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『花嫁はどこへ?』観たよ
『きっと、うまくいく』で日本でも大人気となったインドの俳優アーミル・カーンが『シークレット・スーパースター』に続いてプロデュースした映画で、花嫁の取り違えによって起こったトラブルを描くコメディヒューマンドラマ。
私はあんまり『きっと、うまくいく』は好きじゃないんだけど(男子校ノリの「強姦」ギャグが笑えない)、『ダンガル』『シークレット・スーパースター』などからも、インドで女性が自分らしく生きる姿を描く映画が多く、インドの階級制や女性差別に対して思うところがあるのもわかる。
インド映画らしく、笑うところ、泣くところ、感動するところそれぞれをわかりやすく配置していて、プロットもシンプル。オープニングの花嫁取り違えのシーンなど、「そうはならんのでは?」と大げさに見えつつ、観客に「何を起こったか」を手際よく面白くわからせる手腕はさすがで、インド映画のフォーマットというか、シナリオの作り方は本当にスタンダードなんだけど独特。『侍タイムスリッパー』のギャグの作り方はちょっとインド映画っぽかった。
劇中では、女性が仕事をして自立することについて、他家に嫁して新しい家族に入ることについて、など、伝統的家族観によって生じる「なんかおかしくねーか?」がいろいろと提示される。女性が仕事を持つこと、あるいは学校で学ぶことについてが本作のメインテーマになるけれど、私がすごくいいな、こういうセリフを映画で見たかったのが見れたなと思ったのは、花婿のディーパクの家の女性たちが「私たち、家族じゃなくて友達になれるかな?」と言い合うところ。よく、仲が良い共同体のことを「家族みたい」と喩えるけれど、私はもう本当にこれが嫌だ。何がファミリーじゃと常々思っている。ワイスピのドムにも思っている。それがドムだってことはわかってるけどドムはそんなに背負わんでもいい。家族の何が厄介かって、単なる相互扶助的な共同体ならいいんだけど、そこに所属した瞬間に伝統とか長い時間のあいだに醸成された規範にも従属する義務が発生するところ。しかも家族という単位は個の教会を曖昧にする機能も持ちつつ閉鎖系を構築するので、「嫌だ」とか「拒否」みたいな反応をしにくくなるし外部からはその軋轢がまったく見えなくもなる。
だから、ほかの家族の中に入ること、他人が家族になることを描いたこの映画が、家族という共同体の規範を肯定するのではなく、友達になれるかなと既存の関係性とは違う開かれた繋がりを提案するのはすごくホッとする。そのセリフを発するのが、姑と嫁という関係性にある二人なのも嬉しい。いちばん家族の規範の中で関係が固定化されやすい立場の二人だから。
そういうふうに、既存の関係性の在り方をちょっとずつ変えていこうねっていう周囲の様子を描いてるからこそ、二人の花嫁の辿る道、選ぶ道が女性達の積み上げてきたものと地続きなものに見えてくる。
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