読書感想文(191)東野圭吾『沈黙のパレード』

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回読んだのは、現在映画が上映中のガリレオです。
元々ガリレオシリーズを読みたいなぁと思っていたこと、職場の人に感想を求められたこと、友人に映画の曲がすごく良いと聞いたことをきっかけに映画を観ることにしました。
そしてその前に原作を読もうと思って読みました。

元々は映画を観る前にガリレオシリーズを全て読んでおくつもりだったのですが、時間が上手く取れずにとりあえずこの作品だけ読むことにしました。

感想

まず、読む前に職場の人から聞いていた情報として「ガリレオである必要性がない」ということでした。
トリックには一応化学(?)も関わるですが、それほど複雑ではなく、むしろ全く科学と関係無い別のトリックや事件の構成の方が巧妙だと感じました。
なので、この点については同意です。
湯川先生じゃなくてただの探偵でも良かったな、と。
それに近い感想として、映像化が意識されているように感じました。
例えば、福山雅治がギターを弾くシーンなども、恐らく映画にあるのではないでしょうか?(無かったら結構恥ずかしいかも)

疑問に思ったのですが、東野圭吾はガリレオ以外の推理小説って書いてないんでしょうか?
ガリレオシリーズにした方が売れるからその延長で作っているんでしょうか?
この点に関しては、出版業界の不況を考えると、売れることを優先するのも大事かもしれないなと思います。一方で、芸術として小説を考えるなら、良くないことなのかなとも思います。

以下、若干のネタバレを含みますのでご注意ください。

今回、犯人と思われる人物は過去にも事件を起こしたと思われ、刑事はそのケリをつけようとしています。
読んでいる時、この過去の事件をあまり意識できていなかったので、なかなか真相がわかりませんでした。
今回はあまり推理しようという意識できて読めていなかったのですが、過去の事件は今回の事件に何か関係があるはずだ、と思っておいた方が良いと思いました。また、別の点についても、残っている謎を忘れて解決したつもりになってしまったのも、まんまとやられたなぁと思いました。
逆に言えば、最後は全てがスッキリして良かったです。

全てがスッキリと書きましたが、一つ気になる点はありました。
それは被害者の元カレの話です。
遺族との確執は感じられませんが、どうも事件当時の元カレの態度がしっくり来ないのです。
大切な恋人が歌手としてデビューしようとしている所で、妊娠させるなんてどういうつもりだったのでしょうか。避妊は100%ではないこと、妊娠自体を知らなかったことから、仕方なかったと思っておいてよいのでしょうか。
また、まともな人物のように描かれていた人物が実は歪んでいたということも最後に明らかになります。被害者に「ストーカーみたい」と言われますが、確かに言われてみればそうかもしれません。
次に読み返す時は、この点に着目して読んでみてもいいかもしれません。

最後にもう一つ、被害者が「夢を叶えるのって幸せになる為でしょう?」と言っていたのが印象になりました。
最近、岡本太郎の幸福反対論を読んだので、少し立ち止まって考えました。
その「幸せ」とは誰の幸せなのでしょうか。「自分の幸せ」や「家族の幸せ」なら、個人主義の自己実現です。歌手になるという「世界の幸せ」よりも「自分の幸せ」だけを優先するのは善行でしょうか。両立できる道があれば、それが良いのではないかと思います。
ただ高校生にそこまで求めるのは酷ですし、自分の夢を押し付けてこられる事にうんざりしていたという事もあるのでしょう。この辺りは人間関係を考える上で重要なことのように思います。

おわりに

今夜早速映画を観てこようと思います。
どんな風に映像化されているのか楽しみです。

ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。


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