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アメリカのBIM活用状況-CADからBIMへの変遷-        

本記事ではアメリカにおいてCADからBIMへ移行するにあたって直面していた課題や、移行の成功事例について紹介します。


CADで直面していた課題とBIMによる解決策

CADでのプロジェクト推進はBIMと比較するといくつか課題がありました。
以下の5つが主なものです。

課題⒈データ統合が困難
CADは2Dおよび3D図面の作成に特化しており、図面を構成する要素(線、円、ポリゴンなど)の情報しか含まれていないため、プロジェクト全体の情報を把握するのが困難です。そのため、CADのみでプロジェクトを管理する場合、他のツールやファイル形式のデータを利用して情報を補完する必要があります。

□BIMによる解決策 -リアルタイムの共有、コラボレーションが可能-
BIMは、建築家、エンジニア、施工業者など複数の分野で作成するモデルとデータを統合できるため、プロジェクト全体のデータの一元管理が可能です。BIMデータのみでプロジェクトの情報を管理でき、複数の関係者が同時に最新の情報にアクセス可能です。


課題⒉建物全体のライフサイクル管理が困難
CADは通常、設計およびドラフティングの段階で使用され、建設および保守の段階には及びません。そのため、CADは建物のライフサイクル全体の管理には向いていません。

□BIMによる解決策 -建物全体のライフサイクル管理-
BIMはモデルに対し詳細な情報(材質、製造元、コスト、耐用年数など)を視覚的に表示できます。そのため、建設、運用、保守に有用なデータを取り込み、建物のライフサイクル全体を包括的に管理します。


課題⒊不整合や一貫性の欠如
CADの場合、各図面での修正をそれぞれのデータで行います。関連のあるデータの更新漏れなどにより、モデルの不整合や一貫性の欠如が発生します。

□BIMによる解決策 -エラーの削減とデータの一貫性を保つ-
BIMは変更が発生すると、関連する情報に自動的に反映されます。そのため、CADで発生していたような関連図面間で生じる不整合は発生せず、手戻りを削減にもつながります。


課題⒋視覚的な情報の詳細度が限定的
CADモデルは主に設計図面の作成に適しています。3Dで表示された場合でも、BIMほど詳細な属性情報や要素間の関連性を視覚的に表現することはできません。

□BIMによる解決策 -視覚化と解析の強化-
BIMは3Dモデリングによる詳細な視覚化や、リアルタイムの変更反映が可能です。また、衝突検出、エネルギー分析、コスト管理、スケジュールシミュレーションなどの高度な分析機能を備えているため、CADに比べて効率的にプロジェクト管理が可能です。


課題⒌設計図書の手動作成
CADでは、図面リストや仕上げ表など、変更が生じた場合は手動で変更する必要があるため、修正に大幅な時間を要するだけでなく、修正漏れや不整合も発生しやすくなります。

□BIMによる解決策 -文書作成や変更の自動化-
BIMでは、図面リストや仕上表などの設計図書を構成する要素を自動で作成することが可能です。この機能により、作成時間の短縮だけでなく一貫性の欠如などの問題も回避できます。

参照元:https://www.truecadd.com/news/autocad-vs-revit-for-aec-firms


BIMの浸透の最大の課題

BibLusの記事によると、アメリカでBIMが広く導入される際に最大の課題は、国全体で統一されたBIMの標準化が欠如していたことです。
各連邦政府省庁や機関が独自の基準を作成した結果、BIMデータの互換性や一貫性が保てず、プロジェクト間で混乱や不一致が発生しました。

□解決に向けた取り組み
米国連邦調達庁(GSA、General Services Administration)は「GSA 3D-4D BIM Program」を策定しました。BIMプロジェクト全体を網羅する建設業向けのガイドラインが公開され、BIMの標準化が促進されました。

また、アメリカ国立標準技術研究所(NIBS)の監督下で活動する米国BIM標準プロジェクト委員会の報告書によれば、BIMの導入により、以下のような効果が得られたことが報告されています。

  • 建設コストの5%削減

  • プロジェクトの完了までの速度が5%向上

  • AEC部門の生産性が25%向上

  • 人員活用の25%削減


BIMへの移行での成功事例

国を挙げてBIMの標準化を進めたことで課題を乗り越え、BIMを活用した成功事例も生まれるようになりました。

⒈KLH Engineers
従来のCADワークフローでは、人材の入れ替わりや品質、一貫性の問題が頻発していました。しかし、BIMソフトウェアに移行したことで、プロセスの効率化が実現し、チーム間のコラボレーションが大幅に向上しました。これにより、KLHは3年間で請負業務を大幅に拡大することができました。


⒉Levi’s Stadium
リーバイス・スタジアムの建設では、BIMが効果的に活用されました。この技術を導入したことで、プロジェクトチームは電気設計の調整を効率よく進めることができ、予定よりも2か月早く、かつ予算内でプロジェクトを完了させることに成功しました。この事例は、BIMが大規模かつ複雑なプロジェクトで、従来のCADの限界を克服するためにBIMがどのように役立つかを示しています。


⒊The Children’s Hospital of Philadelphia
この病院の増設プロジェクトでは、BIMを活用して、設計から建設までの全フェーズでMEPシステムの調整を行いました。これにより、既存の病院業務への影響を最小限に抑えつつ、最適な患者ケアを維持し、プロジェクト全体の効率が向上しました。この事例は、従来のCADでは対処が難しかった課題に対して、BIMがどのように解決策を提供できるかを示しています。

参照元


まとめ

今回はCADからBIMへ移行前後の課題や、それらをどのように乗り越え、プロジェクトを成功に導いたかを実例と共に紹介しました。
アメリカのBIM活用に関して、以下の記事でもご紹介しています。


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