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自宅リノベ全記録_建築家サイド(2)設計の射程

自宅リノベーション全記録〜建築家サイド〜の(2)になります。前回は下記になります。

まず、僕が建築を生業としてやっていくモチベーションは建築の歴史を進めることに寄与することです。そのために、自分なりに建築の理論を組み立てそれを建築にしていくことや、新たな価値観を示すことが必要だと考えています。要するにどう批評性を持たせるかということです。
今回は、この設計を進めていく上でどのような部分で建築として新しい試みを行えるか、デザインとしての強度を上げることができるかを考えたいと思います。設計を始める前にこんなことを考えてるよくらいな感じです。

1. 建築設計の解体

今回、設計プロセスや打ち合わせプロセスを全て公開しようと思ったのは、ただ記録して公開するだけで建築設計に対する批評性が得られると思ったからです。きっかけはこの記事でした。

僕は実務を通じて見積がブラックボックスだと思ったことはありませんでした。不明な点は工務店に価格の根拠を聞くことができるし、技術が必要な労働を見積もるわけですから、人によって単価が違うのは当然です。なので、この記事の建築の見積に関する部分はかなり極端な例を挙げていて、それを元に批判するのはどうなんだろうと思いました。積算事務所入れる場合は小規模だとほぼないでしょう。

なんでこんなこと書けるのだろうと考えてみると、要するに建築設計そのものがブラックボックスなんじゃないかということです。建築家サイド(1)でも書きましたが、設計料なんて実質言い値なので、設計者が自由に決めることができますし、設計プロセスは設計者の数ほどあるといっても良いのでよく分かりません。

だったら、自分の考えを整理するのも兼ねて公開しようかと思いました。そして、自宅を改修設計することにおいて、公開することのハードルは低くなり、建築家の自邸の設計だからできる部分でもあるので決めました。どちらかというと建築外に向けて発信したいと思い始めたことなので〜建築家サイド〜は自分の考えを整理するための場として考えています。

建築設計のプロセスをオープンにすることで、建築家がどのようなことに時間をかけて設計しているかを垣間見ることができます。それを見た人は、そのくらい考えてくれているのであれば、やっぱり建築家に頼みたいと思う人もいるだろうし、そんなこと考えなくていいからもっと早く設計して欲しいと思う人もいるかもしれません。家を建てたりリノベを検討するときに、もっと当たり前のように建築家に頼むことが候補に挙がるようにするためのきっかけになればとも思い、この記事を書いています。


2. リノベーションの一つのアーキタイプを作る

今回のプロジェクトは一度全て解体して、水周りを更新するため予算500万円だとローコストと言われるものになると思います。普通に風呂、トイレ、洗面スペース、キッチンを作ってしまえばなくなってしまうくらいの予算感だと認識してますが、そこに対してどうアプローチするかで、フルスケルトンでのリノベーションの一つの例となりうるように設計したいと思っています。フルスケルトンのリノベーションであれば、他の物件での応用がしやすくなるため、それを提示することは意味があることだと思っています。


3. 作ることと作ってもらうことの接続

このプロジェクトはローコストであるので、セルフビルドの選択肢もありましたが、それよりも工務店にお願いして作ってもらう部分と、後から(あるいは並行して)自分で作る部分をうまく接続することができ、それがデザインとして現れてくるようにすることで面白いものになるのではないかと思い、その方向で検討することにしました。
これも2.につながりますが、ただ、がらんどうの場所を与えて、DIYしても良いですよというあり方ではない自分で作れる余地を残す仕組みは応用の可能性があり、展開が可能になるかもしれません。

さらに、またそのうち勉強してまとめようと思いますが、建築家が意図したように作られ、施主もそのように感じられるような空間は実は窮屈なのではと最近考えています。解釈の余地がないというか、飽きるというかそのようなものではなく、もう少し解釈が開かれた建築のあり方を模索しているのですが、自分で作る余地があるというのはその一つの回答になり得ると思っています。

このような3つのポイントで批評性が得られるようなリノベーションにしたいと思っています。

あと、先日の合格発表で一級建築士合格してました。これで堂々と設計をしているといえますね。まだ設計料はとれませんが。

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