キテレツ短歌〜あの夏の日編〜
「女子ってさ、ワキゲあんの?」と言ったやつ
大人になる前 十三の夏
ってな感じで、記憶を短歌として詠むことにハマっていた時期がある。
短歌というのは、5・7・5・7・7の計31音に音を当てはめれば良くて、俳句のように季語を気にしなくてOKという寛容な文芸だ。
作品の解釈は読み手に委ねられるのが基本なのだが、先ほど詠んだ作品について今日は解説させてください。
それは中1の夏。
エアコンのない教室が当たり前だった頃。
のぼせるような空気の中で授業を受けていた。
私の通う学校では、無香料であれば制汗剤の使用が許可されていたのだが、そんなルールを思春期の輩が守るわけない。教室には汗と香料の混じった複雑な匂いが充満していた。例えるなら...獣臭。
表向き優等生だった私は無香料のシーブリーズを使っていたのだが、「シーブリーズ=香り付きの制汗剤」と信じて疑わない教師から「それは使ったらダメだ」と注意を受けたことがある。とんだ冤罪だ。「無香料です!」とドヤ顔で反発したのが懐かしい。
そんな中、唯一、夏でも快適な環境で受けられる授業があった。パソコン学習。この時間だけは、涼しいパソコン室で授業が受けられた。
余談だが、エアコンが設置されているのはパソコンの故障を防ぐためらしい。だが、人だって気温の変化に弱い。人の命よりパソコンの命の方が優先されるのは今でもやっぱり解せないなと思う。
それはそうと、この場所であの短歌の記憶が生まれた。
隣に座っていた男子がふいに聞いてきたのだ。
「...ねぇ、女子ってさ、ワキゲあんの?」
「...はっ?!」
突然だった。
背筋がスーッとなる。涼しいからではない。緊張のせいだ。
((なんて答えづらい質問ッ...!!))
おちゃらけるでもなく、嫌がらせでもなく、
「口笛はなぜ遠くまで聞こえるの?」
「あの雲はなぜ私を待ってるの?」
と言わんばかりの本当に純粋な質問だった。
もしこれが職場での出来事であればセクハラで即通報しても良いだろう。
しかし、私たちはまだウブな思春期真っ只中で、大人とは呼べない年頃だったのだ。
返答の選択肢はいくつかあった。
選択肢①「そりゃ、あるでしょ。」
これでは既にあるのだとバレる。それはちょっと恥ずかしい。「ワキゲあります女子」のレッテルは避けたい。
選択肢②「いや〜、ないんじゃない?」
と言えば、この男子が「女子にワキゲなどない」と勘違いしたまま、大人になるかもしれない。(たまにいるよね...)
ベストな返答を出すのに困っていると、背後から話を聞いていた女子生徒が心配そうに私に言った。
「え...あるよね...?」
きっと彼女は当然女子にもワキゲが生えるものと知っていて、というか経験していて、「これは普通ではないのか?!」と心配になって聞いてきたのだ。
そしてその時だった。ベストアンサーが降りてきたのは。
「まぁ、大事なとこには毛生えるって言うよね...!」
我ながら超無責任だが、誰も傷つけない模範解答だったと思う。
男子にはそれとなく「女子にもワキゲはあるのだ」と伝わっただろうし、女子にも「むしろ大事なところにちゃんと毛が生えて良かった」ということになったはずだ。
男子は「へぇ...」となり、女子はほっとしたような顔をしていた。
でも後に気づいたことがある。読者の中にも既に別のベストアンサーを見つけている方がいるかもしれない。
そう、なんてったってここはパソコン室なのである。
もう一度、あの時あの場所に戻れるなら私は大声で言いたい。
「目の前にあるてめーのパソコンでググれやァ!!」
ってなわけで(?)、改めて先ほどの短歌を鑑賞して頂けると幸いです。
「女子ってさ、ワキゲあんの?」と言ったやつ
大人になる前 十三の夏
この夏、短歌詠んでみません?
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