ホテルや旅館の「リピーター」とは何か。
今回は、同じホテルや旅館に何度も足を運んでくださる、いわゆる「リピーター」について、改めて考えてみたいと思う。
これまで10年ほどホテルや旅館で接客をしてきたが、やはり常に目標としていたのは「多くのリピーターを創ること」であった。ただ、そもそもリピーターの定義やリピーターはなぜリピーターになってくれているのかなど、しっかりと自分の中に落とし込めていなかったので、10年という区切りの今、改めてその問いの答えを自分なりに考えてみようと思う。
リピーターとは何か?
まずは、リピーターの定義づけから。
リピーター:繰り返す人。特に、旅行などで同じ血を再び訪れる人、また、同じ商品を気に入って再度購入する人などにいう。
2回以上繰り返すことで既にリピーターと言って良いそうだ。ただ、現場にいる身としては、2回来てくれたからリピーターと呼べるかと言ったら、そうではない気がしている。もちろん、2回来てくれただけでも有り難いのですが、2回目から3回目への壁が高いように感じていて、3回以上来てくださったらリピータと呼べるのではないかという感覚があります。
では、3回以上来てくださる方をなんと呼べば良いのか?
リピーターとファンの違い
ファン:特定の人物や事象に対する支持者や愛好者のこと。「熱狂的な」を意味するファナティックの略。
リピーターの中でも、本当にそのホテルや旅館を愛し、3回以上何度も来てくださるのは、「ファン」である。この言葉が一番しっくりくるのではないだろうか。私が目指していたのは、リピーター以上の「ファン」を創ること。
なぜ人はあるものに対しての「ファン」になるのか?
恐らくどなたにでも表面的や内面的に「ファン」になっているものや人があるのではないだろうか。スポーツやアイドルや歌手、アニメや映画などの分野が熱狂的はファンが多い印象である。ではなぜ人はこれらの分野でファンになることが多いのか。その理由をいくつか挙げてみる。
①あこがれ
自分が目指していたり、実現したいと考えている夢を達成していたり、世界観を創り上げているものや人にファンになりやすい。「あのような人になりたい」「あのような世界を創ってみたい」というあこがれが人をファンにさせる。
②共感
自分がこだわっている部分や大切にしているものと、同じことをやっている人にファンになりやすい。「自分と同じ考え方、似た価値観」が安心感を生み、人をファンにさせる。
③応援
上の①や②がある前提で、加えてそのものや人に少し足りていない要素があり、その要素に対して「私がなんとかしてあげたい」という想いが人をファンにさせる。
では、ホテルや旅館で「ファン」を創るためには?
これまで述べてきたことのまとめとして、最後にホテルや旅館でファンを創るためにやるべきことを自分なりに提案してみる。
●世界観やコンセプトをしっかりと作り、全員で分かりやすく表現する
ファンを創る要素である「あこがれ」や「共感」を生み出すためには、そのホテルや旅館が「何を大切にしているのか」「どのような世界観を創ろうとしているのか」「どのように社会に貢献しようとしているのか」をしっかりと作り、そこに働いているスタッフ全員が腹落ちして、来てくれるお客様に対して分かりやすく表現をしていることが重要だと考える。
そしてそこには、欠かすことのできない「地球環境への取り組み」を組み込むことが今後は必須であると考える。
●「お客様の中の一人」ではなく、「●●様という一人のお客様」という捉え方
ファンになってくださっていることを認識し、そのお客様の顔や名前、ホテルや旅館での過ごし方、ニーズなどを把握する。これが最も重要だと考える。「お客様」ではなく、「●●様」と最初からお声かけし、前回の滞在の思い出などを会話に入れ込み、その●●様が過ごしやすいようにお部屋の設えや食事時間などのスケジュールをこちらから整えてお出迎えをする。
一番手間や時間がかかることだが、ここが地道にしっかりとできているかいないかがリピーターからファンに変わる大きな分かれ目だと考える。
●来てくれることが有り難いことだと感じ、しっかりと感謝を伝える
無事にファンになってくれることができ、何度もリピートしてくださると忘れがちなのが、「来てくださったことに対する感謝」です。毎回毎回来てくださったことに対して、心を込めて直接感謝の言葉を伝える。単純なことですが、難しいことでもあります。来てくれることが当たり前になってはいけず、有り難いことだと改めて認識し、「ありがとうございます」を心を込めてお伝えする。ファンであり続けてくれるためには、やはり最後は人の想いが肝要であると考えます。
題名の「リピーター」から「ファン」へと変わってしまいましたが、ここまで書いてきて私の結論としては、ホテルや旅館の「ファン(リピーター)」とは、そこに働いているスタッフが創り上げるものであるということ。
スポーツ選手やアイドルなどとは違って、ファンの皆様に直接お話しができたり、接客ができたりする分、ファンの熱狂度を上げるチャンスは多くあるのだと思う。逆に、一つの対応や声かけの仕方などで、熱狂度を下げてしまう可能性も大いにあるということです。
来てくださった一回、一回を大切に、有り難いことだと捉え、感謝の想いを言葉やおもてなしで表現する。
今後も、自分自身に言い聞かせてファンづくりを続けていきたいと思う。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?