読書感想文(23)P・D・ジェイムズ著、羽田詩津子訳『高慢と偏見、そして殺人』

はじめに

こんにちは。笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

この本は図書館で見かけて思わず借りてしまった一冊です。
原作は勿論ジェイン・オースティン『Pride and Prejudice』(高慢と偏見、自負と偏見)です。
「そして殺人」なんて言われたら、読んだことがある人は絶対気になってしまうでしょう。
「いや、え、殺人……?」と困惑しつつ、読まなければと思いました。

ちなみに原題は『DETH COMES TO PEMBERLY』です。これを『高慢と偏見、そして殺人』と訳したのは、目を引くという点では大成功だと思います。

感想

まず全体的な感想として、正直なところ、期待していたほどは楽しめませんでした。ただし、期待値が高かったから、というのも断っておきます。『高慢と偏見』は新潮文庫で去年一度読んだだけですが、去年読んだ本トップ5に入れるくらいには好きな作品でした。なので、かなり期待していたのです。

なぜそれほど楽しめなかったのかというと、まず翻訳です。直訳を心がけているからなのかわかりませんが、ものすごく読みにくく感じました。ただ、推理小説は一言一句正確であることが大切だとは思うので、仕方がないのかもしれません。
「訳者あとがき」にはP・D・ジェイムズが本作を書いたことについて述べられていますが、どういう方針で翻訳したのかを是非書いてほしかったなと思いました(そんなこと言ってもしょうがないですが笑)。

それほど楽しめなかったポイントの二つ目として、「殺人の必要あった?」と思ってしまったことです笑。
この作品は大前提として『高慢と偏見』の世界観を受け継いでいます。そこで推理小説となると、「ダーシーが明晰な頭脳を持って事件の真相を暴く!」みたいな感じかと思っていたのですが、そんなことありませんでした笑。私の中では推理小説がホームズだったので、そこは探偵小説と分けて考えるべきなのかもしれないなと思いました。
私は推理小説をまだあまり多く読めていないので、推理小説としての良し悪しはわかりません。
というヘッジをかけた上で素直な感想を述べると、事件そのものは面白いし、確かに推理する余地もあったなと思いました(と後で思ってしまうほど、集中できなかったのですが……)。
けれども、その二つを結びつける必要性はわかりません。そこは作者の好みだと割り切ってしまうと、話は確かに面白かったのかもしれません。そこで素直に面白かったと思えないのは、やはり訳が自分に合わなかったからかもしれません。

次に、この小説の良かったなと思うところも書いておきます。
この小説で私が一番楽しんだのは、プロローグとエピローグです笑。
プロローグは世間の目線からエリザベス達の事が描かれるので、面白かったです。
エピローグはダーシーとエリザベスがイチャイチャしているのが面白かったです。というのは半分冗談ですが、やはり後日談を想像して描かれているのは面白かったです。
この小説では事件の為に色々設定が追加されています(多分)。正直、どれが元々の設定でどれが新しい設定なのかわかりませんでしたが、それくらい自然に作られていたという事なのでしょう。
『高慢と偏見』からどういう所を受け継いで、どういう所を追加したのか、比較してみるのも面白いかもしれません。『高慢と偏見』も久しぶりにまた読みたいです。

エピローグについてもう少しだけ笑。
イチャイチャしてるのが面白かったというのは半分本気なのですが、もう少し正確に言えば二人の心がぴったりと合っているように感じられる部分がとても良いなと思いました。そしてこれは『高慢と偏見』でも感じたことです。「だからこの作者はよくわかってるなぁ」なんて偉そうな事を言うつもりはありませんが、シンプルに「良い!」と思いました笑。
ちなみに私が一番好きな作品と言っても過言ではないC・ブロンテ『ジェーン・エア』(大久保康雄訳、新潮文庫)には次のような一節があります。

彼とともにいると、うっとうしい遠慮もなく、浮き立つ気持ちを抑制するものもなかった。それは、わたしが彼にぴったり適合していることがわかり、完全に安らかな気持でいられたからである。わたしの言うこと、わたしのすることは、すべて彼を慰めるか元気づけるかするらしかった。なんという喜ばしい意識!それはわたしの心に生命の光明をもたらした。彼という存在のなかにこそ、わたしは生き、わたしのなかにこそ彼は生きるのだ。

この前半部分に近いように思われます。後半部分も好きなので一緒に引用しましたが、今読んでみるとちょっと眩しいです笑。ちなみに以前書いた読書感想文からコピペしたので、暗記しているわけではありません。

と、まあ『ジェーン・エア』の宣伝もできたので今回はこのくらいにしておこうと思います。

おわりに

有名な作品の二次創作を読んだのは初めてかもしれません。調べてみると、『高慢と偏見』の二次創作は他にもあるようです。
そしてなんと、『高慢と偏見とゾンビ』という、これまた奇想天外な作品を見つけてしまいました。
先に『高慢と偏見』を読みたいので少し先になってしまうと思いますが、絶対読みたいです。B級映画感があるタイトルなので、期待値を下げて臨みたいと思います(失礼)。

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