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美里の家について

建築家ってどのようなことを考えて設計を行なっているの?

みなさん疑問に思っているのではないでしょうか?

設計する人によって設計の進め方は様々ですが、ちなみに僕はどのようなことを考え設計活動をおこなているのか、全てをここで伝えることはできませんが大まかな思考の流れをここでは説明していきたいと思います。

今回は沖縄県に立てた美里の家についてです。

1.施主の要望、敷地環境

まずは施主の要望から。いろいろありますが大枠は以下の3つ

・明るく、家族がつながるリビング空間
・沖縄の敷地環境に適した建物
・必要スペース:LDK、主寝室、子供室、畳スペース、水周り空間

「沖縄の敷地環境に適した」の言葉に腕が鳴ります。


次に、計画敷地です。

計画敷地の中にお客さんの要望の実現性を検討していきます。

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これが建物が建てられる前の敷地です。

敷地に行くと様々なことが読み取れます。

写真の左が東面ですがマンションが建てられています。敷地上部からの視線が気になります。

幸い写真正面、南側は平屋の住宅ですので開けていて上部からの明かりが期待できます。写真右側はお隣さんの住宅になっているので塀か何かを立ててプライバシーは守りたいところです。


光の推移、風の流れ、人の通り、視線の流れ、様々なことを同時に考えていきます。もちろん瞬間的にわかるものではありません。一程度の時間をかけて、なかなか来れない沖縄の町ですから、この頃は約3週間くらい滞在しながらゆっくりと構想を練っていきました。


2.どのような建築が良いかの検討

次はここにどのような建物が良いかを検討していきます。

お客様の要望である沖縄の敷地環境にふさわしい住宅とはどういうものなのかも検討していきます。

沖縄の建物はコンクリート造で作られたものが圧倒的に多く9割をゆうに超えます。

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2015年のデータですがほとんどがコンクリート造の建物である事がわかります。

今は少しずつ木造の建物も増えてきていますがこの結果は一目瞭然です。

ただ、だからと言って実際はどうなのかを思考していきます。本当にこの答えが正しいのかを考えていきました。

引っかかる点はやはり、高温多湿の沖縄の風土に対してコンクリート造はふさわしいのかという問題です。コストも割高になります。今は落ち着いてきているのかもしれませんが、この頃は本土の東日本災害の時期とも重なりコンクリート単価が上がっていたのです、、もちろんコストも建物作りには大切な要素の一つです。

結果的に今回の計画では、

木のもつ断熱性や調湿性、開口部やプランを柔軟に計画できる木造建築の軽やかさを沖縄の風土に合わせて建築に取り込む事はできないのかということを考えていきました。

単に木造の建物を建ててしまうのではなく木造・コンクリート造の長所を組み合わせた(チャンプルーした)快適な住まいのあり方を探ります。

スケッチや模型作りを繰り返しにより検討していきます。

コンクリートは魅力的な素材です。強靭な躯体を単純な操作で作り上げます。木造のように何層も層を作り築き上げていくのではなくて一発で。

石川のように寒い環境では冷気を伝えないためにも相当な厚みが必要ですが(打放しだけで仕上げるには住宅でも350mmの厚みが欲しいところ)、沖縄の風土では割と薄く仕上げられます。

木造の魅力は逆に層を軽やかに作り上げることができます。仕上げ層に断熱層、防水層、、そして今回の計画では木造の作る空気層に着目し快適な室内環境の向上を測ることを考えていきました。


3.出来上がった建物について

断面図です。

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建物としては一階をコンクリート造、2階が木造となっています。

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木造部は外壁・屋根通気を確保し、断熱材、空気の層が過酷な環境から室内の生活環境を守ります。熱効率の悪いコンクリート造も上部に木質空間があることにより、日射熱の侵入を大幅に、回避できます。熱せられた空気は上昇気流を生み2階で排熱されます。

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工事中の写真です。

強固な1階空間の上に木造空間が軽やかに設置されています。

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1階のコンクリート躯体の上に木造の躯体が設置されて行っています。

工事期間はだいたい6ヶ月。

ここから先、仕上げや収め方、電気計画や設備計画、様々な過程を経て、1つの建物が完成していきます。

設計期間を加えるとおおよそ1年が建物が完成くらいの目安でしょうか。

結果的に完成した建物です。

冬はもちろんのこと、夏でも風のある日は開け放すことで空調設備に頼り切らない住まいを構築することができました。

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沖縄に行った時はこの住宅に立ち寄ることが一つの楽しみになっています。

家全体が木陰の下にあるかのような快適な環境が心地よい風とともに形成されています。

1つの建物を考え完成に至るまでには様々な思考の流れや、考え方が存在します。

その流れをよく設計者、施工者、施主、皆で理解し合いながら進めていくことで理想の建築を建てることができます。

その流れを少しでも伝えていけたらと思っています。

建物を建てる期間はとても長く感じるかもしれませんがこの過程を楽しみながら進めていくことできっと思い入れのある建物を建てることができると思っています。

少しでも何かの役に立っていただけると幸いです。

美里の家

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建築家|Archlife主宰|株式会社西和人一級建築士事務所|金沢科学技術大学校非常勤講師|日本建築士会連合会青年委員会|Hp:https://archlife.jp|Insta:https://www.instagram.com/kazutonishi_architects/