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盲ろう者の田畑さんとなにかの本を作ろうと思っている件 その1

今年(2020)の夏、JBBYのバリアフリー児童図書の選考委員をしたことをきっかけに、なんとなく、バリアフリーの絵本をつくりたいという漠然とした思いを持ちました。社会福祉士の資格を取得したというのもあるので、福祉職の関係のかたと連携して、一緒に本をつくれたらいいなあというぼんやりしたものです。まったく出版のあてもなく。
で、

「バリアフリー絵本」について興味をお持ちの方、いらっしゃいませんか?バリアフリーの子どもの本を作りたいと思っています。一緒につくってくださるかた、いらっしゃいませんか?

三年前に卒業した武蔵野大学通信教育学部の社福専攻の有志の自主勉強会の掲示板にそんな投稿を書いたところ、スクーリングでお世話になったM先生から、お返事がありました。武蔵野大学通信教育学部の在学生を紹介したいと。

それが、田畑快仁(たばたはやと)さん。生まれつきの盲ろう者で、触手話、日本手話を使って会話される方で、触覚デザインという活動も始めていているとのこと。

M先生から『幼稚園』という雑誌の付録で、「たっちまっちカード」というのを発表されていることを教えていただいたので、バックナンバーをさっそく取り寄せ。『幼稚園』を買ったのは人生初です。

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付録の「たっちまっち」カード。おお〜!!画像2

たばたはやと with マグネット(高橋鴻介さん、和田夏実さん)
ネット検索したら、インスタに公式の説明がありました。

触ってみると、見た目以上に感触が違って、面白いです。

M先生が連絡を取って学生の田畑さんと繋いでくださると。
ありがたい。でも、ちょっ……待って。これまでの人生で、わたしは盲ろうのかたに会ったことがないのです。手話も全くできない。昭和平成に手話ブームが何度かありましたが、ぜったい覚えられそうにないと思ったから、覚えてみようとも思わなかった。

視覚障害のある方に関しては、作家デビュー後の早い時期に録音図書の件でネットを通じて「バリアフリー読書サークルYAクラブ」のかたと知り合うことができたのですが、それは聞えることが前提。
2011年頃にNHKエデュケーショナルさんのサイトで連載したweb小説を本にまとめた連作短編集『空を泳ぐ夢をみた』(ほるぷ出版 2012年)の中に、視覚障害の女の子を主人公にしたお話を書きました。ネットコミュニケーションを学べる小説という名目で、当時大ブームの名残のあったケータイ小説風の横書きの本だったので、見た目で拒絶した方いらっしゃったかもしれないのですが……。

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これを書く時に、視覚障害特別支援学校の学校公開を見に行ったり、ヘレン・ケラー記念音楽コンクールを見に行ったりしたことはありました。
その後、バリアフリー読書サークルYAクラブさんの例会や定例会の見学等させていただいたことがありますし。だから見えない状態については、自分でもなんとなく想像はできるんです。自分で目をつぶることはできるし。耳を塞いでいるって自分にとっては難しい。一時期、音楽教室講師をしていたこともあるので、聞えない方はわたしの守備範囲じゃないような気がしていたんです。

盲ろうって……視覚聴覚ダブルじゃないですか。
見えないし聞えないとしたら、どうやってコミュニケーションとるんだろ~。
バリアフリーの本を作りたいのは事実ですが、いきなりハードル高くないですか。わたしには無理じゃないかな。でも、自分にとって新たなチャレンジになるなあ。断ったらそこで終わりだ。ゆっくり時間をかければ、なんとかなるかなあ……と、うだうだしているまもなく、M先生から田畑さんとの連絡方法を記したメールが来ました。早っ。

戸惑いを感じつつ、なにかが始まりましたよ。

つづく。




支えられたい……。m(_ _)m