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【フランス】ダゴベルトの玉座

場所:フランス国立図書館(BnFミュージアム)
時代:8~9世紀

フランス国立図書館 (BnF) 博物館入口

フランス国立図書館(Bibliotheque nationale de France、BnF)をご存じでしょうか。パリの博物館といえば何と言ってもルーブル美術館が超有名で、パリを旅行する方は必ず訪れるであろう観光スポットですが、ここ国立図書館にも歴史マニアにはたまらないフランスの貴重な秘宝約900点が展示されています。そのひとつがこの、「ダゴベルトの玉座(Throne of Dagobert)」と呼ばれている、ブロンズ製の折りたたみ椅子です。BnFミュージアム1階マザランギャラリーの入口を入ったすぐのところに、ガラスケースに収められて展示されています。
実は前回(2016年8月)のパリ訪問時にもこの椅子が見たくてここを訪れたのですが、ミュージアムの全面的な改造の最中で、以後数年は見学できないことがわかりました。今回、実に7年ぶりに対面がかないました。海外の施設は改装などの期間がとても長いです。今回もパリ西部にある、Saint-Germain-en-Layeの国立考古学博物館の某コレクションを見たくて出発前に調べたら、何と4年後の2028年からの再開となっていました。

ダゴベルトの玉座
ダゴベルトの玉座 (角度を変えて)

この椅子はローマ時代の折りたたみ椅子の形状を引き継いでおり、その製作年代ははっきりしていませんが、もとは7世紀のメロヴィング王ダゴベルト1世(在位629~639年)の側近で金細工師として知られている聖エロイの作とされていて、そのためダゴベルトの玉座と言われるようになりました。しかし調査によると、カロリング朝時代の芸術作品との様式的な比較により、パーツの主要部分を占める肘掛けと背もたれの部分は、8世紀後半から9世紀初頭にかけてのものであることがわかり、長年にわたって修復が繰り返されてきたものであることがわかりました。ちなみに同様の折りたたみ椅子は、ポワティエにある11世紀のサンティレール・ル・グラン教会(Church of Saint-Hilaire le Grand)でも現役で使っているものを見ることができました。

ポワティエのサンティレール・ル・グラン教会で使われている折りたたみ椅子

古くからこの椅子は一種のレガリアとして、歴代フランス王が自分たちの正当性をフランス最古の王室(メロヴィング家)と結びつけるために使用してきました。12世紀半ばから17世紀までは、フランス歴代国王の墓所であるサン・ドニ王立修道院に保管されていましたが、1791年に王立図書館に寄託されました。1804年にフランス皇帝としてこの椅子を最後に使用したのは、かのナポレオン1世でした。

マザランギャラリー入口
マザランギャラリー内
ドアのガラス越しに覗いた図書館内部

フランス国立図書館(BnF)の位置は、ルーブル美術館から北へ歩いて10~15分ほどととても近くにあります。ルーブルに比べると規模は小さく、有名なコレクションは少ないですが、歴史に興味のある人なら楽しめると思います。また図書館そのものもドアの外から内部を眺めるだけで、ヨーロッパの古い図書館の雰囲気を垣間見ることができます。

フランス国立図書館 (BnF)の位置

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