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【イギリス】サットン・フー(Sutton Hoo)

場所:ウッドブリッジ付近、サフォーク州
時代:7世紀頃、アングロサクソン時代

サットン・フーの古墳エリア
古墳エリア案内板

サットン・フーとは、イギリス東部サフォーク州ウッドブリッジ近郊の平原にあるアングロサクソン七王国のひとつ、イーストアングリア王の墓がある場所を指す。もともと戦前から地主の依頼によって地元の考古学者が発掘していたが、1960年代以降広範囲にわたって発掘調査された結果、約20基の古墳が確認された。墓は北欧ヴァイキングの埋葬方式である船葬墓(遺体埋葬時に船を棺として用いた墓)になっており、墓室からはたくさんの貴金属製品、武器、楽器、日用品などが出土した。重要な出土品はほとんどが大英博物館に収蔵されており、中でも復元された戦闘用ヘルメットが有名で、アングロサクソンのシンボルになっている。また博物館内でサットン・フーの文物が特に目立つように展示されていることから、いかにサットン・フーがイギリスの源流として認識されているか、また国民にとって大切な史跡であるかがわかる。

サットン・フー出土の楯飾り (大英博物館)
サットン・フー出土の貴金属加工品 (大英博物館)
サットン・フー出土のヘルメット (左:復元品、右:実物、大英博物館)

出土品
広い平原に点在するサットン・フーの古墳(円墳)はかなり目立つ存在なのに、運良く1400年もの間盗掘されなかったため、現代において博物館で豪華な副葬品の数々を見ることができる。ここで発見された最も有名なものは、先に書いたヘルメット(ガレア)だと思う。銀色に輝く美しいデザイン彫刻付きのものが複製品として展示されているが、本物のヘルメットは長い年月の風化によって装飾がほとんど失われた銅製の土台で、鉄の部分は錆び付いている。金製のベルトのバックルやガーネットが嵌め込まれた金の留め具、銀の器などの豪華な副葬品は、材質が貴金属であるため当時の美しさが保たれている。

左上:船葬墓内部復元、右上:船葬墓内出土品の複製品
左下:船葬墓内出土のコイン (7世紀前半)、右下:ヘルメット複製 (ビジターセンター展示物)

ビジターセンター
古墳を発掘した地主は、出土した財宝を国(大英博物館)に寄贈し、また古墳のある敷地はナショナルトラスト(自然保護慈善団体)に譲渡され、現在そこが管理している。2001年にビジターセンターが建てられ、船葬墓の内部が復元されて見学できるようになっている。サットン・フーを訪れたのは2007年12月だったが、それまでに大英博物館で発掘品を見たことがあり、ある程度は知っていた。しかし実際に訪れてみると、さすがはイギリス。ここだけではないが、こういった地方の小さな博物館でも親子連れやカップルなどそこそこの入場者がいて、子供でも熱心に見ている人が多かった。日本にも地方に行けば小さな博物館や資料館がたくさんあり、全く知らなかったその地方の歴史や風習を学べるが、訪れた先のほとんどは、私の他に入場者が誰もいないことが多く、ちょっと寂しい。

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