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「壊れる」を経験値から予測する

「うるひと」の説明にあった前脚を浮かせて後脚だけに全体重がかかる状態。
大人の全体重がテコの原理で、すべてのし掛かるのですから
壊れてしまうのは当然なので、「つくるひと」としては
それは使い方が悪い!と胸を張ってお客様に主張して頂きたい(笑)。

さて、それと似たような経験ですが
あるお客様に納品した椅子の話です。
完成した椅子を先行して納品し
その数日後に他の家具一式をお届けしたのですが
すでにお使い頂いていた椅子を何気なく見ると
後脚と幕板の仕口に微妙なすき間が見えたのです。
納品して数日です。

「?」と思いました。

製作直後だったので一瞬青ざめました。
でも落ちついてよく見ると、その椅子の真後ろにファンヒーターがありました。

ちょうど冬でしたので、お客様が座るときに足元が寒いのか
椅子の真後ろから足元にむけてファンヒーターを使っていたのです。

ちょうど真後ろから仕口辺りに
カラっカラっに乾いた熱い温風が直接吹きかかっていたので
ほんの数日で木が痩せて仕口の一部が開きかけていたのが原因でした。

その場でお客様に事情を説明して
ファンヒーターから一定の距離を開けて頂くことが出来たので
事無きをを得ました。

得てして日頃から椅子、木を扱っているので
そんなことは皆の共通理解だと思い込んでいることがあって
それ以来、取り扱い説明にはかなり気を付けるようになりました。

ただ使い方のマズさが原因であるとしても
最大限、トラブルにならないよう
強度、構造には配慮するべきだと考えています。

前段の前脚を浮かせて座るようなことがあっても
容易に壊れないように
後脚の転びを考えるとか
仕口に工夫を加えるとか
そういう配慮はデザインに影響します。

頭を悩ますのが「スタッキング」機能を盛り込むときですね。
これはもう避けて通れないので致し方ないのですが
椅子を重ねる為に、どうしても後脚を外側に持ち出さねばなりませんから
これが決定的に強度の確保に影響します。

「つくるひと」はホームユースの椅子製作が主なので
「スタッキング」機能が優先順位としては低いのですが
「うるひと」は施設や店舗などに納品するケースも多いと思います。

施設や店舗の不特定多数が利用する場所ほど
強度はより必要であるうえに「スタッキング」も重要。
そんな時「うるひと」はなかなか頭の痛い
選択をしないといけないのかなと想像します。






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