読書感想文(138)西加奈子『はちみつ色の』

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回は西加奈子さんの作品ですが、ほっと文庫という、ちょっと珍しい短編です。昔、入浴剤とはセットになって売れられたものです。

今回読んだきっかけは、「2月は15冊読むのが目標なのにまだ13冊しか読めていない!やばい!そうだ!短いほっと文庫を読もう!」という、不順な動機です笑。でも、1冊は1冊なので……笑。
まあそのおかげで今回この作品を手に取ることができたということで、前向きに捉えています。

感想

なんというか、不思議なお話でした。
主な登場人物は3人、主人公のセイちゃん、双子の妹のテンちゃん、そしてお母さんです。
テンちゃんが亀になるところから物語は始まります。テンちゃんは「はちのこ学級」という、恐らく特別支援学級と思われる学級に所属しています。そんなテンちゃんはテレビの亀を見て、亀になります。最終的に1週間亀を演じ切って、その間は食べ物もバナナ(はちみつがけ)しか食べません。
その間に、作家のお母さんが編集者の野村さんの結婚報告を受け、悲しみます。嘆くお母さんを慰めるように三人でハチミツをかけたバナナを食べて、物語は終わります。
物語の印象的な出来事は主に二つ、テンちゃんの亀化とお母さんの失恋なのですが、これらが上手く頭の中で調和しません。結局なんだったのだろうと不思議な気分です。
強いて言えば、普通ってなんだろうと問われているような気もします。

物語全体における位置付けはわからないのですが、化粧の話も印象的でした。
10人女の子がいるとして、1人がマスカラをつけたら、他の9人もマスカラをつけたくなる。なぜならマスカラをつけた方がモテるから。皆がそうやって周りより一歩抜きん出ようとして、どんどんハードルが上がっていく。
化粧については昔似たようなことを考えたことがあるのですが、加えて言えば、皆でやめようにも、そもそも自分が綺麗であるために化粧をしたい人もいるので、そういうわけにもいきません。

このすぐ後に、どうせ後ですっぴんを見られるなら最初から見せても良くない?→いやいや、最初はまず好きになってもらって、それから少しずつ本当の自分を見せていくのが良い、という流れがあります。
これについてもよくわかります。これは化粧以外もそうなんですよね。
私は基本自分を本来の自分以上に良く見せたいと思わない(そんなことする暇があるなら「本当の自分」をより良くしろと思う)のですが、故にモテないのも事実なのです笑。この点を検証するために実はここ2年くらいで色々と試してみたのですが、人間意外とちょろいな〜と思いました。人を実験に使うのはあんまり趣味が良くないという自覚はあるので、もうそろそろやめようと思っています。

ここをもう少し深堀りしようとすると、平野啓一郎『マチネの終わりに』を思い出しました。

「(中略)……わたし自身、どうしてイラクに二度も行ったのか、あれからまた自問自答してるけど、やっぱり、そういうルーツの問題もあるわね。あんまり認めたくはないけど。」
「もっと早く話してくれても良かったのに。」
「人間関係を、そういうところから始めたくないの。色気も何もないでしょう?もっとアピール・ポイントがあるのよ、わたしにも。」
「知ってるよ。結構、詳しい方だと思う。」
「ありがとう。……でも、今はもう、そういうことも、知っておいてほしいから。」
「自分の人生の一部のつもりで聴いてるよ。」

「人間関係を、そういうところから始めたくないの。色気も何もないでしょう?もっとアピール・ポイントがあるのよ、わたしにも。」というところです。
この場合はそもそもアピールポイント即ち良い部分から、ということなので、本来の自分を偽るというのとは異なりますね。自分の良い所が虚像であれば、後にその良い所が消えてしまうから私は抵抗があるのでしょう。勿論、化粧については「化粧をした時に綺麗」という長所は事実であり、これは例えば周りに美人と交際している事を自慢したい人にとっては確かな長所でしょう。その場合は結局「美人と交際している自分」という虚像を作っているに過ぎませんが……。

おわりに

今回はいつも以上に的外れな感想文かもしれません笑。
また読み返したら新しい発見があるかもしれないので、気が向いたら読んでみようと思います。

ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。

(絶版なのでAmazonだとかなり高そうです。メルカリ等だともう少し安かった気がします。アフィリエイト等はやっていないので、読んでみたい方はリンクを気にせず色んな所を探してみてください)


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