インナースペース

 ミクロ化する実験で、敵に襲われ、ウサギの体内に入る予定が間違って人間に注入されてしまう。ミクロ化された人は、酸素残量のあるうちに元に戻らないと死ぬ。注射された人は、体内に入った変なものを取り出したい。ミクロ化した人の恋人メグ・ライアンに、注射された人も好意を抱くが、最後は元の大きさに戻って、小さくなってた人とメグ・ライアンが結婚する。

 1987年の作品。スピルバーグが製作総指揮で、アカデミー賞視覚効果賞を受賞。30年以上たって見ると、申し訳ないが陳腐に見える。007の秘密基地もハリボテに見えるけど、それはそれで味があるし、アクションは迫力がある。でも、この作品は古臭さが際立つ。

 何十年たっても面白いものは、人間に対する深い考察を繊細な技術で表現したものだ。この作品は技術面での進歩に大きく貢献したはずだが、時がたつとその努力が分かりにくくなる。あらゆるものの発展に、細かな技術の進歩が大きく役立ってきたはずなのに、名作として評価されるのは、人間の生き方を表現したものだ。技術よりメッセージだ。

 芸術家の名は残り、職人は忘れ去られていく。悲しいけど、それが人間のありきたりの受け止め方だ。地道な努力を評価し記録できるのは、その道の歴史を知った専門家しかない。一般に知られるところまでいかなくても、歴史の片隅くらいに残すにはどうすればいいか。


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