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法学徒徒然③

1やっぱり長い前置き

昨日大変中途半端なところで終わってしまいました。明日の課題はまだ終わっていませんが、とりあえず続きを書きたいと思います。

ちなみに、明日は民事訴訟法の授業です。ロースクールでは、事例問題を素材に生徒と教員の質疑応答を通じて法の解釈・適用の訓練をしていく授業が主流です。いわゆる六法科目はすべてそれで、それ以外のちょっとマニアックな法(租税法、労働法、倒産処理法…etc)などの、いわゆる「司法試験にでない法律」(っていっても、例示の三つは司法試験の選択科目です)については、講義形式の授業が多いです。ただ、私が昨年履修した租税法は、後期はゼミ形式で毎週一人ずつ持ち時間45分で発表していきました(なんでゼミ形式だったんだろう…おもしろかったけど)。

昨日お話した「法解釈」をより専門的に学んでいく場所としてロースクールは提供されています。「解釈」の仕方は究極的には千差万別ですが、ここでは、いわゆる「判例・通説」の解釈の仕方を中心に学び、まずはそれをうまく使いこなせるようになる訓練を受けています。

特に弁護士は、訴訟を通じて紛争を解決していく必要があるわけですが、勝訴するためには裁判所を説得する必要があります。裁判所を説得する一番手っ取り早い方法は、最高裁判所の解釈の仕方をベースに自らの主張を組み立てることです。法曹実務家(=弁護士、検察官、裁判所)として実社会で法の適用解釈を駆使し問題解決をできる人材を育成することを目標とするロースクールでは、とりあえずは、最高裁判所の考え方ベースに法律を使いこなせるようになってほしい、ということです。最高裁判所の考え方が唯一至上のものではありませんが、まずは、そこを理解してから、と。空手でいう守破離の「守」ですね。(話がずれますが、武道においても勉学においても守破離の「守」の期間は、稽古中勉強中の本人が思っているよりも「はるかに長い」と思います。完全に「守」のみでもそれはそれでダメ、というか思考が停滞していしまうので、ほんの少しの「離」と「守」を短いスパンで繰り返したり同時並行で進めながら学んでいくもんなんじゃないないでしょうか。)

2いよいよ本題 「法学って何?」「法解釈学とそれ以外」

書きたいことが多すぎていけません(明日の課題から目を背けているわけではないですよ!)。本筋に戻ります。
法律学とは大雑把に「法解釈学」と「それ以外」だと分析しました。それでは「それ以外」にはどんなものがあるでしょうか。

基礎法学、実務家科目、、、、、

すみません、白状するとあまりよくわかってはいません。よくわかっていないなりに簡単に紹介していきたいと思います。

〇基礎法学

実用法学に対して、少なくとも直接的には法的な諸事象の純粋に理論的な認識・解明を目的とする法学。理論法学ともいう。…法社会学、法史学、比較法学、法哲学がこれに属する。

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「基礎法学」

ちなみに「実用法学」とは、法解釈学と立法学のことです。恥ずかしながら、法学の学問上の分類について、きちんと考えたことが無かったので、ブリタニカ国際大百科事典に頼りました。(思い返せば、大学の授業でこういうのをきちんと習った覚えはないです。)ここでの目的は、私の経験を踏まえて法学部では何を学ぶのか、を明らかにすることなので、学問上の分類について無知なのは許してください。

肌感覚だと、法学部では7割「法解釈学」を学び、残り3割で「法社会学、法史学、比較法学、法哲学、立法学」のうちの好きなものを学びます。以下、すごく簡単に書く学問の内容を説明するとこんな感じです。

・法社会学…大雑把に言えば、社会科学の観点から法律を見つめなおすという学問です。たとえば、社会をゲームとして観察し、各ゲーム状況にふさわしいルール設定を考察したうえで、それが現在の法制度に考慮されているかされていないかを考えたりします。
・法史学…東洋法、西洋法の歴史などを学びます。私は「日本法制史」という授業を履修した経験があります。イメージとしては、思想と歴史を6:4くらいの割合で学ぶ授業です。
・比較法学…日本の法律は、フランス法とドイツ法のちゃんぽんでして、しかもそこに先二つの法律とはバックグラウンドの異なるイギリス・アメリカ法の考え方も導入されています。このあたりの国やそれ以外の国と、今の日本の法制度を比較検討する学問です。
・法哲学…法理学と呼ばれることもあります。法に関する原理的・基本的問題を研究する学問です。たとえば、「ドーピングはは禁止すべきか?」を、「国家は、人々の人生の選択に対して、どうあるべきか」(たとえば、【国家の政策は、特定の善き生の構想の本質的価値にもとづくべきではなく、人々が抱く善き生の構想から中立であるべきだ】と考えたりする。こうするとドーピング規制に国家が協力するのはいかがなものか、と言う結論に近づいていきます)という問いにまでさかのぼって考える学問です。

敢えて上で書き落したのですが、「立法学」は、私の大学で授業として開講されていた記憶が無いです。立法学は、名の通りで、「法律を作る」ことに関して、政治学、社会学、法学などの観点から総合的に研究する学問になります。

おそらく、公共政策院がこちらの分野を担当するんじゃないのかな、と勝手に思っております。

〇実務家科目
こちらは、大学ごとのバリエーションがすごそうです。私の通っていた大学では、「民事裁判演習」みたいな名前の授業がありました(私自身は履修していないので、うろ覚えです)。

教員のバックグラウンドは、純粋に研究者の方もいれば、裁判官を経て研究者になったり、「実務家教員」として、普段は実務家(弁護士、検察官、裁判官のどれか)として活動しながら、定期的に大学に教えに来るタイプの方もいます。

実務家科目は、実務家教員の方主導で、実務ではどのように法律を扱っていくかを勉強します。

それこそ実際に模擬裁判をやってみたり、刑事訴訟の手続きを勉強したり、弁護士としての職業倫理を勉強したりします。

いわゆる、「学問」みたいな感じはやや薄れますが、これもこれで大切な分野です。法は言ってしまえば社会ルールであって、高度の抽象性と論理性が要求される一方で、現実に適用運用されてこそ価値を発揮できます。どのようにして価値が発揮されるのかを知っておくことは、法自体を考察する上でも欠かせない視点です。

結局法学部では何を勉強するというのか

次回の考察は「それは何かの役に立つの?」を取り扱いたいと思っています。それにつながる伏線として、ここで法学部での勉強を総括します。

法学部での勉強は実社会との乖離が激しいのと内容が難解であることのダブルパンチをかましてくるので、法学部生の9割は自分が何を勉強しているのかわかっていないと思います。気づけば足掛け6年法学を学んでいる身として、いったんの結論を示すなら、「法解釈学」をベースに、➀法律の扱い方を知ること②法律を通して物の考え方を身に着けることだと思っています。

➀法律の扱い方を知ること
こちらは前回詳しく書いた通りで、六法(その中でも特に憲法、民法、刑法)を通して、「法律ってこういうモノなんだ」と知ることです。全体像がよくつかめなくてもとりあえず知る。法律は、実社会のありとあらゆるところで登場します。詳細は訳が分からなくても、とりあえず「民法には、総則、物権、債権総論、債権各論があって、、、、、」みたいに条文の並べ方を知っている程度でも、まったく知らないよりかは役に立つわけです。

②法律を通して物の考え方を身に着ける
法学初学者向けの本にはよく、「リーガルマインドを身に着けるのが大切」と書かれています。リーガルマインドとは、簡単に言えば「法律家の物の考え方」です。法律をよく知っている人の考え方を身に着けるために、法解釈学を勉強しているというわけですね。
具体的には、「法的三段論法」「多面的な利益を考慮する」「論理的に考える」あたりでしょうか。
法律家の思考様式は、法律家にならなくても有用です。どんな職業にだって応用できると思います。

個人的には、「リーガルマインドを身に着けるために、法解釈学をいきなり扱うのは内容が難しすぎやしないか」とか、「法学入門書ではやたらリーガルマインドを身に着けることを前面に出すけど、それってどうよ」とか思っております。次回以降でこのあたりを深堀り出来たらいいですね。

今回はここまで。私は風呂に入って明日の課題に取り掛かりたいと思います。ここまでお読みくださった方、ありがとうございました。

参考文献
飯田高「法と社会科学をつなぐ」99頁
瀧川裕英「問いかける法哲学」12頁
田高寛高他「リーガル・リサーチ&レポート」7ー15頁


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