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一級建築士設計製図試験において、建築面積オーバーによるランクⅣのリスクは減ることになるのか?

令和2年6月13日公開の下記『一級建築士学科試験と設計製図試験をコラボして、建蔽率の改正に基づく設計与条件を掘り下げてみる』を追補する記事になります。

1.令和2年本試験での建蔽率の与条件

建蔽率の限度は80%(特定行政庁が指定した角地にある敷地及び準防火地域内における耐火建築物等の加算を含む。)

敷地は第一種住居地域の指定で、上の与条件から、都市計画で定められた建蔽率が60%であり、建築基準法第53条第3項第一号及び第二号に該当することから20%加算して、80%としているものと思われます。

法第53条の改正前は、角地にある敷地の場合、10%加算されてきていましたが、改正後の令和2年本試験で示された通り、市街地における計画であれば、準防火地域内の耐火建築物等としても、10%加算される敷地のケースが多くなると考えます。

2.この5年間の敷地に改正法第53条を適用

平成28年:70%+10%=80%
平成29年:60%
平成30年:70%+10%=80%
令和元年:60%+10%=70%
令和2年:80%

平成29年以外は、準防火地域内の耐火建築物等として、10%加算されることになります。(令和2年は出題時に加算済み)

3.建築面積オーバーによるランクⅣのリスク

建蔽率の限度が80%であった場合、駐車場等の屋外施設を確保しつつ、建築面積がオーバーすることは、極めて稀だと思います。

これに対して、建蔽率の限度が60%70%となると話が違ってきます。慎重に計画していかないと、建築面積がオーバーし、ランクⅣとなる可能性が高くなります。

平成28年から令和元年の建蔽率の限度を見てみますと、上述の2.の通り、すべて60%70%となっており、建築面積に対して、慎重に計画することが求められていたと言えます。

改正された法第53条を遡って適用すると、平成29年を除いて、準防火地域内の耐火建築物等として、10%加算されることになります。これによって、令和2年を含めた直近の5年間のうち、3年分の建蔽率の限度が80%となります。

今後においても、第一種住居地域等の角地にある敷地であれば、建蔽率の限度は80%として出題される可能性が、これまでより高くなると予想することができます。つまり、市街地における計画であれば、角地云々に関わらず、10%加算されることになるだろうということです。

この点、……受験者からしてみれば、法改正により建蔽率が緩和されたことで、計画を進めていく中で生じる建築面積オーバーに対する心理的な重荷を、一つおろすことができると言えるのではないでしょうか、……ランクⅣになるリスクの一つが、減ることにもなると言えます。

<参考>
平成21年以降の新試験においては、第一種住居地域の指定で、都市計画で定められた建蔽率60%(加算を含まない段階)の地域にある敷地での出題が、5回と一番多くなっています。

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