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第11話 神のみぞ知る


100号室に急いで駆けつけると、七福神様が取り囲む中、ドクターとナースが神妙な顔つきでアマビエ様の応急処置をしている。

祈り始める神様たち。それぞれ緊張感にあふれている。

アマビエ様は横になったままピクリとも動かない。

酸素マスクが外された。

(アマビエ様の顔面は蒼白というよりドス黒い)


玉二郎「先生!?アマビエ様の具合は?」


ドクター「神のみぞ知る。」と一言残し立ち去る。


ナース「七福神様方もお部屋にお戻り下さい。」

七福神様方は心配そうにゾロゾロと帰っていく。


ナースが帰り掛けに玉二郎の耳元で「キリの良いところで、ベッドに戻してあげてね」と含み笑いをしながら伝える。

ドアが閉まり部屋の物音が消える。

玉二郎「お前ら、足をしっかり持ってくれ。イチニのサンで持ち上げるぞ」
足元の両側に分かれて踏ん張り立ちするアイクと私。
三人息を合わせてベッドに寝かせるが、結構な重量に驚く。



すると、
玉二郎「アマビエ様、もう目を開けていいですよ。」と言うと
長いまつげの可愛らしい目がパチっと開く。

(えええーーーーーーさっきは死んでしまわれたのかと思ってしまったですよ!(激しく混乱中))


(そして、アマビエ様ってマツコ・デラックスさん似だ)

私の横で立ち尽くしていたアイクも唖然としている。

玉二郎さんが、アマビエ様の上半身を起こしてテーブルの上のオレンジジュースを飲ませる。「コレを取ろうとして落ちたんでしょう?」

アマビエ様 「うん」

玉二郎「何で死んだふりしちゃったの?」

アマビエ様「だって、皆に囲まれちゃうし、お医者さんは来ちゃうし、祈られちゃうしじゃぁ、バツが悪いじゃないのよぉ~」

玉二郎「ホント、そういう所が可愛いんだよね」と、近づきほっぺにチュ!

(えーーーーーー神様にチュウしちゃうの?)

玉二郎「いい子だから、朝までゆっくり休んでね。何か用事があればコールして」と頭を撫でる。

アマビエ様が満足げに目を瞑るのを見届け、私達も退室する。

玉二郎「寝てる所を悪かったな。明日は昼からでいいから。じゃな!」

と69号室に戻っていく。


私「あ~~~良かった。取り敢えず、ご無事で!」
アイク「驚いちゃったよね!?顔がガングロヤンキーみたい!」
私「うん、真っ黒だった、、、。」


アイク「100年位お風呂に入って無いって噂を聞いたよ。本当か、ドリーンに聞いてみよう。そういえば来なかったね?」
私「お部屋どこ?」
アイク「どこかな?もしかしたら~きっとフロントだよ。ずっと仕事してたから」


~フロント~
暗く誰も居ないフロントの裏側に回ると、ミノムシの様に膨らんだシュラフが床に転がっている。
二人でしゃがんで覗き込むと、イヤホンを付けて寝ているドリーンだった。


私「若くて可愛い女の子が、床で寝るなんて、、、。私達にベッド譲ってくれてたんだね。」
アイク「昔から、自分は我慢しちゃうんだよ~。起こすと悪いから行こう。」

ドリーンにとっても緊張する初仕事だ。ゆっくり寝て頂きたい。


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