見出し画像

【アルメニア】アレニ1洞窟ワイナリー

場所:バヨツ・ジョル地方アレニ村付近(エレバンから南東へ約100km)
時代:紀元前4000年ごろ

アルメニアと隣国のジョージアは、互いに世界最古のワイン醸造の地であると謳っている。どちらが最古かはともかく、ブドウの原産地が中近東であり、両国の位置するこのコーカサス地方は原産地に近く、また醸造用ブドウ栽培の発祥の地とされており、現在もワインの生産が盛んでしかもおいしくて財布に優しい。アレニ1洞窟を訪れたのは2022年10月で、他の寺院見学を含むエレバンからの日帰り個人ツアーで行き、昼食は付近の農家が経営している地元料理のレストランでいただいた。ここではワイン醸造もやっており、2種類の自家製ワインとシードルを味わうことができた。

アレニ1洞窟
アレニ1洞窟入口

アレニ1洞窟は、3つの洞窟で構成されているカルスト洞窟で、その発掘は比較的新しく、2007年から2010年にかけてアルメニアとアイルランドの考古学者チームが発掘したもので、発酵用の壺、ブドウプレス機、保存用の瓶など当時の醸造器具や祭祀用の器などが出土した。ワイナリーの遺跡としては、それまでに最古とされていたヨルダン川西岸のワイナリー遺跡より、少なくとも1000年は古い(紀元前4000年ごろ)とされている。洞窟は岩山の中腹にあり、狭い山道と階段を上って行く。我々以外、他の観光客は誰もいない。管理人がいて薄暗い内部を案内してくれる。写真撮影はフラッシュをたかなければ可能だが、かなり暗いためできるだけ感度を上げて手ぶれを防がなければならない。

最古のワイン醸造施設の遺跡

内部の遺跡はまだ調査されているのか、いたるところに番号札がかかっている。後日ジョージア東部のカヘティ地方のワイン博物館を訪れたとき、洞窟で発見された古代の醸造とほとんど変わらない方法で、近現代にいたるまでワインを生産している醸造所があるのに驚いた。

最古の革靴発見場所

この洞窟で発見されたもので、ワイン醸造所以外にもうひとつ有名なものがある。それは完全な形で発見された紀元前3500年ごろの革靴で、世界最古のものとされている。1991年にオーストリア・イタリア国境のアルプスで発見されていたエッツィ(アイスマンとして知られているヨーロッパ最古の自然にできたミイラ)の革靴より200年古いとされている。発見場所は洞窟内の漆喰塗りの穴の底で、洞窟内の冷たく乾燥した環境と羊の糞の厚い層に覆われていたおかげで、靴はほぼ完璧な状態で発見された。この一体型タイプの革靴は、他のヨーロッパ各地で発見された古い時代の靴や、現代にまで残るアイルランドのアラン諸島やバルカン半島の伝統的な靴に非常に似ている。

アレニ1洞窟から出土した最古の革靴 (アルメニア歴史博物館蔵)

現在革靴は、首都エレバンにあるアルメニア歴史博物館で見ることができる。洞窟より先に博物館の方を訪れていたので、博物館でこの革靴を見たときはほとんど気にかけていなかった。しかし洞窟を訪れてから、あの時もっと丹念に見ておくべきだったとちょっと後悔した。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?