マジェスティック

記憶などくそくらえ

 売れない脚本家が、豪雨で川に流され記憶をなくして、戦死した映画館の息子と間違われる。

 人間の個性は記憶だと言われる。見た目が同じでも、記憶が違えば、別人だ。記憶を保っていれば、見た目が違っても、同じ人間だと分かる。

だからどうした、っちゅう話である。

主人公は記憶を失い、知らぬ町で知らない人の息子として生きていくのだが、だからどうだっちゅうことだ。それでいいじゃないか。自分の過去と違う環境に放り込まれても、そこで幸せに生きられるなら、それに勝ることはない。過去の自分と一致しようがしまいが、今の自分が幸せに存在できているなら、それに越したことはない。今、ここ。禅宗の坊さんがよく言うことだが、過去を大事にしすぎて、現在をおろそかにするのは本末転倒だ。

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