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自宅リノベ全記録_建築家サイド(1)建築設計とは何か?

自宅リノベーションの全記録〜建築家サイド〜の(1)になります。ここではそもそも建築設計って何かということを資格や法規やお金の面から考えていることを書いています。

設計を始める前に、建築設計とは何かということをしっかり考えたいと思います。なぜかというと、建築士という資格がないと設計できないもの、できるものがあり、その境界が難しく何が良くて何が悪いのかはっきり分からなくなっていると思うからです。また、設計料のあり方、設計事務所のあり方などもあり、分かりにくさに拍車をかけています。
ここであまり詳しいことを書いても長くなってしまうので、自分の場合どのように対応していくかということを中心に書いていきたいと思います。
法規的な部分は調べながら書いていて所定の機関にヒアリングしたものではないので、間違いがあるかもしれません。参考程度に思ってください。


1. 無資格で設計(デザイン)をすることについて

小さい木造であれば(100㎡以下)できますが、基本的には無資格で建築の設計、工事監理を行うことができません。新築、増築、改築、大規模修繕、大規模模様替えの設計をしようと思うと資格が必要です。(建築士法第3条)ここでまず驚きます。つまり、大学出たての無資格者の所員(社員)は設計できないということです。これを知った時にえっ全員設計してるじゃんって思いますよね。(建前上は、設計補助、設計アシスタントと呼んでいて、有資格者が最終チェックしハンコついてるので良いということでしょう。)

まあ、それは本質的な問題じゃないと思います。資格が必要な設計行為は建築確認申請を伴うからです。そうなると、第三者の目線で遵法性を確認できます。

僕が問題だと思っているのは、資格が必要ない設計で店舗デザインや、リノベーション(過半の修繕、模様替えでない)などで、その結果、延焼ラインがらみの違反はよく見ますし、これは悪質ですが、駐車場を屋内化してギャラリーにしてるやつとかも結構よく見ます。おそらくこの設計は、設計事務所でないところがやってるんだと思います。施工する人もどうかと思いますが。そういう施工者は知らないので詳細は分かりません。あくまで想像です。

実際、無資格の時に設計をする機会がある人は多いと思います。その時にどのように進めれば良いかのガイドラインがあれば良いと思うし、僕自身も現状無資格者なのでその辺は考えたいところです。

僕であれば、資格が必要ない設計は自分で進めて、デザイン料など(設計料ではない)という名目で報酬をもらい、資格が必要なものであれば知り合いの設計事務所と協力して、共同設計とし、設計料を報酬としてもらう。ということを考えます。簡単そうに見えますが、この線引きが難しいです。
例えば、用途変更を行うリノベーションの場合、建築士法第3条には用途変更は含まれないので無資格で設計はできますが、確認申請が伴います。確認申請は本来施主が出すもので、規模によっては無資格でできるのでいいのですが、ここで法規の知識がない人が設計をするのはどうなのかと思います。そもそも、過半の模様替え、修繕なども言わなきゃ分からないとこではあるので、その辺りは設計者の良心に任せるといったところでしょうか。
怪しそうなものは設計事務所と協力して設計するのが無難です。


2. 設計事務所のあり方について

次に設計事務所についてですが、そもそも設計事務所でなければ設計料として報酬を受け取ることができません。そして、管理建築士という資格を持っている人がいなければ、事務所を開設することができません。
これも初めて知った時になかなか大変そうだなと思いました。そのため、1. でデザイン料(設計料ではない)と書きました。

この辺りの縛りは、建築士という資格を守るために必要だと思いますし、建築士の独占業務として設計と工事監理があるので、その独立性を保つためにも必要だと思います。(例えば医師の免許がないのに治療して報酬をもらうことはできないのと同じように)また、工事における施主、施工者、とは違う建築士の第三者の目線でそれらをコントロールすることは良い建物を作っていく上でも大事なことだとは思います。

僕としては現状を把握してその制度の中でどうやっていくかということを考えるべきで、ここに関してはさっさと一級建築士をとって管理建築士をとるのがベストだとは思います。


3. 設計の進め方について

僕はいくつかの設計事務所にアルバイトや所員として在籍したことがあり、その進め方や設計料の考え方の違いを見てきて、それらを参考に自分としてはこう考えていきたいというところを書いていきたいと思います。まずは、僕の進め方とは違いますが一般的な設計事務所の進め方として以下の記事を紹介します。設計事務所以外のハウスメーカーとの違いなども丁寧にわかりやすく説明されています。

一般的には基本設計の前に設計者を選ぶかどうかのプロポーザルであったり、簡単なプランを数万円で作成したりなどあるようですが、僕がいた事務所ではそのようなことはありませんでした。僕のようなペーペーならまだしも、いくつも実績がある建築家がそのようなことをする必要はないと思っていますし、実際人が動いて作業がなされているのであれば、それに見合った対価を払うのは当たり前のことです。
(適当に何案か作って出すのでよければできると思いますが)
というスタンスを前提に書いていきます。

まずは、設計の流れとしては特に大きく変わりませんが違うところとしては
①基本計画という基本設計の前段階の期間を明確に設けること。
②原則、相見積もりを取らないこと(計画初期から施工者を決める)

です。流れとしては

(設計契約)→基本計画→基本設計(概算見積)→実施設計(見積)→見積調整→(工事契約)→工事準備→工事監理→引き渡し

となります。

それぞれ何をするかというと、
基本計画:その物件の使われ方を決める
(コンセプト、施主の要望を満たし機能的な部分を決める、プラン(ゾーニング)を決める)

基本設計:意匠(デザイン)を決める。
(施主が素材、形など完成形を想像出来る状態まで決める、概算見積のための図面作成)

実施設計:細かい部分まで意匠(デザイン)を決める。
(見積がとれ、作り方がある程度分かるところまで決める、本見積のための図面作成(申請必要であればその対応))

見積調整:見積の整合性の確認、施工者との話し合いで見積増減表を作成、施主との打ち合わせで調整

工事準備:施工図の確認(物件によってはない場合もあります)

工事監理:工事が図面通り正しく行われているかを確認。現場で新たに出てくる未決定項目を決定。

となります。今回の自分の家の場合のスケジュールは以下になります。この記事を書いている時は基本計画が終わって基本設計に入っているところです。

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①基本計画という基本設計の前段階の期間を明確に設けること。
についてですが、もちろん、物件によっては意匠も同時に進みますが、基本的にここでの進め方はコンセプトの作成とその共有、そして隠れた要望を明らかにしていくことにあります。
最初に要望を聞くのですが、いきなり自分の求めていることを全て伝えられる人は少ないと思います。ましてや建築の専門でない方がそれをするのは難しいと考えます。なので、この期間に、コンセプトなどをベースに考えられるプランパターンを多く出して、施主の要望が形になって現れてくるのを見ながら確認していき、今まで考えてなかった施主の要望を引き出すことが大事だと考えます。

これは、双方にメリットがあると思っています。考えていないパターンがあり、設計がある程度進んだときにそれに気付きやっぱりそっちが良かったということがあり得ます。そのようなことを減らし、施主はしっかりと自分が求めるものを選んでいる満足感が得られ、設計者としても手戻りの可能性が下がります。さらに言うと、手戻りになったとしても、どこまで設計が戻るのかが明確で、追加の設計料の話もしやすくなります。

②原則、相見積もりを取らないこと(計画初期から施工者を決める)
についてですが、こちらも施主の希望があれば相見積もりをとりますが、これは今までに建材として使っていなかったものを使用したり、違った使い方をする場合に、設計者が施工するわけではないので、その責任が取れません。それを実施設計まで進んで見積の段階で施工者にできないと言われると、設計が戻ってしまう可能性さえあります。そうならないために、基本設計段階から施工者を決め、施工方法を一緒に検討し、進めていくことで建材の可能性を広げられるのと、建築として良いものができると考えています。


4.設計料について

設計料の出し方も事務所によって様々です。僕が知る限り大きく分けて2つあります。

①工事費に対する割合(10-15%など)(最低設計料あり)
②人工で計算する(スケジュールから算出)

①はそのままの意味です。ただ、このやり方だと、工事が終わるまで設計料が確定しないのと、どれだけ時間がかかっても設計料は変わらない、自分が仕様を高くすると設計料が上がったりとモヤモヤする状況になりあまり良くないと思っています。
もちろん、高い材料を多く使うことはミスによる責任も大きくなるため、その分設計料が上がるのは分かります。
逆にどれだけ時間をかけても良いという前提のもと、この方法をとるというのはアリかもしれませんが、事務所経営としてうまくいくのかは分かりません。

②は人工計算で、その設計に対してどれだけ時間をかけたかで算出する方法です。結果的にスケジュールから算出することになり、設計契約の段階で設計料が確定します。(設計契約では、成果物の提出期限が定められるため)この方法だと、1人工あたりの単価を設定することになるのですが、その設定の仕方によって、スケジュール通りに進めば利益が確定できるという状況が作れます。また、スケジュールで算出しているため、設計変更になり設計期間が延びた場合に追加設計料の計算が容易で請求もしやすくなります。

僕が思うには、①にする理由がありません。国土交通省が出している設計料の算出方法の実質加算方法では、業務経費(直接人件費、特別経費、直接経費、間接経費)+技術料等経費+消費税とあります。
直接人件費は人工計算であるため、国のガイドラインだと人工計算になります。詳しい計算はすごく面倒臭いので書きません。

直接人件費:給与、保険料など諸々の合計

特別経費:出張旅費、特許使用料など建築主の特別の依頼に基づいて必要となる経費

直接経費:印刷製本費、複写費、交通費など (模型材料など)

間接経費:その他事務所運営に必要な物、人の費用 (家賃、パソコンなど?)

仮に先ほどのスケジュールから今回の自宅のリノベーションの設計料を算出してみます。

月の単価はこの規模のリノベーションで無資格でフリーランスということを考慮して安めに設定し、月15万とします。見積調整、工事準備、工事管理は手間的に半分程度として、月10万とします。月に2物件、無理すれば3物件回せるくらいのイメージです。1物件だと家賃などの経費などで利益がなくなる程度の安さです。

基本計画1ヶ月=15万
基本設計1ヶ月=15万
実施設計1ヶ月=15万
見積調整0.5か月=5万
工事準備0.5か月=5万
工事管理1.75か月=17.5万  計72.5万(税抜)となり、税込で80万弱です。
僕のこのリノベのデザイン料(設計料ではない)はだいたい80万ということになります。

ここで技術料等経費ですが、

告示(平成31年国土交通省告示第98号)
第三
技術料等経費は、設計等の業務において発揮される技術力、創造力等の対価として支払われる費用とする。

とあります。よくわからないですね。
また、

技術的助言(平成31年1月21日国住指第3418号)
4 技術料等経費(告示第三関連)
技術料等経費は、建築士事務所の業務経験や情報の蓄積等に基づいて発揮される技術力、創造力等の対価であり、個別の事情に応じて、契約前に当事者間の協議を行い、定められるのが適切である。

とあります。!
要するにクライアントが良ければいくらでも良いと言っているように僕には読めます。
実質自分で決められる設計料が安いと言っている人たちは自分を安売りしてるだけと思ってしまいます。

長くなってしまいましたが、次回は基本計画編、短めになると思います。

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