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一級建築士学科試験で学ぶ…改正建築基準法に基づく114条区画の出題のされ方

 見出し画像は、建築基準法施行令第114条第1項の条文で、緑色の文字の部分法改正により追記されたところになります。
 改正された部分を外して読めばわかる通り、従来より、管理主体が住戸ごとに異なり就寝利用もする長屋と共同住宅の界壁は、準耐火構造として、小屋裏又は天井裏に達せしめることを義務づけ、住戸間の延焼拡大の防止を図っていました。
 現行法では、緑色の文字の部分が適用除外の対象になりますので、小屋裏又は天井裏に達せしめる義務は、例外もある原則的なものとなっています。

1.適用除外になる要件

 ⼩屋裏又は天井裏に達せしめることで、小屋裏等の空間を介した住戸間の延焼拡⼤を防⽌することが、従来から求めてきた性能になります。
 以下の何れかの要件を満たすことによって、住戸間の延焼拡⼤を防⽌できるなら、界壁を⼩屋裏又は天井裏に達せしめる必要はなくなります。
①強化天井によって延焼拡⼤を防⽌
②自動スプリンクラーによる初期消⽕によって延焼拡⼤を防⽌

 ①については、令第112条第4項第二号の『準耐火構造の壁又は法第2条第九号の二ロに規定する防火設備で区画されている部分で、当該部分の天井が強化天井であるもの』に該当する部分であれば、上方への延焼を有効に防止できる構造になりますので、界壁を⼩屋裏又は天井裏に達せしめる必要はなくなるということです。

2.過去問に生じる問題

<平成28年の問題の記述>
準防火地域内においては、延べ面積1,000㎡、地上3階建ての共同住宅の各戸の界壁は、耐火構造とし、小屋裏又は天井裏に達せしめなければならない。

 上記は誤った記述となります。旧法施行令第114条第1項に基づき、界壁は、準耐火構造でよいので耐火構造とする義務がないとの理由によります。

<上の記述を修正したもの>
準防火地域内においては、延べ面積1,000㎡、地上3階建ての共同住宅の各戸の界壁は、準耐火構造とし、小屋裏又は天井裏に達せしめなければならない。

 上記を旧法施行令第114条第1項に照らすと、正しい記述になりますが、現行法施行令第114条第1項に照らすと、誤った記述となります。理由は、強化天井や自動スプリンクラーの要件を満たすことによって、適用除外になる場合もあるので、「達せしめなければならない」との断言はできないということになります。
 この点を踏まえて、下記のようにすることで、正しい記述になります。「原則として」は、自動スプリンクラーの設置等による例外があることを意図する場合に用いる記述の仕方になります。

<正しい記述に修正したもの>
準防火地域内においては、延べ面積1,000㎡、地上3階建ての共同住宅の各戸(天井は強化天井でないもの)の界壁は、原則として、準耐火構造とし、小屋裏又は天井裏に達せしめなければならない。

 
 平成30年の問題に、令第114条第2項に基づいた防火上主要な間仕切壁に関する正しい記述があります。下記の通り、「(天井は強化天井でないもの)」「原則として」と記された部分が、記述の正誤を判別する上での重要なポイントになっています。防火上主要な間仕切壁に関する令第114条第2項の規定については、先行して平成28年に改正されていました。

<平成30年の問題の記述>
有料老人ホームの用途に供する建築物の当該用途に供する部分(天井は強化天井でないもの)については、原則として、その防火上主要な間仕切壁を準耐火構造とし、小屋裏又は天井裏に達せしめなければならない。

3.遮音上の観点と合わせた法改正

 同時に法第30条の改正により、天井において遮音性能を確保することで、遮音上の観点からも、長屋と共同住宅の界壁を小屋裏又は天井裏に達せしめなくてよくなっていますので、以下の記事も合わせて参考にして下さい。


✳令和2年4月1日施行の改正施行令に基づき、見出し画像、記事中の令第112条の3項を4項に改めました。(2020.12.3)

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