読書感想文(103)『雪のひとひら』(ポール・ギャリコ作、矢川澄子訳)

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回読んだ『雪のひとひら』は、原題「Snowflake」です。
「ひとひら」というやさしい言葉に翻訳されていて、素敵だなと思います。
この本を読んだのは、「そういえば冬っぽい本を読んでないなー」と思ったからです。
去年の冬には江國香織『つめたいよるに』を読みました。
今年の夏にはフランソワーズ・サガン『悲しみよこんにちは』を読みました。
折々に合った読書というのも楽しいので、これからも続けていきたいです。

感想

冬っぽいタイトルだけを見て買ったので、内容については全く知りませんでした。
読んでみると、雪のひとひらの一生の物語でした。雪のひとひらが意識を持ち、その視点で物語が進んでいきました。
雪が主人公というのは初めてだったので、新鮮で面白かったです。

雪のひとひらの一生は人生がよく描かれているなぁと思いました。
訳者あとがきでも書かれていたように、確かになんてことないありふれた一生がシンプルに描かれています。
しかしそれゆえに、読む人によって引っかかるところが違うのだろうなと思いました。

私の場合、まず感じたのは「何故生まれたのか?」という疑問にまつわる部分です。「我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか」という有名な絵画もありますが、同じような疑問を幼い頃に持った事がある人も多いのではないでしょうか。
しかし多くの人が恐らく、そのうちこのような事を考えなくなります。考えても答えが出ないし、答えが出なくても困らないからです。同様のことは「友達とは何か」「好きとは何か」といった問いもあります。
雪のひとひらも同じでした。生まれたばかりの頃はこの事をよく考えるのですが、そのうちあまり考えなくなります。しかしもう一度同じように考えるのが、死期を悟った時です。これまでの自分の生は何の為にあったのか、と。
その結末として、「おつかれさまでした」「おかえりなさい」と、大きな宇宙に帰ることは、まさに自然も人も宇宙の一部に過ぎないということを思い出させます。
岡潔は、個人は宇宙という大木の一枚の葉のようなものだと言いました。最近は大我という概念をよく意識しています。個人が重視されがちな世の中ですが、それ以外の意識も持ち続けていたいです。

あとは情景描写も単純ながら綺麗だなと思いました。水は光と親和性が高いので、本当に綺麗です。

この作品は短いのですぐ読むことができます。毎年冬に読んでもいいなと思います。

おわりに

今回は記事のタイトルの形を少し変えてみました。これまでは作者や訳者の名前を本のタイトルの前に書いていましたが、今回は後ろに書いています。
これは作者名と訳者名によって本のタイトルが埋もれてしまうのを防ぐためです。
大学の時のレポートの癖で今までの順番で書いていましたが、これからはこっちに変えようかなと思います。

この本は今年144冊目となりました。
150冊に届くかどうか微妙なラインですが、あまり気にしすぎずにのんびり読んでいこうと思います。

ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。

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