるとのこと。
六本木にいくのに、田畑さんとは電車の中で待ち合わせました。湘南新宿ラインの何両目の車両に乗っているかLINEで教えてもらって、そこにわたしが乗るという方法で、無事に予定通り会えました。同行支援の方はいなくて、田畑さんお一人でした。電車の中では、田畑さんのスマホに書いた文字(黒い画面に白地の文字)で筆談しました。わたしは自分のスマホで返事を書いて渡して見てもらっていたのですが、田畑さんの使っているアプリと同じ文字の大きさにならず読むのが大変そうだったので、とちゅうから田畑さんのスマホに返事を入力することにしました。そうそう、このころ、田畑さんはガラケーからスマホに買い換えたのです。ガラケーはボタンが触覚でわかるけど、スマホは画面つるつるだから操作がたいへんなのではないかと思っていたのですが、慣れた様子で使っていました。盲ろう者の田畑さんは、少し視力があるので画面が大きくなって文字を大きくして使えるスマホは、使いやすいのかもしれません。先にタブレットも使っていたので、心配なかったようです。
もうひとりいらっしゃる予定の方がどのような方か訊ねると、今日は「風邪」で不参加とのことでした。ちょっとホッとしました。あとで確認したらテレビ局におつとめのかたのようでした。いろんな方に引き合わせようとしてくださるのだけど、どういうつもりで呼んでいるのかわからない。本のことはまだなにも決まっていないので、他の方の協力が必要かどうか、わたしにもわからないのですよね……。
書き言葉でやりとりしていると、○○とはどういう意味ですかと聞かれることがよくあります。手話言語では使わない言い回しなのだな、という発見をちょこちょこします。覚えておきたいのだけど、自分のスマホをつかってないので会話を手元に残せなくて、なにを確認されたのか忘れました……。(普段のわたしの言葉の使い方も、他の人と比べて少し変わっているのかもという気がしてます)

さて、恵比寿で乗り換えて、六本木のミッドタウンで夏実さんと待ち合わせです。でも、わたしはどこで待ち合わせるのか知りませんでした。というか、ミッドタウンに行ったことがなかったのです。六本木はヒルズのほうは、以前は良く行っていたのですが、ミッドタウンには全然行く機会がなくて。だって、オープン当初のミッドタウンのおしゃれ感と高級感が、庶民は来るんじゃねえって警告していませんでしたか? すごく混んでるって聞いていたし、この14年間わざわざ行ってみようと思えなかった。新しいと思っていたのに、もう14年も経っていたのですね……そのことにショック。
 で、待ち合わせ場所はどこなの? 田畑さんはミッドタウンとしか伝えてこない。え……。田畑さんが正確な待ち合わせ場所を知っているのだと思っていたよ。じゃあ企画展をするギャラリーの前に行けばいいのかな、まだ開館してないのだけど……。たぶんこっち、と田畑さんと歩いて行ったら、早朝だったため通り抜けられるはずのビルが閉まっていて、困ってしまいました。夏実さんにLINEして聞いてみるか……。
 現在地を確認しようと再度スマホを見たら、田畑さんのお母様からメールがありました。そこには夏実さんがいる場所が書いてありました。展示を見た後でお話する予定でしたが、ギャラリーが開くまで先に話をしようとのこと。リンクのグルメサイトを開くと、自分一人だったら絶対に入れないような難しい名前のミッドタウンのおしゃれカフェレストラン……。どこだそれ。あ、目の前にあるガラス張りの店だったわー。高そう。朝早くから開いているのはここしかない。それに、ここに「いる」というのだから行くしかない。
 が、入店してみたけれど、夏実さんの姿は、多分ない。一月のZoomでお会いしたきりだし、そもそも人の顔の認識が苦手なわたしには、これはけっこうどきどきな展開でした。田畑さんにはお客さんの顔は見えてないし……どのひとって聞いて確認できないわ。店間違えた? どうしよう? 田畑さんの知り合いなら田畑さんを見つけたらリアクションするよね? 店員さん困った顔してたけど、わたしも困っている。「待ち合わせなんです」と伝え、店内うろうろして一人でいるお客さんをじろじろみて、だれも反応しないので、まだ来ていないと判断。挙動不審になりながら着席。
 メニュー置いていったぞ。注文どうするんだろう。とりあえず、スマホの画面で田畑さんと会話。夏実さんはまだ来ていないと伝える。田畑さんからこの店にいることを夏実さんに伝えたいので店の名前を教えて欲しいとスマホ画面で言われ、ひゃーと慌てふためく。おしゃれで長くて覚えられない難しい名前で、他人のスマホに入力するのが超めんどくさいぞ。そもそも指定した店なんだから店名教えなくていいと思うんだけど……。等といろんなことにモヤモヤしながら、それをいちいち画面に入力して伝える手間をかけられないので、最低限のコミュニケーションになります……。やっぱ、触手話できないとダメなんだ。こういうときに困る。筆談ではちょっとしたことを伝えるのでも、立ち止まって数分間画面を見たり入力したりしなくてはならない。
オタオタしていたら、夏実さんがいらっしゃいました。よかったああああ。でも、夏実さんが田畑さんの肩をそっと叩いて触手話で伝えるまで、田畑さんは夏実さんがそこいることに気づけない。なるほど、そうやってコミュニケーションをとるのか……と、勉強になりました。

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夏実さんたちが作った触覚ゲームをみせていただき、遊び方を教えていただきました。見た感じではわからないですが、実際に体験すると面白さがわかります。

「LINKAGE」も遊び方を教えていただきました。ギャラリーで販売していたので買いました。

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夏実さんたちのチームが、田畑さんを加えてどのように作品を作っていったのか、伺うことができました。触覚デザイナーという肩書きがついているけど、田畑さんが先になにかをデザインしているわけではないことがわかりました。できたものに触れてもらって、感想や改良のアイデアをもらうという感じのよう。田畑さんと一緒に過ごしたりなにかを体験したりするなかで、魅力を引き出すのが上手い人たちが関わっていてこその「触覚デザイナー」なのだな、とおもいました。
インクが浮き出るプリンターがあるので、協力できるとおっしゃっていただき、心強いです。

でも、わたしは同じようにはできないなあ。自分になにができるかなあ……。


長くなったので、続きます。次へ



支えられたい……。m(_ _)m