読書感想文(82)ロバート・L・スティーヴンソン作、田口俊樹訳『ジキルとハイド』

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回はとても有名な作品ですが、初めて読みました。
読んだきっかけは最近再開した小学生の頃の友人が今読んでいると話していたことです。
150ページほどの短い作品なのですぐ読めそうだなと思って読みました。

尚、今回はネタバレを含むのでご注意下さい。

感想

事前知識はほとんど無かったのですが、裏表紙のあらすじでネタバレを喰らいました笑。
翻訳本は大抵裏表紙でネタバレがされているのは何故なのでしょうか?有名だから知っていて当然ということでしょうか?
名作というのは何度も読んで味わうものだから、ストーリーはさほど重要ではないという意見はわかります。
けれどたった一度きりの初読において、先の展開が気になる楽しみを奪わなくても良いのではないでしょうか?
そんなこと言うなら裏表紙を見なければいいじゃん、と思われるかもしれませんが、帯にもネタバレがあるんですよね……。
切実になんとかしてほしいです。

さて、ネタバレの嘆きはともかく、ネタバレがあっても尚面白かったです。
ただミステリー風に進んでいくので、やはりネタバレが無かった方が……。
私はそれほどたくさんミステリー小説を読んできたわけではありませんが、ミステリー小説としてのストーリー展開はとても秀逸だと感じました。

一番印象に残ったのはやはりジキル博士の手紙です。

ジキルと運命をともにすれば、長年ひそかに愉しみ、近頃は充分すぎるほど満たされている欲望に別れを告げることになる。一方、ハイドと運命をともにすれば、数えきれない知識への欲求と向上心を捨て去り、一瞬にして、そして永遠に、すべての友を失い、人々に軽蔑される身となる。(中略)私が置かれているのは奇妙な状況ではあった。しかし、この手の問題は人間そのものと同じくらい古くてありふれたものだ。罪に心惹かれておののく罪人には誰にも誘惑と警告がさいころを振る。それと少しも変わらない。そのさいころが多すぎる同輩に振られるように私にも振られただけのことだ。そして、私は善を選んだ。が、そのあと善を保ちつづける強さが自分にはないことに気づかされたのだった。

ジキルとハイドの二面性が一般化されているところです。
特に最後の二文については善悪に限らず様々な所で現実にも起こっていることではないでしょうか。

善悪に関していえば、私は善を選択して生きてきたつもりです。自分で言うと胡散臭いですが、嘘や建前が苦手で、誠実であることを心がけてきたつもりです。それでもやはりこれまでの人生を振り返ると自分の悪行はいくつか見つかり、まずはそのことを自覚することが大切だなと思います。

そして少し前、私は悪を選択したいと思いました。善を選択しても報われないし幸せになれないと考えたからです。
しかしその直後、やはり自分には難しいと感じました。まさに、悪を保ちつづける強さが自分にはないことに気づかされたのでした。
善人と悪人のどちらが信用できるかという問いを立てると、私は後者を選びます。なぜなら人は悪を隠すことはあっても善を隠すことは少ないからです。だから悪人はその点で自らを素直に公開しているので、信用できます。逆に善人に見える人は悪を隠している可能性があります。
かくいう私も、自分の汚点は隠したい気持ちはあると思います。自分に素直になって、自分の為に自分の幸福を求める悪人に憧れたものの、悪人となった自分自身に耐えられる気がしませんでした。
その時はジキル博士と同じように、友人を失うという怖れもありました。
しかし、人間は善悪の両面があることを認め、自覚し、少しずつでも自分の悪人の面を徐々に増やしていく方が良いのかなという気持ちもまだあります。例えば些細な嘘をつくことから始め、モラルハザードを起こしていくという手順です。
ただしこれは取り返しのつかないことなので、慎重に考える必要があります。
今のところはしばらく様子を見るつもりです。

話が逸れましたが、最後にもう少し作品の話を。
最後のジキル博士の手紙の供述を踏まえて、もう一度最初から読み直すと面白いのだろうなと思います。
この時博士はどんな気持ちだったのか、などと考えながら読めそうです。
博士は自業自得であると自供しながらも苦悩していました。自業自得というのは、現実では他人を見捨てる時によく使われるように思います。結局の所身捨てるかどうかは各人に委ねられているわけですが、自業自得だからといって見捨ててしまうこともないのかなと私は思いました。
自己矛盾を抱えている人は世の中に多くいる、というより恐らく全員といっても良いかもしれません。その中で苦しんでいる人がいた時、手を差し伸べて力になれるような人になれたらいいなと思います。

おわりに

この感想文は本当は昨日投稿するつもりだったのですが、帰宅後にいつの間にか眠ってしまい、起きた時には日付が変わっていました。
最近は毎日投稿するようにしていたので、記録が途絶えて悲しいです。
でもそこでやめたら勿体ないので、また一から積み上げていこうと思います。

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