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【小説】有明の月(全52話)story.29

構想/岩清水緑風
共同脚本/岩清水緑風・朝倉香絵
執筆/朝倉香絵

前回が気になる方はこちらからお読みください。

第二十九話

今年も鹿島を旅立つ日を間近に控えた脚本家ときょうかが、鈴花とまり花をドライブに誘った。

行き先は多良。


車を走らせながら鈴花が言った。
「先生、先日はありがとうございました。先生のあんな迫力ある言葉、初めて聞いたのでびっくりしましたぁ!でも、おじいちゃんは『先生がうちの蔵のことを真剣に考えて下さって嬉しかった。』って言ってましたし、辰徳さんなんて、『先生に喝を入れてもらってなんだか目が覚めた。』って言ってたんですよ。『六さんがいい酒を造りたいって言ってた意味がやっとわかったよ。』って。」

脚本家が言った。
「あぁ、あれね、マインドセットっていうの、マインドセット。アハハ。」

「でも、そのおかげで私も、お母さんがやっていたことを他にも思い出したんです。」

「それは良かったね。ちなみにどんなことを思い出したの?」

「お母さんが元気な頃って、福岡とか東京まで行って、佐賀のお酒フェアに出展してたんです。そういうイベントって土日が多いので私も一緒に行ったことがあって、お母さんはお客さんにうちのお酒をいろいろ出すんですけど、お酒のことよりも佐賀の話をしていました。うちのいろんなお酒を飲んでもらいながら祐徳稲荷とか、武雄図書館とか、有田焼きとかの話をしていたんです。そうすると有田焼きのお皿を持ってる人とか、テレビで武雄図書館を見たことあるっていう人がいたりして、お客さんから『今度佐賀に遊びに行きます。』って言われるんですよね。
東京のイベントで会ったお客さんが何年かしてからうちに来て、『東京で降魔買いました!ようやく佐賀県に来れて、さっき祐徳稲荷にお参りして来ましたよ。』みたいなことがあるんです。こうしてみると、お母さんって佐賀県の観光大使みたいですね。」

「そう。それはお客さんが楽しいだろうね。お酒も売れるだろうね。」

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