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第1話 ありん婆ちゃんの就活

~アフターコロナ~

TVでは平和な光景を連日映し出している。
公園の桜を見上げ嬉しそうに笑うお年寄り。子育てママ達が寄り添い互いのスマホを見せあっている。バギーの赤ちゃん、色とりどりの服を着た子供達がキャッキャと声を張り上げたり思い切り走り回っている。
飲食店では活気を取り戻し、飲み屋の暖簾の先にはビールジョッキで乾杯するシーンが放映されている。
私にも本当の春が来て欲しい。

~職安へ~

所内は職を求める人で溢れ
冷静な対応と事務処理が進められている。
疲弊している人が時折大声を出すが、堪えるしか無い辛い時間だ。

私は番号札を手に、呼ばれるのを待っていた。
シルバー応援の窓口から声が掛かる。
私「宜しくお願いします。」
職員「浦島ありんさんですね。最近就職活動はされましたか?」
私「ハローワーク相談と求人広告をみています。」
還暦すぎると正社員の採用先は殆どない。
私「地元に固執しても職が無いことが解りました。思い切って自分の枠を取っ払います。日本全国、住み込みでもいいので、私の資格で一生働ける所ありますか!?」
相談員の方は「エエッ!」っという顔をしてカタカタとPCを打ち込みプリントされた紙を差し出す。
「一件出ました。一生働けるかは解りませんが、検討されてみては?」

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