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一級建築士設計製図試験|防火設備の記入と延焼ラインの図示に求めること

令和2年10月15日公開の下記『⼀級建築⼠設計製図試験において延焼ラインを図⽰すべき場合を読解』を追補する記事になります。

1.標準解答例で示された二つの考え方

標準解答例において、今後の学習の参考として、令和元年には《「延焼のおそれのある部分」等の一つの考え方》、令和2年には《法令に関する内容の一部》が示されており、「延焼のおそれのある部分」については、以下のような記載があります。

<令和元年>
この計画においては、1階は敷地境界線から3m以内に建築物の部分がないため、延焼ラインの図示を省略している。
<令和2年>
建築物の外壁の開口部で延焼のおそれのある部分の存在について、隣地境界線又は道路中心線から延焼のおそれのある部分までの距離を記入し、延焼ラインを破線で図示することで確認を行った。

問題用紙の要求図面の特記事項に「建築物の外壁の開口部で延焼のおそれのある部分の位置及び当該部分に設ける防火設備」とありますが、この要求に対する解答の仕方として、上のような二つの考え方が示されたと言えます。

2.法令への重大な不適合となる防火設備の種別の未記入

建築基準法第2条第九号の二ロで規定する耐火建築物の要件として、「その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に、防火戸その他の政令で定める防火設備を有すること」があります。

耐火建築物の外壁の開口部が、延焼のおそれのある部分に存在している場合、その開口部に所定の防火設備を設けていなければ、法第2条第九号の二ロに対する不適合、すなわち法令違反となる設計者(受験者)としての重大な過失になります。

一方、耐火建築物の外壁の開口部が、延焼のおそれのある部分に存在していない場合、所定の防火設備を設けなければならない外壁の開口部は、存在していないことになります。
当然この場合には、設計者(受験者)としての重大な過失となる、法第2条第九号の二ロに対する不適合が生じることもないわけです。

延焼のおそれのある部分において、法令への重大な不適合が生じるのは、設置義務が生じる外壁の開口部に、所定の防火設備が設けられていない場合となります。

たとえケアレスミスであっても、設置義務のある外壁の開口部に、問題用紙中にある「防火設備等の凡例」に従い、所定の防火設備の種別の記入がなければ、法令に適合しない設置義務違反の設計になってしまいます。

法令への重大な不適合は、公表されている通り、ランクⅣと判断されますので、十分注意する必要があるところです。

3.延焼ラインを図示することの目的

今後の学習の参考のためとして、令和元年と2年の標準解答例に示された二つの考え方に基づけば、延焼ラインについて、以下のように考えることができると思います。

①延焼のおそれのある部分に外壁の開口部が存在しているか否かを確認する目的で延焼ラインを図示する
②延焼のおそれのある部分に外壁の開口部が存在していなければ延焼ラインの図示省略することもできる

問題用紙の要求図面の特記事項に「建築物の外壁の開口部で延焼のおそれのある部分の位置及び当該部分に設ける防火設備」とあることを加味すれば、延焼のおそれのある部分に外壁の開口部が存在している場合、ここに所定の防火設備の種別を記入している根拠として、延焼ラインの図示を求めていると考えることができます。
つまり、《所定の防火設備の種別の記入+延焼ラインの図示》によって、それが法第2条第九号の二ロに適合させるために設けた防火設備であると、採点者に伝わることになります。

令和2年の標準解答例のように、外壁の開口部で延焼のおそれのある部分の存在を確認するために、延焼ラインを全てミスなく図示することも一つだと思います。

令和元年の標準解答例のように延焼ラインを省略する場合は、外壁の開口部で延焼のおそれのある部分が存在しているにもかかわらず、省略できない延焼ラインを図示し忘れ、結果、所定の防火設備の種別が未記入となれば、法令への重大な不適合となります。

延焼ラインにも、図示しなければならないものと、確認のため図示した方がいいものとがあると思います。
ここを頭において優先順位をつけておかないと、本試験で余裕がない状況に陥ったとき……、よりによって、図示しなければならないものの方が抜けてしまったり、ミスをするものです。

「延焼のおそれのある部分」に関して、法令への重大な不適合に該当するのは何が欠落した場合なのか?……ここで適合すべき建築基準法の規定は何なのか?……こういったことを、しっかり押さえておくことが重要なのだと思います。


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