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世界奴隷化計画 第2話

宮崎教授を拉致したのは誰か?

<人物>

東山信一(31)刑事
栗原健(23)東山後輩

石田忍(55)東山上司
宮崎孝(53) 国立ウィルス研究所教授
三浦理彩(27) 新聞記者

○真っ白い壁に囲まれた何もない部屋
   目隠しと猿ぐつわをされ、
   手を後ろ手で縛られた宮崎孝(53)が
   パイプ椅子に座っている。
   宮崎、何か言おうとしながら
   固定された身体を動かし
   もがいている。
   パイプ椅子の脚が
   床に当たる音だけが響く。

○警視庁全景
○同捜査一課会議室前
   宮崎教授拉致事件特別本部
   と書かれた看板。

○同取調室中
   東山信一(31)が三浦理彩(27)に
   机をはさみ話をしている。

東山「宮崎教授を拉致した2人の男性の顔を
   覚えている範囲で出来るだけ詳しく
   教えてほしいんです」
理紗「なんせ2人とも
   マスクをしていたものですから…」

○捜査一課内
   壁には「ナロコ感染防止のため
   不要不急の逮捕は控えましょう。
   警視庁」
   と、書かれたポスターが
   貼ってある。
   東山がパソコン画面を見て
   ため息をついている。
   石田忍(55)が後ろから話しかける。

石田「なんか手がかりは見つかったかな?」
東山「あ、石田本部長、お疲れさまです」
   立ち上がって、
   挨拶をしようとする東山の肩を
   軽く叩き、座らせる石田。
東山「どういう訳かウィルス研究所の中庭と
   出入り口の防犯カメラが、
   宮崎教授が拉致された午後3時から
   切られてるんですよ」
石田「匂うな」
東山「教授の携帯のGPSも研究所から
   連れさられたのを最後に
   通信が切られてます」
石田「わかっていると思うが宮崎教授は
   我が国のナロコウィルス研究の
   第一人者だ。
   とにかく、教授の安全が第一だ、
   頑張ってくれたまえ」
東山「ハッ!」
   立ち上がって敬礼する東山。

○同警視庁廊下
  石田がどこかへ携帯で電話している。

石田「ハイ。こちらは大丈夫そうです。
   ご心配なく。」

○同捜査一課内
   東山のところへ栗原健(23)が息を切らせ
   て走り込んでくる。

栗原「先輩、現場から3キロの
   交差点の防犯カメラに
   犯人グループの車と見られる
   白いバンを発見しました!」
東山「そうか!すぐに車のナンバーを
   データ照合してくれ」

○栗原デスク前
   パソコン画面を眺めている、
   東山と栗原。
   画面を見てハッとした顔で
   東山の顔を見る栗原。
東山「内閣府・・」
   東山、栗原にあごで合図し、
   口パクで「早く消せ」と言う。

○ラーメン屋全景
○同店内
   入り口に設置されたポンプ式のアルコ
   ールを順番に押し、手を消毒しながら
   入ってくるマスク姿の東山と栗原。
   カウンター席に隣同士で
   座ろうとするが、
   一つおきに椅子に×が書いてある。
   壁には
  「密を避けるため座席は
   一つおきに座りください、東京都」
   と書かれたポスターが貼ってある。
東山「ったく。
   ここでも話出来ないじゃねーか」
栗原「そうっすね」
   東山、イラついた顔をしながら
   席に着く。
   荒々しくマスクを取り、
   大きくため息をつき、
   水を一気飲みする。
東山「ったくよぉ」
   東山と栗原、ひとつ離れた席でラーメ
   ンを無言で食べる。

   ×××

○同店・レジ前
   会計に並ぶ東山と栗原。

東山「しかし、
   あそこが絡んでるとなると、
   色々とまずいよな?」
栗原「本当っすね、教授大丈夫ですかね?」
東山「ある意味、
   あそこが手荒い真似をするとは
   思えないから安全なのかも
   しれないけど、ただ…」
   財布からクレジットカードを出そうと
   している東山。
   そこへいきなり現れた石田が
   自分のクレジットカードを
   店員に渡し、
石田「これで支払ってくれ」
   びっくりした顔で固まる
   東山と栗原。

○同店外
   石田にお辞儀をしている東山と栗原。
東山「どうも、ごちそうさまでした」
石田「いやいや、
   ラーメン一杯ぐらいで、悪いねえ」
石田「ところで東山君、
   今日の都内の新規感染者数
   見たかい?」
東山「い、いえ」
石田「500人超えたらしいよ。
   外食は控えてもらわないと困るねえ」
東山「申し訳ございません!
   自分が誘いました」
   頭を下げる東山。
   慌てて一緒に頭を下げる栗原。
石田「となりの県警で
   クラスター感染が起きて7人が
   自宅待機中なんだからねぇ」
東山「おっしゃる通りです」
   再び頭を下げる東山。
石田「僕らだって、
   不要不急の逮捕は行わないって
   命令が上から出てるだろう?」
東山「ハイッ!」!」
石田「わかってるよねぇ?
   僕の言っていること?」
東山「・・・」
   不思議そうな顔をしている栗原。
   東山、下を向いて歯を食いしばり、
   拳を握りしめている。
石田「ま、そういうことだからね、
   よろしく頼むよ!」
   石田、東山の肩を軽く二回叩き、
   去ってゆく。   続く

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