読書感想文(250)安壇美緒『ラブカは静かに弓を持つ』

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回は本屋大賞ノミネート作品、9作品目です。
音楽×スパイという、なかなか珍しいジャンルです。

感想

面白かったです。
音楽の著作権という、私でも聞いたことがある著作権の問題を取り上げています。
私自身、この問題について詳しくはないのですが、率直な自分の意見を言うなら、音楽教室における著作権料徴収には反対です。これは違法かどうかという点ではありません。今の法律では違法だとしても、これが合法になるようになってほしいということです。
理由は、本文でも言及されていますが、学ぶことに制限がかかるからです。
学びを抑制するような制度はできる限り減った方が良いと思います。
お金の問題については、そもそも今の資本主義のせいだと思うので、音楽家がお金に困らないかつ学びたい人が制限されない仕組みが何かないだろうか、という理想論です。
理論的な部分はともかく、感覚的な意見になりますが、音楽教室で学ぶ場合においては徴収しない、発表会などで演奏する場合には徴収する、というのがしっくりきます。

またスパイという裏切り行為と、そもそも世界(或いは世の中)が信用ならないということが重ねられているのもいいなと思いました。
世の中、考えれば考えるほど信用ならないことばかりなのに、私を含めて殆どの人が平然と暮らしているように思います。しかし主人公のように、リアルな体験によって経験的に強烈な不信がある人もいるのだろうと思います。
信用ならないものを厭う気持ちを持ちつつ、法律を盾にして自分自身が裏切る行為をしているという葛藤がよく描かれていたように思います。

終盤は少しご都合主義的な(?)部分もあるような気もしますが、私の性格が歪んでいるせいでしょうか?笑
主人公の謙虚さは尤もであるとは思いますし、そこに居場所を見つけられたというのは良い話だなとは思います。

あえて欲を言うなら、もっと音楽の側面が強かったら嬉しかったです。
平野啓一郎『マチネの終わりに』がとても好きなので、そのくらいのイメージです。
音楽と孤独の共有部分などがもっと沢山あったらよかったなぁと思いました。
私が捉えきれていないだけかもしれませんが……。
チェロの魅力はとても伝わってきたので良かったです。

おわりに

作中で出てくる「戦慄きのラブカ」を調べたら『ラブカは静かに弓を持つ』ばかり出てくるのですか、もしかして架空の映画なのでしょうか?今更ですが笑

難しいかもしれませんが、映画化とかしたら面白そうだなぁと思いました。

ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。


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