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一級建築士学科試験|通常の出題と異なる法規の解説文のような問題文の記述の仕方

令和2年一級建築士学科試験から適用されるようになった改正建築基準法に基づき、早速、令和2年の本試験で出題された問題のうち、特異といえる問題文の記述の仕方について考察してみます。

1.まず法第61条の改正について

旧法第61条においては、防火地域内の建築物に対し、その規模に応じて、「耐火建築物としなければならない」、「耐火建築物又は準耐火建築物としなければならない」などと構造方法を制限していました。

法第61条が改正され、壁・柱・床等の「建築物の部分」、外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に設ける「防火設備」の性能について、令第136条の2に委任し、その技術的基準を定める形に改められています。従来のように、耐火建築物や準耐火建築物に構造方法を限定することなく、これら以外の建築物も選択できるようになっています。

2.耐火建築物の定義に関する規定の再確認

<主要構造部>
・耐火構造
 法第2条第九号の二イ(1)、令第107条
 又は
・耐火性能検証構造
 法第2条第九号の二イ(2)、令第108条の3

<延焼のおそれのある部分に設ける防火設備>
 法第2条第九号の二ロ、令第109条の2

3.準耐火建築物の定義に関する規定の再確認

<主要構造部>
・準耐火構造
 法第2条第九号の三イ、令第107条の2
 又は
・準耐火性能を有する外壁耐火構造、柱梁不燃構造
 法第2条第九号の三ロ、令第109条の3

<延焼のおそれのある部分に設ける防火設備>
 法第2条第九号の二ロ、令第109条の2

4.特異といえる問題文の記述の仕方

以下は、令和2年本試験の問題の正しい記述になります。

<令和2年本試験の問題>
防火地域内においては、延べ面積80㎡、地上2階建ての一戸建て住宅は、耐火建築物若しくは準耐火建築物又はこれらと同等以上の延焼防止時間となる建築物としなければならない。

旧法第61条によれば、防火地域内においては、延べ面積100㎡以下、階数2以下の建築物は、「耐火建築物又は準耐火建築物としなければならない」とされていました。このことを頭に置いて、改正された内容を見ていくことにします。

法改正後は、1.で述べた通り、「建築物の部分」と「防火設備」についての技術的基準が令第136条の2で規定されており、令和2年の問題は、この規定に照らして正誤の判断をすることになります。

令第136条の2第二号イにより、防火地域内にある建築物のうち階数が2以下で延べ面積が100㎡以下のものは、以下のようにする必要があります。
<主要構造部>
令第107条の2各号
 又は
令第109条の3第一号又は第二号
 に掲げる基準に適合
 かつ
<外壁開口部設備>
--外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に設ける防火設備であると令第136条の2第一号イで定義--
令第109条の2に規定する基準に適合

令第136条の2第二号イの内容を、上述の3.に照らしてみると、準耐火建築物が求められていることがわかります。また、性能規定化により、耐火構造は準耐火構造に包含されるものであることが明確になったことで、上位にある性能も含めて解釈することになります。よって、令第136条の2第二号イにおいては、「準耐火建築物以上の建築物」すなわち「耐火建築物又は準耐火建築物」が求められているのだと解釈することができます。この点は、従来と同様の構造方法になっており、改正法施行後に、既存不適格となる建築物が生じないことになります。

一方、これとは別の建築物の選択が、令第136条の2第二号ロで定められ、「建築物の主要構造部及び外壁開口部設備の延焼防止時間が、準耐火建築物に想定する延焼防止時間以上である建築物」とすることも可能となっています。

以上を要約してみると、「防火地域内にある建築物のうち階数が2以下で延べ面積が100㎡以下のものは、耐火建築物若しくは準耐火建築物又はこれらと同等以上の延焼防止時間となる建築物としなければならない。」と言えます。

通常、問題文の記述は、条文の記述に沿う形としていることが多いのですが、ここで取り上げた令和2年の問題文の記述の仕方は、条文を読み解いた解説文のようだと思いました。

従来のように、耐火建築物や準耐火建築物に構造方法を限定するのではなく、これら以外の建築物を選択できるように見直されたのだと、法改正された内容を旧法との比較から理解していないと戸惑いが生じる……、令和2年の特異な問題文の記述の仕方であったといえるのではないかと思います。

✳以下の記事も参考にしてみて下さい。


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