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世界奴隷化計画 第5話

打倒ニューノーマル、
令和の下克上なるか?



<人物>

宮崎友希(48)弁護士・宮崎妻
宮崎孝(53) 国立ウィルス研究所医師
安住太郎(60)総理大臣
市原悦子(65)宮崎家の通いの家政婦

○総理大臣官邸・前
   門の前には護衛の警察官が立ち、
   緑あふれる庭からは蝉の声が響く。
○同官邸・中
   シンプルながらも
   品のよい調度品が飾られた応接室。
   ローテーブルを挟み
   ソファーに座って話している
   宮崎孝(53) と安住太郎(60)。
   テーブルにはアイスコーヒーが
   置かれている。

宮崎「マ、マイクロチップですか?
   総理、気は確かですか?」
   宮崎、飲んでいたアイスコーヒーを
   吹き出しそうになりながら素っ頓狂な
   声で言う。
安住「それは各国の首脳とも話し合った
   決定事項なのであります」
宮崎「全人類にマイクロチップを
   埋め込むって・・」

   安住、テーブルの上に
   5ミリ程度のカプセル状の
   透明のマイクロチップを
   そっと置き、

安住「先生もお気づきの通り、
   ナロコの毒性は大した物では
   ありません。ただ、
   マスコミのみなさんの
   ご協力のおかげで、
   ここまで恐怖を煽ることが出来ました。
   今や全人類はナロコの
   ワクチンなしでは家族にも
   友達にも会えない、
   海外旅行にも行けないと
   ご理解いただいております。
   したがって、
   今では全人類は
   ナロコワクチンを待ちわびております。   
   ですので、
   ワクチン接種と同時に
   全人類にマイクロチップを埋めるのが 
   我々の真の狙いなのでであります」

宮崎「そんなの人権侵害ではないですか?
   使い方によっては全人類を
   奴隷のようにコントロールすることも
   可能になってしま・・」

   安住、宮崎の言葉を遮るように
   力強い口調で、

安住「助けることも出来るんです」

   宮崎、頭を抱えて  

宮崎「なんてことだ!」

   絶望的な表情で頭をかきむしる宮崎。
   その姿を頷きながら見守る安住。
   宮崎、突然顔をあげ、

宮崎「それで、
   僕をどうするおつもりですか?」
安住「やはり先生は
   マイクロチップには反対ですか?」

   安住、微笑んでいる。

宮崎「もちろんです」
安住「マイクロチップが入っていれば
   全ての個人情報が把握出来ます。
   難民問題も、誘拐事件も
   脱税も全て解決するんですよ」

宮崎「しかし・・・」

   安住、頷きながら、
   テーブルに置いてあった
   金属製のケースから、
   金色のマイクロチップを取り出す。
   怪訝そうな顔でそれを見る宮崎。

宮崎「そ、それは?」
安住「先生もこちら側の人間になりますか?」
宮崎「こちら側?」

   安住、自分の左手を広げて宮崎に見せ

安住「私も既にこのマイクロチップが
   ここに入っています」

   安住、人差し指と親指の間を
   右手で指さす。

宮崎「そ、総理、本当ですか?」

   安住、にっこり頷く。
   安住、ゆっくり立ち上がり、
   手を後ろで組み、
   一面ガラス張りの窓から
   外の風景を見下ろし、
   眩しそうな顔をしながら、

安住「この世の中には2種類の人間がいる。
   自分の頭で考える人、
   面倒臭いからと、
   何も考えずに従う人」

   安住、宮崎の方を急に振り返り、

安住「先生もそうは思いませんか?」

   宮崎、何か言おうと
   口をパクパクさせている。

安住「つまり、支配する人、
   支配される人なんですよ」

   安住、ソファーに戻り、
   テーブルに置かれた
   金色のマイクロチップを
   右手の指先で
   そっと宮崎の方に押し出す。
   宮崎、安住の顔を真剣な顔で見つめる。   
   安住、手で、どうぞ、の、
   ジェスチャーをし、にっこり微笑む。

安住「先生も我々と同じ、
   こちらの方が
   やはりよろしいのでは
   ないでしょうか?」

   宮崎、険しい顔をして、
   黄金のマイクロチップを凝視している。

安住「宮崎先生、
   お嬢さんはスエーデンに
   留学中でしたっけ?」
宮崎「な、なぜそれを?」
安住「英語もご堪能で将来は
   外交官を目指しているとか」
宮崎「・・・」
安住「立派なお志だと思いますよ。
   我々としてもぜひ応援したいと・・」

   宮崎、安住の言葉を遮るように、

宮崎「弁護士を呼んでくれませんか?」
安住「ま、確かに、
   本件で契約書を作成するのに
   必要かもしれませんね。
   それはつまり、
   我々に協力するということと
   捉えてよろしいでしょうか?
   こちらで今すぐ手配出来・・」

宮崎、遮るように、

宮崎「僕の妻を呼んでください」

   安住、にっこり笑い

安住「そうでしたね。
   奥様は女性の人権問題の
   第一人者でもおられる
   弁護士さんでしたね。
   私の妻も大ファンです」

○都内タワーマンション全景・夜
   門の両脇には竹が生えている。
   一面ガラス張りの
   大きなエントランスからは
   温かい間接照明に照らされた
   巨大で斬新な
   フラワーアレンジメントが見える。

○宮崎家・中
   広いリビングルームのテーブルには
   無造作に海外書籍や雑誌が
   置かれている。
   本棚にはびっしり様々な学術書が
   並んでいる。
   ソファーで頭を抱えている宮崎。
   そこへパジャマ姿に頭を
   バスタオルで拭きながら
   風呂上がりの宮崎友希(48)が
   入ってくる。

友希「もう!
   世界の終わりみたいな顔して!」
宮崎「よくこんな時に
   呑気でいられるよな!」

   友希、冷蔵庫の中から2ℓの
   麦茶のペットボトルを取り出し
   直接一口飲みながら

友希「こんな時だからじゃん?」

   友希、口の開いたままの
   ペットボトルを持ちながら
   ソファーに座る宮崎の横に座り
   無言でペットボトルを
   宮崎に差し出す。
   宮崎、無言で飲む。

友希「ハイ!濃厚接触―――!」

   友希、突然大声で
   楽しそうにそう言うと
   宮崎に寄り添い、肩を抱く。

友希「私が孝にプロポーズした時のこと、
   忘れたの?
   アンタは医者、私は弁護士。
   二人が一緒になったら
   絶対に負けない。誰にも負けない」

   宮崎、子犬のような表情で
   友希に身をゆだねる。

友希「相手が国であっても、
   世界であっても絶対に負けない」

   宮崎、無言で頷き、
   麦茶をもう一口飲む。
   友希、突然まじめな声で、

友希「モンテスキューは『法の精神』の中で
   権力というものは
  「ルールをつくる力」(立法の権力)と、   
  「つくられたルールを、
   実際に人々に適用する力」
   (司法の権力)と、
   「立法でも司法でもない
    残りの分野を扱う力」(行政の権力)  
   に3分割しないと、
   人々の権利を守ることが
   できなくなると主張した・・
   安住総理の考えは危険過ぎるよね」

   宮崎、友希の膝を膝枕にして
   もたれかかる。

宮崎「友希と結婚して本当に良かった」

   友希、宮崎の髪の毛を
   ゆっくりなでながら

友希「一人じゃないから~
   私がキミを守るから~」
   (作詞作曲AI:Story)と歌い出す。

   宮崎、いつのまにか
   いびきをかいて寝ている。
   友希、宮崎をそっとどかし、
   宮崎にタオルケットをかけると、
   真剣な顔になり、立ち上がり、
   ノートパソコンを開くと
   英文でどこかにメールを送っている。

○都内タワーマンション全景・朝

○宮崎家・ダイニングルーム・中  
   大きなガラス窓から朝日が降り注ぐ
   ダイニングテーブルには花が飾られ、
   完璧な和朝食が並ぶ。
   パジャマ姿の宮崎と友希が
   寝ぼけた顔で食卓につく。
   そこへお茶を運ぶ市原悦子(65)。

友希「悦子さん、おはよう!
   わー、今日も最高の朝ご飯!
   ありがとう!」

悦子「それじゃあ、私はこれで」

   そう言って、エプロンを外し、
   玄関に向かう悦子。
   友希、目を閉じながら
   日本茶をゆっくり飲む。

友希「あ~幸せ!」
宮崎「そうだな」
友希「いただきまーす」

   友希、おいしそうに焼き鮭を
   食べながら

友希「ってかさ、
   マイクロチップ普通に強要罪で
   ムリっしょって感じなんだけど、
   ま、だけど
   相手は国家権力だからね~」
宮崎「ナロコ騒動どころの話じゃ
   なくなってんだよな」

   友希、テレビをつけ、
   BBCニュースを見る。
   画面には注目の「天才」台湾IT担当大臣
   オードリー・チェンが出ている。

宮崎「こういう人が
   安住総理の取り巻きにも居ればなぁ」

友希、ご飯をもぐもぐしながら

友希「あ、昨夜、メール送っといたから」
宮崎「え?」
友希「え?言わなかったっけ?
   昔、香港に留学していた時の
   友達だよ、オードリー」

ぽかん、としている、宮崎。

友希「まあ、マイクロチップで
   本当にヤバイことになったら
   オードリーに
   ハッキングしてもらって
   全部消してもらっちゃえば
   いいじゃん!」
宮崎「え?俺は嫌だよ、
   身体にマイクロチップ
   入れるのなんか!
   手伝うのだってごめんだ!」
友希「だーかーらー、たとえば、の話!」

   友希、宮崎の肩を後ろから抱き、
   顔をのぞき込みながら

友希「それとも、
   ゴールデンマイクロチップと
   一般人のマイクロチップの中身を
   遠隔操作で全部入れ替える?」

宮崎、唖然としている。
   友希、いきなりベランダに飛び出し
   大声で、

友希「これが令和の下克上だーーー!
   何がニューノーマルだーーー!
   何が新しい生活習慣だ!
   ふざけんなーーー!」
   下に歩いていた
   マスクをしている人々が
   ベランダを見上げる。
   友希、満面の笑みで
   みんなに手を振る。
   食卓からその姿を眩しそうに
   温かい目で見ている宮崎。



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