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第8話 動くシェアハウス


宝船が港を離れていく。

デッキが夕陽に照らされて綺麗だ。
どんどん小さくなる高層ビル、倉庫、コンテナ
いよいよ新しい職場。
ここからが私の再スタートの始まり。

ドリーンは、船を愛しそうに撫でながら
「小さい頃に時々遊びに来ていた宝船で働けるとは私も夢のようです。実はアイクも遠い親戚でして、ここで私がおむつを替えたこともあるんですよ~」」と笑う

アイクが照れて「一緒にお風呂に入ったこともアルヨ~」と言い返す。
私「仲がいいんですね~」というと
ドリーン「昔は取っ組み合いの喧嘩もしたんですよ!(笑)さすがに今はしませんが、、、アイクと同じ様に、ありんさんもドリーンと呼んで下さいね。」

そしてスタッフ控室に案内される。

小さなテーブルと椅子。ミニ冷蔵庫。両サイドにベッドが一つずつ。入り口横にはコンパクトなトイレとシャワー室。思ったより揺れの少ない快適空間だ。

ドリーン「個室が用意できずにごめんなさいね。寝るときはカーテンで仕切って下さい。一息ついたら住人さん達にご挨拶に伺いましょう。では30分後に」


アイク「ありんちゃん、窓側を使っていいよ。丸い窓から海がみえて素敵だし。」と言って自分は入り口に近いベットに倒れ込む。

「はぁ~アイクお腹すいた。今日の夕飯は何かな~」

私はキャリーケースを開けて、小さなチョコボールの箱を渡す。
「こんなのしか無いけれど、良かったら食べてね。二泊三日の間、何か迷惑かけていたら直ぐに教えてね」

アイク「アリガトウ~ゴザイマース!僕こそ、イビキうるさいけど笑って許して~」早速、チョコを美味しそうに口に放り込む。


丸窓から外を見る。すっかり日が暮れた模様。
波は穏やかで安心だ。


ドリーンが迎えに来て船内案内を受ける。
船長室、操舵室、機械室、洗濯室、レストランホール、地下の立ち入り禁止室、いろいろ細かいところは覚えきれない。

宝船は現在、自動操縦中だが数人のスタッフが忙しそうに動き回っている。
私はメモ帳を片手にキョロキョロしつつ、迷子にならないように目印になりそうな物や非常口をマークする。
アイクは私の手帳を覗き込み笑う「ボクはココにメモるよ~」と頭を指す。

(私だってそうしたいけれど忘れちゃうのよ~)と心の中で答える。

ドリーンは医務室をノックしドアを開ける。松平健さん似のドクターと、マチャミさん似の明るいナースさんを紹介してくれた。

ドクター「24時間待機だから、何かあったら直ぐに声を掛けてくれて構わないから。」
ナース「アイク君には、いっぱい注射してあげるよ~」とふざけて、アイクに打つ真似をする。
アイク「注射キライよ~~~」と言いながら部屋から逃げる。


ドリーン「では、住民の皆様に挨拶しに行きましょう!」
私「船に住むっていう方、実は私、初めて聞きました。?」

ドリーン「海外セレブの方はマンションを買うように船室を買って世界旅行する方もいらっしゃるのですよ。ここは少し狭いのでシェアハウス的な感じですかね」

私「動くシェアハウスですね~楽しい!」

アイク「ありんちゃん、他にもびっくりする事あるよ~~~」
ドリーン「ありんさん、深呼吸してついてきて下さいね!すぐに慣れますから」

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