いつか
いつかくるとは思ってた。
いつまでもあると思うな親と金。
こんな使い古された言葉が身近に感じるとは思わなかった。
身近にきたからこそ、その言葉が意味をなしてくる。
親父とした久しぶりの電話。
男の親子なんて、そんな大層な話しないと思ってるし、より我が家はそうだった。
ことの顛末を聞かされ、親父らしいなと思った。
今置かれている状況を飲み込んで、自分ができることをやる。
なんとなく思ってた親父ってそういう人だよなってのが露呈している感じがした。
親父は仕事人間で俗にいう家庭を顧みないタイプの人だったかもしれない。
そんなに親父とどこかへ出かけた思い出が多く残ってない。
夏のプール、旅行、たまに買い物。
一緒にやった人生ゲームとモノポリー、プレステで電車でGO。
そんな数えるくらいの思い出。
朝早く出て、夜遅く帰ってくる。
早く帰ってくると酒飲みながらパソコンいじってる。
土日は朝からゴルフ。遅く起きても打ちっぱなし。
たまについていったこともあった。
年に数回行った親戚の家。
道中の2時間ほど、特にこれって話した覚えはない。
記憶にないだけでいろんなことをしてるかもしれない。
そんなことを街中を歩いている時、信号待ちをしている時、お祭りに行った時、いろんな親子の姿を見て思った。
二十歳を超えてから少しずつ話すようになった気がする。
初めて親父と酒を飲んだ時、なんだか親父は嬉しそうだった。
少し飲むペースが早いように感じた。
なんだか嬉しかった。
社会人になって話すことが増えた。
親父の仕事のことなんて聞いたこともなかった。
そういえば親父の会社に小さい時に行ったことがあったかもしれないな。
なんかいろんなこと思い出してきた。
親父の作る玉ねぎたくさんすぎるチャーハン。
初めて見に行った映画のファインディングニモ。
運転中は鼻歌歌ってる。
なんだかいろんなシーンを思い出してきた。
親父がおれの前で涙を流したのは一回しか記憶がない。
おれもその時一緒に泣いた。
あの時のことはずっと覚えてるな。
親父のお母さんの葬式。
忙しく動く親父と、居心地の悪い思春期のおれ。
ふと空いた時間に横に座って親父と交わした少しの会話。
あの言葉のために生きてると言っても過言じゃないんだよな。
なんだかいろんなシーン思い出してくるな。
親父の人生はどんなだっただろうか。
楽しいんだろうか。
幸せなんだろうか。
悲しいんだろうか。
寂しいんだろうか。
嬉しいんだろうか。
辛いんだろうか。
少しでも聞いておきたいな。
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