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母がはじめて写メしてきた父の刈り取り

いきなりですが、水平でないのでちょっとくらっとする写真を一枚載せます。これ、後期高齢者の母が去年はじめてスマホで写真をとってメール添付してくれた写真です。父がコンバインでコシヒカリを刈り取っているところです。知らなかったのですが、パラソルつきなんですね(笑)。

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じつをいうと、めったに連絡をとらない親子なので、母から写真が届いたときはとても驚きました。お父さん、こんなふうに仕事をしていたんだ。お母さん、骨粗鬆症で骨折して痛がっていたけど、こんなふうに写真が撮れるほどいまは充実した生活をしているんだなあ。よかったよかった。
子どものころ、娘のわたしだけが田んぼに連れて行ってもらえず、仕事の様子を知らずにそのままだったので、こんなふうにでっかい秋晴れのもとで黙々と作業をしていたんだなあって、ちょっと誇らしい気持ちになりました。
ずっと両親の作ったお米を食べて育ってきました。うちの米は世界一だと親から洗脳されて。でも、実際そうだと思っています。

今年の春、両親は例年のように田植えをしました。父は80歳。この数年は、いつまで田んぼがやれるかなあという話をするようになってきました。そして実りの8月も終わり、来週には刈り取りだというとき、父は入院することになりました。入院前、父は苦しい体で、農協で刈り取り代行の手続きをしてきたそうです。お米はそのまま出荷されるので家にはもどりません。なので、今年はお前たちに送る米がないぞ、とベッドの父からいわれました。買うからいいよ。また元気になったら作ればいいよ。
こればっかりはしかたがない。刈り取りがすむと、父は、収穫の時期が迫っていた「にっこり梨」のことで頭がいっぱい。
でも、父は退院することなく、そのままあっという間に亡くなってしまいました。

お通夜の日、自宅から斎場に向かう途中で、棺を乗せた車は刈り取られた田んぼの前に停車しました。母が「最後にお父さんに田んぼを見せてあげなくちゃって」望んだから。長い長い間、停まっていました。田んぼには二番穂が青々とのびはじめていました。その日も不思議なくらいとっても良いお天気で。
わたしは一年前に母にもらった画像を写真屋さんでプリントしてもらい、写真立てにいれて実家に持っていきました。母のいたずら心で偶然とった写真が、父の最後の刈り取りの姿になったとは……。父が働く姿を写真に残してくれてありがとうね。何度見ても、いい写真だよね。

先月、去年のうちに父が収穫した分のお米を食べ終わりました。これからは、世界第二位のお米を探さなければ。

買って食べるとつい忘れてしまいがちですが、お米も野菜も果物も、「人」が作っているんですよね。

#ふるさとの風景


支えられたい……。m(_ _)m