見出し画像

既得権益からの抵抗【トランスジェンダーのトイレ問題】

1.障害学と既得権益

社会学の立場からディスアビリティ・スタディーズ(障害学)を研究されている星加良司先生の動画が面白かったです。

マイノリティの権利拡大は、既得権益からの抵抗を伴うもの。既得権益の理解をどのように得るのかが重要という話でした。(詳細は是非ご覧になってください。)

動画では障碍者が中心でしたが、動画でも触れられていた通り、女性や性的マイノリティについても同様です。

成田悠輔さんは、なぜかリベラルの間で、「老人差別主義者」と曲解されて批判されています。しかし、この動画を見てもわかるように、しごく常識人かと思われます。
ご著書『22世紀の民主主義』において、「マイノリティの権利(同性婚や夫婦別姓など)が、一部のマジョリティのノイズ的な意見によって獲得不可能になってしまっている。そうした現状の政治を危惧する」といったことが述べられておりました。
その解決策こそ「データ民主主義」でした。

(なお、NewYork Times等で問題とされた「老人は切腹して一斉退場すべき」という発言は、世代交代をしてくれ、という比喩ですし、既にご本人がそのような比喩的発言はミスリーディングであったと述懐されております。)


2.トランスジェンダーのトイレ問題も「既得権益からの抵抗」ととらえることができます。

さて、最近、一部の政治家や自称保守系論壇や一部宗教団体やヤフコメ民が大騒ぎしているのが「トイレ問題」です。

「LGBT新法」や「国家公務員トイレ問題の最高裁判決」や「誰でもトイレ設置問題」を機に、トランスジェンダーが大いにやり玉に挙げられています。(ryuchellさんの死因にも少なからず関係していると思います。関係ないよ、と言う人々も見受けられますが、当事者としては、関係ないとは思えません。)

たとえば、同じRehacQの、この動画における片山さつき氏。

(注)↓当事者の方は見る必要ありません。

(注)↑当事者の方は見る必要ありません。

片山氏らは「女性たちの権利が侵害されてはならない」「性犯罪が増えている」と主張して回っているのですが、実際は女性たちの権利が侵害されたりはしません。(後述)

しかしながら、権利が与えられてこなかったマイノリティ(⋯移行期のトランスジェンダーには切実な問題です。)に権利が与えられると、既得権益側は、あたかも自分たちの権利が侵害され、あるいは目減りしてしまうのではと恐怖を感じてしまうようです

さて、あまり言う人がいないので、あえて言いましょう。
トランス女性から見たら、シス女性は既得権益です。トランス男性から見たら、シス男性は同じく既得権益でしょう。生まれながらにして、既得権益を謳歌しているように見えます。
といっても、トランス女性も、性別移行が進むと、「既得権益側」になっていきます。つまりトランス女性間の格差問題ですが、それはまた別の機会に)

実際のところ、「トランスジェンダーのトイレ問題」でああだこうだ言っている人たちを見ると、「既得権益が脅かされるー」、と慌てているように見える。そういう視点もあるということです。

「女性の安全が脅かされる」と言いますが、見た目が女性になったのに諸事情で戸籍上の性別が変えられない人たち(トランス女性)は、現在進行形で安全が脅かされているのです。

マイノリティは我慢しろ? それって、完全に既得権益保護の思考ですよね。


3.では「既得権益」への侵害はあるのか?

さて、実際のところ、「トランスジェンダーのトイレ問題」によって、既得権益(主にシス女性や性別移行済みのトランス女性)への侵害はあるのでしょうか。

こたえは、ほぼNOです。

前掲の片山さつき氏が「トランスジェンダーを自称するものによる性犯罪が増えている」と発言していますが、そんなことはありません。

というのも、下記の内田舞先生による記事を見ていただければわかるかと思います。(先生もRehacQファミリーですね)

なお、片山さつき氏が上記の発言をされた際、西村ひろゆきさんと西田亮介先生の目が点になっていたのが印象的でした。
おそらくご両名とも、「ああ、この人、デマを発信してるなあ。それってあなたの感想ですよね。データあるんですか?」と思っていたのかと思われます。が、そのままその話題を流してしまったのが残念でした。

くまさん(高橋さん)、そこはメディアとして、ちゃんとファクトチェックをしたうえで流してほしかったです。。デマをただ垂れ流すだけではなくて。

それにしても、こうした片山さつき氏発言を聞くと、どうしても成田先生の「データ民主主義」に期待してしまいますね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?