見出し画像

『響け!ユーフォニアム3』の日記ぽいやつ。その2

以下の内容はこの記事の続きです。


7月6日

第6話を見る。幹部ノートを使った塚本と麗奈の漫才に吹き出す久美子から始まる。その後に真由とさつきの一瞬のやり取りが映り、再び久美子に戻る。ここの直前で久美子は

「幹部が愚痴言えるのはここだけだから」

と言っているが、そこに挟まる様にして表れる真由。少し意地悪な演出に感じるのは私だけだろうか。そして、真由の写真を通して描かれる修学旅行。ここら辺の描写が描かれなかった事に血涙を流しそうになる。さて、ここで真由のカメラに対するこだわりを感じられるやり取りが挟まると同時に、真由がカメラに全く写っていない事が指摘される。ここで、その理由を話すときの真由は左の髪を触っている。そして、その姿を見つめる久美子にカメラが変わり、今回のサブタイトルが提示される。サブタイ明けは、滝先生が指導する場面から入り、その後は低音組に場面が移る。すずめとさつきのやり取りが真っ先に描かれており、アンコン編でもそうだが、さつきの性格の素晴らしさがきちんと感じ取れる。だからこそ、後半の場面により心が動かされるのだろうなと思う。

奏の演奏のミスに気づく久美子と真由。そこを指摘されて、久美子の方にだけお礼を言う奏。ここら辺、些細な描写ではあるが、やはり奏は久美子派なんだなと強く感じる。デカリボン先輩の面影をその中に見た。

「やっぱり、私、辞退した方が良いんじゃないかな?」

真由の言葉が波紋の様に久美子に伝わる。それによって動揺というか、心が騒めく久美子。そこにすかさず返答する奏。真由は自分がソリに選ばれて誰が喜ぶんだと久美子に問いかける。ここのやり取り、やはり意識すべきは奏と佳穂は真由と久美子の間にいないという事だ。並び順としては、確かに奏と佳穂は久美子と真由の間にいるが、やや曲線になった並び方をしているので、必然的に真由と久美子は真っ直ぐにお互いを見る状況が出来上がる。奏は会話に絡んでいるが、根っこのやり取り自体は久美子と真由の間で完結している。話の趣旨を考えれば、部長の久美子に話すのは妥当だが、この奏と佳穂を排斥した状況は、中々にエゲツないと思う。特に第12話まで見ていると、余計にね。さて、ここで久美子は真由の言ってる事がよくわからないと返答する。ここで映る久美子の楽譜の中には「皆とのシンクロを完璧に」とい文字が書かれている。ここで、久美子の動作からわかるのは、彼女は真由の意見をよくわからないと言っていたが、実際には理解しており、一度逃げの姿勢を取ったという事だろう。言ってしまえば、久美子は揉め事を起こしたくないのでこの様な行動を取ったのだろうし、真由と向き合う事を嫌がっている。そこら辺は、次回を見ればより理解が深まるよね。そして、真由の発言に安易な言葉で返してしまう久美子。さらに続けて、久美子の逃げてる姿勢が再度描かれる。ここら辺は今の北宇治を作り、今の北宇治の長だからこその弱さにも感じる。そして、このやり取りから想起するのは香織先輩と麗奈のソロをかけたオーディションを久美子は連想する。ここら辺、第12話を見ると、布石だったのだなと気づく。久美子はここの場面で

「あれは決して間違ってなんかいない。けれど、どう話せばそれが伝わるのか」

この台詞が、第12話ではあの様な形で解決する。久美子は自らの言葉に縛られるタイプのキャラクターだと私は感じているが、ここなんかも特にその良い例なのだろう。けど、それは悪い事だけではない。自分の発言に責任を取ったのだから。

話がそれた、第6話の話に戻そう。久美子は麗奈が後輩達を指導する場面を見かける。そこでは、麗奈らしい厳しい練習場面が描かれる。帰宅中の久美子の進路を妨害する様に、前から風が吹く。その中をチャリで進んでいく梓、強い。めちゃくちゃ荷物あるのになんでそんなに行けるんですかね...困惑。その後、ベンチで進路について話をしている2人がえがかれる。ここの場面で、麗奈とは違うタイプの音大志望が描かれる。久美子の反応からもわかるように、彼女は音大に行くという選択肢を少し重くとらえている傾向がある。それは、確実に身近な音大志望が麗奈だということが影響している。”音大=音楽をずっと続ける人が行くところ”という図式から抜け出せなかった。麗奈にそんなことないと言われても、引っ掛かりを覚えた。それは、やっぱり麗奈は特別な側の人間なので、彼女の言葉では久美子は引っ掛かりをとることはできない。久美子は特別な人間ではないがゆえに。そんな久美子の図式にヒビを入れた一人は梓だった。彼女のストイックさを知りながら、彼女の将来に対する普通な捉え方。久美子に近いけれど、少し特別な女の子の言葉だからこそ、久美子に響いたのだと思う。さて、久美子は、音楽を続けるのだろうか。

場面は移り変わり、オーディション場面になる。ここでは一年生の発言に、少し呆れる久美子が描かれる。しかし、ここの一年生の発言は当たり前というか、むしろこれ以外の発言が出てくるような人間が何人いるのだろうと思わされる。しかし、久美子はそこの発言を窘める。それは、もちろん先輩として、部長としての立場を踏まえたうえでの発言だろうが、私には麗奈の影がチラついてしまう。麗奈という特別な存在にかなりの影響を受けた久美子としては、そういう軟弱な(敢えてこの言葉を使います)発言は許せないのだろう。久美子の複雑な心情が見事に描かれている場面でした。

そして、ユーフォのオーディションが始まる。奏の演奏を聞きながら待機する久美子と真由。ここの二人の会話、映像から二人の間に心理的境がある様に感じられる。しかし、ここで興味深いのは両者とも滝先生の選択が全てであることを受け入れているのだ。久美子は、当然としても北宇治で日が浅い真由が滝先生の決断に全てを委ねることを受け入れている。当たり前、と言われれば、そうなのだろうが、敢えて二人の間の壁を演出として入れておきながら、両者の合意点を会話の中で描いたのは非常に意味があるのだと、第十二話を見た後の私は感じる。

「今年が、最後なんだ」

真由の音を聞き、一段と気合を入れてオーディションに臨む久美子のこの台詞が、私の心に深く刺さる。

Bパートはオーディションの結果発表から始まる。ここのソロが発表される場面はやはりユーフォという作品の中でも凄く特別な位置づけにあると思う。といのも、このオーディションによってコンクールの舞台で吹けるか否かが決まる訳である。つまり、オーディションに突破しなければそもそも勝負の土台に立つことができない。それは、「お前には戦う資格すらない」と言われているのに等しい。無論、本作は落選組に対してそのような厳しい描写は無いし、むしろ彼女達もきちんと主役として描いている。しかし、オーディションに落選した側の人間は、どれほど強がっても、努力が本物であるほど、悔しいことは事実としてそこにある。だからこそ、ここで選ばれるか否かの一瞬に彼女たち/彼らたちの気持ちがハッキリと描かれる。感情を爆発させることはないけれど、確かな感情がしっかりと描かれているのだ。

で、やっぱりこの回のオーディション発表で嬉しかったのは葉月が選ばれた場面だろう。これまで、オーディションに落ち続けた彼女がようやく選ばれる。シリーズものとして、長期間描かれてきたからこその喜びがここには詰まっている。そして、同時に描かれるのがさつきが落とされる場面。ここで、印象的なのは周囲の反応だろう。美玲や奏、緑の動揺がきちんと描かれる。けれど、その中でまったくの動揺を見せない真由。それは、彼女の付き合いの短さも当然あるが、それ以上に彼女の過去と音楽に対するスタンスが良く表れている場面なんだろうなと感じる。

そして、音楽室から出てきた場面では、よりそれぞれの感情が描かれる。ここで個人的に印象的なのはさつきの描写だ。選ばれなかったことにショックは受けているが、きちんとそれを受け止めている。葉月の言葉に元気返す。けれど、そこには悔しさが確かにこもっている。表情を映さないで、声のみの描写でそのことが伝わってくる。見事な場面でした。

さて、この後にも印象的な場面が連続する。一つ目は久美子がソロに選ばれたこと喜ぶ場面だ。ここで、美玲が部屋に入ってくるが、そこで映るのは真由の姿だった。ここでの真由の表情は非常に難しい表情をしている。これは一体なんなのだろうか。ここ一連の流れは久美子のソロを喜ぶ奏と、奏が選ばれたことを喜ぶ真由、その言葉に喧嘩腰な奏、そんな奏を窘める久美子、そして、メンバー入りを諦める佳穂になんとも言えない表情を浮かべる久美子が描かれる。

もう少し状況を整理しよう。真由は久美子がソロに選ばれたことを喜んでいる。もう少し言葉を選べば、安心している。しかし、安心しているのなら、もっと穏やかな表情でよいはずだ。そして、この後の場面では美玲のさつきがメンバーに選べれなかったことに関する疑念や不満が描かれる。それを考えると、真由のここの心情は、久美子がソロに選ばれたことで、安心し、その上で悔しさ(少しベクトルが違う気がするが)を感じている場面と捉えることができるのではないか。

また、ほかに印象的なものとしては滝先生の決断に信じきれない部員が、久美子がいることだ。これは、本作においては非常に大きな意味を持つ。今後の展開的にもそうだが、北宇治の実力主義は滝先生という判断基準の元に成立している。それが形成されるまでの激闘がユーフォの第一期で描かれた。そして、この実力主義を北宇治に導入する際に一番大きなひと押しをしたのは久美子に他ならない。だからこそ、久美子はその判断基準を信じてきたし、その中で悔しさや喜びを感じていた。しかし、当然だが滝先生は人間だ。法ではない。だからこそ、迷うことも、変化することもある。そして、当然、久美子も変化している(成長している)。つまり、両者の方向性が常に合致しているとは限らない。(この後は第十三話視聴後に書いてます。)

場面を少し戻そう。美玲とのやり取りを終えた後、いつもの場所で一人練習する久美子が描かれる。第十三話では久美子が何かあったときに『響け!ユーフォ二アム』を演奏していることを皆が知っていることが明かされた。これを想うと、真由は久美子が何か悩んでいるのかと察してここで登場したように思えるが、さすがに時期を考えるとこの見方は微妙な気がする。

ここの場面、放送当時は見ていてものすごく胃が痛くなりそうだった。いや、まあ、だからこそ第十三話で久美子と奏と真由の三人が共にある光景が何よりも美しいわけだが、それでもこの久美子の真由に対する苦手意識をここまで映像として全面的な出されると、見返しでもキツい。久美子と真由を分ける線、タイトルをわざと隠して映すカット、ものすごく真由の問いに言いよどむ久美子。ほんとに辞めてくれ~と心から思うくらいにここでの久美子は真由を拒絶していて、それを察した真由は逃げるように去っていく。

さて、滝先生との話し合いが終えた後に、担任と相談した後の麗奈と久美子は出会い、一緒に下校する。ここで、麗奈の久美子の仲の良いやり取りが描かれるが、それでも進路や滝先生に対する思いの差など、緩やかな二人の進む道の分岐を感じ取れる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?