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第7話 逢魔ヶ刻に宝船は出港する


採用が決まってからの私は大忙しだ。

手帳を新しく買い直し、一ヶ月で準備すべきことリストを作る。
忘れやすくなってるので、カレンダーと手帳に記すのはマスト。
(スマホのメモ機能は老眼につき、打ち間違いが多く怖いのだ)

身辺整理
◎断捨離を加速させる。
(リストを元に知人、友人に貰ってもらう。軽いものは自分でリサイクルショップへ。重いものは業者探し)

◎船へ住み込む為のお引越し準備
(新住所は船?)

◎息子にも報告せねばだ。
(きっと絶句もの・・・このまま古くなった段差の多い、寒い一軒家で突然死したり認知に一直線する方が、きっと罪だからね。放っといても明るく元気で死ぬまで働く方が息子孝行だと伝えたい。こんなお母さんでごめんよ)

◎知人、友人
(いつも家に居なかったから大して驚かないだろう。SNSで繋がっている)

◎自分の身体メンテ
ぐにゃぐにゃな体幹を整える。
(2年休んでいたYOGA再開と自宅ストレッチで鍛えられるか?)

◎購入品
アロマオイル手配 日本の精油
ベースオイルの椿油(非加熱)

◎介護アロマ技術見直し(知人、友人に頼んで練習させて貰う)

◎その他
持ち物 日焼け止め
私服 運動靴等 常備薬

◎かかりつけ医へ
内科、眼科、耳鼻咽喉科、歯科、等(年を重ねるとココ大事。)

~船着場~

メールでは集合時間が午後4時 逢魔ヶ刻に出港とある。
(それは特別な意味のある時間なのか?)


初夏を感じさせた昼間は汗ばむ程だったが、指定された場所は海風が強く寒い上に大きめのキャリーケースが引っ張り難く、足にぶつかり痛く進みづらい。

ドリーンさんらしき人が私に向かって手を振っている。
(急がねば!)

突如、目の前に青年が現れる。(雰囲気がナイナイの岡村君に似てる。)


「ありんさんだね?僕はアイク・エンジェルでぇす。フィリピン産まれね。これから一緒に働くよ~」と言って荷物を軽々持って、私の手を引っ張って連れて行ってくれる。
「ありがとう~アイク?さん。貴方はとても親切ね」
「はい~お婆ちゃんには優しくですぅ」
(髪を染めたけどやっぱりそう見えるよな~)と、考えてる間に到着する。

目の前に停泊してる船はイメージよりも大きくて驚く。

ドリーン「ありんさん、これが私達がお仕事させて貰う宝船です。スタッフもアイクが増えて、三人寄れば文殊の知恵ですネ。20代、40代、60代と年齢も幅広いチームになりました!」


アイク「ありんちゃん、アイクと3人で頑張ろうね~」
私「はい!頑張りましょう。」
(アイク君の中では、ありんさんとお婆ちゃんが合体してありんちゃんのようだ)アイクは浮足立っている。

それに比べて私はだな、、、
頑張ると言ったが正直な所、本物の船を目前にするとビビっている。
これから何が起きるのか?引き返すなら今しかない。

でも自分との約束を果たすと決めたし、前向きになれ、自分!

ドリーンさんは私の気持ちを察したかのように深く頷き、

「今回おもてなしするゲストはたった御一人。すでにお部屋でお休みされていますし、専属アテンドも最強です。さぁ、乗り込みましょう!」

ドリーンさんに手を引かれ、少し揺れているスロープを上がる。
後ろからは荷物を持ってくれてるアイク君が腰を支え押してくれる。


船内に入ると、待ってましたとばかりにドラが鳴り響き、静かに船は出港した。

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