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WRA8-2 #atarimaenicup決勝 法政大学-東海大学(川俣秀主審)

Jリーグ内定者も数多く出場し、大学サッカー日本一を決める大会#atarimaenicup決勝 法政大学(関東1部)対東海大学(神奈川県1部)の試合を分析します。主審はJ2主審の川俣秀さん、副審1はJ2副審塚田健太さん、副審2もJ2副審金次雄之介さん、第4の審判員はJ3主審長峯滉希さんでした。(カテゴリーは2020年度の物です。)

公式記録

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気になったシーン

51:54 アクシデンタルな接触への対応

東海10武井成豪選手と法政14田部井涼選手が接触したシーンです。このシーンは、武井選手のみボールにコンタクトしており、田部井選手は少し遅れて武井選手に接触しているので、田部井選手のファウルをとっておいたほうが良かったかもしれないです。

このシーンでは、川俣主審が近すぎたことでフォーカスが難しくなり、ファウルと判定できなかったと思います。近すぎも、遠すぎも審判にとってはよくなく、個人的には10mほど離れておく必要があると思いますが、5mくらいの距離に川俣主審がいました。

審判のポジショニング要素の一つ、距離については下記の記事で書いていますので、是非ご覧ください!

何はともあれ、ファウルとしなかった事象で、両選手は倒れてしまいます。ボールは流れ、法政のDF陣がコントロールした時点で、川俣主審は笛を吹いてプレーを停止します。

選手の安全と、現行競技規則で主審がプレーを停止したらPA内を除いて「最後に触れたチームにドロップボールをできる」事を考えると、最適な判断で勉強になります。

選手が倒れていて、両チームの選手がプレーを続けないで停止してほしいオーラを出しているときに、意固地になってわざわざボール保持しているチームがボールを外に出すのを待つのは個人的に「審判員の遅延行為」だと思っています。ドロップボールの方が煩わしくなく、再開を早くできるからです。

もちろん、今回のようにファウルをとるべきだったようなシーンでは、不利益を被ったチームからクレームがつくことはあります。そのようなときにある意味悪いのは審判ですし(ケガをさせたのは相手選手ですが…)、素直に見えなかったことを謝ればいいと思います。(謝りすぎはだめですよ)

正直でいることもそうですし、意固地にならずに早く再開するためにはドロップボールにすることは最適の判断だと個人的に考えています。

53:05 選手のプレーエリアを侵害しそうになった時の秀逸な解決策

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このシーンでは法政14田部井涼選手がボールを受けた時点で川俣主審は田部井選手の非常に近くにいましたし、田部井選手には東海6丸山智弘選手がアプローチしていました。守備側がアプローチをしているということは反則が起こる可能性が上がるということです。

先ほども書いた通り近すぎると判定しづらくなりますし、なにより選手の邪魔になってしまいます。

この時に川俣主審がとった解決策が秀逸だったので紹介させてもらいます。

図にあるように、川俣主審は下記の順序で動きました。()内が私の考えるその行動の目的です。

①フロントステップで前に出る(とりあえず選手のプレーエリアを確保するため)

②ボールから目を離さない角度でターン(プレーを監視するため)

③バックステップでポジション修正(プレーを監視しながら、最適な角度を作るため)

距離が離されすぎても判定は難しくなります。法政大学がボールを保持している中判定上で大切になるエリアは、いわゆるバイタルエリアとペナルティーエリア内です。そう考えると、図でも示した通り後ろに下がることは避けたいです。

後ろに下がらず、最適な角度・距離を確保するためには、このシーンでは川俣主審がとった動きが最適ですし、非常に勉強になるシーンなので、この動きをできるようにトレーニングしたいです。

ここで大切なことの一つは、プレーから目を離さないことです。見ていないと判定できないのは当たり前のことですが、②のターンの角度を間違えると判定不能になってしまいます。その意味でも非常に秀逸な動きでした。

川俣主審はポジションの修正の際のステップワークが非常に巧みな印象を受けました。是非注目してみると勉強になるかと思います。

本当に細かい部分ですが、非常に大切な部分です。こういう動きが私は苦手なので、頑張りたいところです。

59:40 ターンで目を離してもいいシーンはある+首振り

上では目を離すなと言っているのに、「何言ってんだこいつ」と思われる方もいるかもしれません。(笑)

しかし、全てのシーンで目を離さずにターンをしなければならないというわけではないのです。

前のシーンの冒頭で「守備側がアプローチをしているということは反則が起こる可能性が上がる」ことを書きました。このことからどのようなときに目を離してもいいと思いますか?

そうです。守備側がアプローチをしていないときは目を離せる時間があるのです。

この59:40のシーンでは、川俣主審はフロントステップやターンをする際にボール保持者から目を離しています。

なぜなら守備側の選手がアプローチしていなかったからです。明白な理由ですね。

そのようなシーンではターンをする際もそうですが、首を振って周囲の状況を確認するための時間に使うこともできます

よく選手のときにパスを受ける前だったり、DFをする際だったりに首を振れと言われた方も多くいるかと思います。

審判も同じで、首を振って周囲の状況を見て、予測をすることが求められています

アプローチがない時間の有効活用。これは非常に大切ですし、取捨選択が非常に大切です。安全なのか危険なのか正確に判断することが審判には求められています。非常に勉強になるシーンです。(目の離し過ぎはだめです!)

65:31 空中戦の見方+負傷への対応の素早さ

東海のチャンスのシーンです。クロスに対して、東海4米澤哲哉選手がヘディングシュートをしたシーンですが、米澤選手がジャンプをしたときにプレーエリアにないと考えた法政6松井蓮之選手に乗っかってしまい、その後ろでヘディングクリアしようとした法政23関口正大選手(J2甲府内定)とぶつかり、地面に腰から落ちる形になってしまいます。

空中戦における判定は難しいのですが、一人一人反則があったか見てみます。

東海米澤選手はヘディングシュートができていることからもわかる通り、ジャンピングアットなど何の反則もありません。

法政松井選手はプレーできないと考えたと見受けられ、その中でジャンプをしない選択は十分に尊重できますし、背中をわざと丸めることもなかったので、トリッピングの反則には該当しないのが妥当です。

法政関口選手はボールにコンタクトできてはいませんが、米澤選手のことをヘディングしてしまったわけでもないですし、ほぼ垂直に飛んで力の方向は米澤選手に向かっていません。ぶつかるのはある意味自然ですので、ジャンピングアットになる可能性はないかと思います。

以上ノーファウルが100%といえるようなシーンではありますが、米澤選手の落ち方は危ない落ち方でしたので、川俣主審は迅速に近寄って対応していました。負傷に対して早く対応するのは非常に大切なことなので、マネしたいシーンです。また、法政23関口正大選手もケアしており、リスペクトにあふれるシーンだったと思います。

66:19 ホールディングはあったか? PK or ノーファウル

東海のチャンスシーンです。非常に処理しずらい浮き球が法政GK1中野小次郎選手(J1札幌内定)と法政3高木友也選手(J1横浜FC内定)の間に入り、東海10武井成豪選手が狙っていました。

身体を入れようとした高木選手が武井選手のことを押さえているように見えなくもないシーンで、武井選手が倒れましたが、私はノーファウルでいいと思います。理由は倒れ方と手のかかり具合が一致しないように見えるからです。

もちろん接触はありますし、高木選手はもう少しケアした方がいいとは思いますが、反則を取るほどの接触には見えないと感じました。

ただ、意見の分かれるシーンだと思いますし、PKとする審判員もいるかと思います。グレーゾーンこそ審判の魅力ですので、是非皆さんもご意見ください!

まとめ

前半ごちゃついた試合はなぜか後半落ち着くことも多い気がします。これは適切な対応をしたらという枕詞がつくかと思いますが、体験的にも前半なにもない試合こそ危ないという気もします。

今日の試合は前者だったと思います。前半に難しい判定がたくさんありましたが、後半は判定に関してはそんなに難しいシーンはなかったと思います。

川俣主審はタフな基準で安定して90分試合をコントロールし、適切なマネジメントもされていたと思います。

その中で最も川俣主審から学びたいこととしては、ポジショニング面の動きです。非常に合理的かつ素早い動きで試合をコントロールされていました。是非審判員の皆さんもう一度動きにのみ注目してもらえると非常に大きなヒントが転がっているかと思います。私にとっては非常に大きなヒントがたくさんありました。

優勝した東海大学の皆さまおめでとうございます!

本日もお読みいただき、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。


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