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一級建築士学科試験|令和2年施行の改正建築基準法施行令における無窓居室の取り扱い

令和2年4⽉1⽇施⾏の改正建築基準法施⾏令--令和3年の学科試験から適⽤される法令--のうち、令第111条についての内容になります。

1.無窓居室としての取り扱い

<令第111条第1項>
法第35条の3(法第87条第3項において準用する場合を含む。)の規定により政令で定める窓その他の開口部を有しない居室は、次の各号のいずれかに該当する窓その他の開口部を有しない居室(避難階又は避難階の直上階若しくは直下階の居室その他の居室であって、当該居室の床面積、当該居室の各部分から屋外への出口の一に至る歩行距離並びに警報設備の設置の状況及び構造に関し避難上支障がないものとして国土交通大臣が定める基準に適合するものを除く。)とする。
一 面積(第20条の規定により計算した採光に有効な部分の面積に限る。)の合計が、当該居室の床面積の1/20以上のもの
二 直接外気に接する避難上有効な構造のもので、かつ、その大きさが直径1m以上の円が内接することができるもの又はその幅及び高さが、それぞれ、75cm以上及び1.2m以上のもの

令第111条第1項の改正によって、( )書きが加わえられたことで、避難上支障がないものとして国土交通大臣が定める基準--令和2年国土交通省告示第249号--に適合すれば、採光上有効な窓が所定の大きさに満たない場合等でも、「無窓居室」として取り扱わなくてよくなりました。

2.その結果どうなる?

<法第35条の3>
政令で定める窓その他の開口部を有しない居室は、その居室を区画する主要構造部を耐火構造とし、又は不燃材料で造らなければならない。ただし、別表第一(い)欄(1)項に掲げる用途に供するものについては、この限りでない。

上の通り、令第111条第1項で定める「無窓居室」に該当する場合は、その居室を区画する主要構造部を耐火構造とするなど……しなければなりません。しかしながら、令第111条第1項の改正によって、採光上有効な窓の大きさから「無窓居室」に該当するものであっても、国土交通大臣が定める基準に適合させることで建築物の火災時の安全性を確保する観点から、主要構造部を耐火構造とするなどの規制を受けなくてよいことになっています。

他、令第116条の2にも「窓その他の開口部を有しない居室等」があり、混同しやすいところですが、こちらは「特殊建築物等の避難及び消火に関する技術的基準」--直通階段、排煙設備、内装制限等--に従って、「無窓居室」に対し避難上及び消火上支障がないようにするものとなります。ゆえに、「無窓居室」の主要構造部を規制することとは求めることが異なりますので、令第111条と同様の改正はありません。加えて言えば、法第28条第1項等を含めた、窓その他の開口部の面積と関係する規定全般の見直しを行ったものではないということです。

3.試験問題にどう影響する?

<平成27年問題の記述>
事務所の事務室で、所定の規定により計算した採光に有効な窓その他の開口部の面積の合計が、当該事務室の床面積の1/30であるものを区画する主要構造部を耐火構造とした。

上の記述は、令第111条第1項第一号に該当する開口部を有していないので無窓居室ということになります。その上で法第35条の3に適合させていますので、正しい内容であると判断できます。「~とした。」と一例を示す形で結んでいますので、例外があることを考慮して記述する必要はなく、改正された令第111条第1項に照らしても、正しいとの判断になります。

以下、上の記述をベースにして、正しい記述としての出題のされ方について考察してみます。

<問題の記述例①>
事務所の事務室で、所定の規定により計算した採光に有効な窓その他の開口部の面積の合計が、当該事務室の床面積の1/20未満であるものを区画する主要構造部は、原則として、耐火構造とし、又は不燃材料で造らなければならない。

【補足】国土交通大臣が定める基準に適合する場合の例外があることも考慮して、「原則として」と断ったうえで、「~ならない。」と言い切る形の記述とする必要があります。

<問題の記述例②>
事務所の事務室で、所定の規定により計算した採光に有効な窓その他の開口部の面積の合計が、当該事務室の床面積の1/20未満であるものを区画する主要構造部は、避難上支障がないものとして国土交通大臣が定める基準に適合する場合には、耐火構造等としなくてもよい。

【補足】主要構造部を耐火構造等とすることを要しない避難上支障がない居室の基準に適合することになりますので、開口部の面積によって主要構造部の規制対象となる無窓居室から除かれます。


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