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【奈良県】塔の森 (六角十三重石塔)

場所:奈良県奈良市長谷町
時代:奈良時代後期(8世紀)

昨年(2023年)5月にnoteを始めて最初に投稿した場所が、滋賀県の石塔寺だったのですが、さすが同じ近畿圏だけあって奈良や京都には1000年を超える史跡がいっぱいあり興味深いところです。私は読んでいませんが、かの白洲正子氏の随筆にも両方の塔が描かれているそうです。1990年代には会社の転勤で神戸、大阪に9年住んでいたころもあり、今考えるともっともっとあちこち行っておけばよかったと後悔している今日このごろです。

ゴルフ場への入口の道路
ゴルフ場からの登山道の景観

そんな中でここ「塔の森」は、以前から今度奈良へ行ったら必ずここを訪れたいと思っていた場所だったのですが、2023年の4月末にようやく行くことがかないました。奈良公園からは15kmほどと近いのですが、いわゆる観光コースからは外れていて車がないと甚だ不便な場所です。私は125ccのスクーターを借りて行きましたが、途中曲がりくねった山道が多くかなり遠く感じました。とりあえずヤマトカントリークラブというゴルフ場から徒歩で行けるということだったので、ヤマトCCさんのご厚意でスクーターを駐車させていただき、ゴルフ場脇から登って行ける山道も教えていただきました。

左上:一本ブナの大木、右上:塔の森石碑
左下:塔の森案内板、右下:石塔隣にある稲荷神社

ゴルフ場を横目に少し登っていくと、ちゃんと標示板が設置されていて距離的にもたいしたことはなく、人に出会うことはめったにないかと思いますが、道に迷ったりすることはありませんでした。ただし補助ロープが設置されている急斜面を登らなければならないところもあるので、地面が濡れている雨上がりだとかなりきついと思います。

六角十三重石塔 (現在は六重の塔)

塔の森十三重石塔(県指定史跡)は、1200年以上前のおそらく奈良時代後期に作られたと推定されている、高さ約240cmの石塔で、奈良県春日山付近で産出する春日石凝灰岩が用いられています。現在は六重しか残っていませんが、本来の塔は二重基壇上に建てられた六角十三重の石塔であったと考えられています。塔の基壇には、側面一杯に格狭間(こうざま)と呼ばれる装飾が施され、初軸には単弁八葉の蓮華文が陽刻されています。また塔の下には半ば埋もれた状態で、落ちた笠や軸の部分が地面に置かれています。

上:石塔軸部分の装飾、下:石塔の壊れた部分

奈良時代から平安時代前期に多用された石材の特徴として、この石塔も材質が比較的軟らかく加工がしやすい凝灰岩が使われていることから、長年の風化による損傷が激しく、塔自体も傾いており、彫刻もかろうじて見える程度でした。海抜660mの山中にひっそりとたたずんでいるこの塔は、かつて付近にあったとされる「塔尾寺」という寺院に関連した経塚の塔とも考えられているようです。現在すぐ隣には小さな稲荷神社があります。


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