読書感想文(99)宮乃崎桜子『燐火鎮魂;斎姫異聞』

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回読んだのは、20年以上前の時代小説(?)です。
和泉式部が出てくるということで、知人が貸してくれました。
私は高3の夏に『和泉式部日記』を読んで文転を決めた人間です。
大学の頃は和泉式部関係の本を結構集めていたのですが、これは知りませんでした。
自分で買おうかなぁとも思いましたが、文学に未練たらたらなのもあまり良くないかなとも思うので、今の所まあ買わなくてもいいかなぁと思っています。

感想

この本を読んで初めに驚いたのが、登場人物紹介です。
主な登場人物の「宮」の説明が次のように書かれていました。

「神の子」を自称する内親王。義明の妻であるが、実は両性具有。

シンプルに「え?両性具有?」となりました(「神の子」もなかなかですが……)。

そして読み始めてすぐに気づいたのが、この本がシリーズものであるということです。
恐らく色んな設定については第一巻に書かれているのでしょう。
でもまあそれぞれの巻で話は完結しているようだったので、気にせず読み進めました。

この本でとても良いなと思ったのは、和泉式部がとても上手く描かれていることです。
なんというか、こう、いじらしいというか、守りたくなってしまうようなはかなさというか、そういうものに溢れています。
そして一方で恋い慕う思いには力強さも感じます。私が『和泉式部日記』を読んでイメージしていた和泉式部像にぴったりでした。
和泉式部って「浮かれ女」などとも呼ばれていて、一般的には妖艶なイメージが強いように思います。しかし、『和泉式部日記』に描かれる「女(和泉式部)」はめちゃめちゃピュアで可愛らしいんですよね(気になる人は是非読んでみてください!)。
ただ、こんな風に思ってしまうところからも、自分のちょろさを実感する次第です。

話の内容に関して『和泉式部日記』好きとして印象に残ったのは、和泉式部が宮の形見を整理していた場面です。
お召し物がたくさんあり、どれもこれも思い出の染み付いたものばかりであるため、なかなか整理が進まない、と言います。
この時、私は思わず「手枕の袖……」と呟いてしまいました。
「手枕の袖」とは、和泉式部と恋人・帥宮にとって、心を重ねた重要なキーワードなのです(気になる人は是非読んでみてください!)。
そして次のページで、和泉式部も同じように「手枕の袖」と呟いていました。
ほら、以心伝心っていうのはこういうのを言うんですよ。こんな風に心を共にできる人と一緒に生きていきたいなぁと思ってしまうのを、そろそろ卒業したいなぁとも思ったりします。

それにしても、思っていた以上にラブコメっぽい展開で驚きました。
和泉式部が出てくるからということもありますが、そもそもこの本の「講談社x文庫」というのが少女小説をメインにしているようです。
そういえばこういうトキメキ的な展開は久しぶりに読んだような気がします。
今年中には有川浩「図書館戦争」シリーズを読み返すつもりなので、乙女心を取り戻したいと思います。さっき卒業したいといったばかりですが、まあ『図書館戦争』は人生の教科書なので例外です。

そういえば、「あとがき」に『和泉式部日記』における「内大臣」の解釈が割れていると書かれていました。
そもそもどこで「内大臣」が出てきたのか全く覚えていないので、また確認したいと思います。

おわりに

普段あまり読まない雰囲気の小説でしたが、楽しく読むことができました。
当時の慣習やちょっとしたエピソードなどが色々とあったので、シリーズの他の巻も読んでみてもいいなと思いました。
結構たくさんあるので今すぐには読むつもりはありませんが、気が向いたらそのうち読むかもしれません。

そして今回、読書感想文が99本目ということで、遂に次は100本目です。
記念すべき100本目を何にするかは既に決めました。
今年の100冊目は星新一『ボッコちゃん』を読んだのをしっかりと覚えているので、次に読む作品も印象に残るのではないかと思っています。

ちなみに今年読んだ本の冊数は、これが140冊目です。
150冊を目標にしているので、普通に達成できそうです。
あまり数字を気にしすぎず、しかし気を抜きすぎず、読書ライフをまったりと送っていきたいです。

ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。

この記事が参加している募集

#読書感想文

189,141件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?