読書感想文(149)松村涼哉『15歳のテロリスト』

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回は人からオススメしてもらった本を読みました。松本涼哉さんの本は初めてでした。

感想

面白かったです。
読みやすく、展開がどんどん進んでいくので一気に読み終えました。
少年犯罪を題材にした作品で、最近読んだ『流浪の月』や結構前に読んだ『ケーキの切れない非行少年たち』を随所で思い出しました。
加害者には加害者の立場がある、かといって当然被害者の立場もあります。そして正義が悪を導くということも。
本質を見て、どちらにとっても良いようにするのが一番なのですが、矛盾する所もある難しい問題です。どちらかの肩を持つならやはり被害者が支持されるのですが、それによって新たな被害者を生んでしまうということもあります。

この作品は現実と様々な所でリンクしています。例えば過酸化アセトンという爆薬。これを19歳の少年が製造した事件が作中に書かれますが、実際にあった事件です。また、少年法も色々と出てきます。あとがきで参考文献が載せられているので、また読んでみたいと思います。

作中で最も印象に残っているのは、15歳のテロリストがいつも「動き続けること」を大切にしていたことです。
私は凶悪犯罪に手を染めたことはありませんが、とても苦しかった時期に同じように考えていたことがあるのを思い出しました。何を目標にしたらいいのかわからず、我ながら迷走しているなぁと思ったものの、迷いながらでもいいから走り続けよう、そうすれば後でその経験が何かしら活きてくるから、と思っていました。
何かスポーツなどをやっている人は、こんな経験があるのかなぁと想像します。懸命に練習しているのになかなか上達しない、勝てない、敵わない。どうすればいいのかわからないけれど、とりあえず練習を続けるしかない。練習を続けても報われなかったのに、これからも練習を続けるしかない。この苦しみはなかなかのものだと思います。
そんな苦しい中でも私が人としての道を踏み外さなかったのは、自分の中に基準があったからだと思います。それは絶対的に正しい基準ではないと思うけれど、その基準のおかげで私は犯罪者にならずに済みました。
その基準をどうやって作っていくのか、という所が教育にとって大切なのかもしれません。

ネタバレになるので引用はしませんが、P190に「信念」という言葉が出てきました。この人物は葛藤の中、様々な論理をすっ飛ばして自分が許せないということを心の底から決意します。そしてそれは自分の利害に関係なく、ただ信念に反するからだ、と。
これも自分の経験に照らし合わせて、ああ、あったなぁと思いました。
私はある時、良い人になっても良いことなんてないんだなぁと思って、悪い人になろうとしました。でもやっぱり心がそれを受け入れなくて、「心が反する」からという理由で、やめることにしました。信念というのは、辛くて上手く考えがまとまらない時にも、常に自分が大切にしてきた価値観に基づく指針となってくれます。
信念というと『ジェーン・エア』や『肝臓先生』が思い出されます。恐らく、そもそも「信念」を大切にすることが、自分にとって大切な信念なのだろうなと思います。

雪は本来、無色だった。だから、雪は色を分けてほしいって花々に頼んだけど、皆に断られる。唯一、スノードロップだけが自身の色を与えた。その日から、雪は白くなった。

P215

とても素敵な一節だなと思ったので、記録に残しておこうと思いました。

おわりに

今月は15冊を目標にしていたのですが、思っていた以上に忙しいため、なかなか読むことができていません。
諦めずに少しずつ色んな本を読んでいきたいです。

ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。


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