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和文英訳対策のおすすめ参考書

こんにちは。札幌で英語講師をしているアラと言います。

夏ですね。札幌はもう大分涼しいんですけども。受験生にとっては今ほど重要な時期もないかもしれません。現役生は今がっつり勉強時間を稼がないといけませんね。また学校が始まって忙しくなれば、思うように時間をとれるとは限りません(北海道はもうすぐ夏休み終わっちゃいますが)。夏休みの間に、基礎の確認と志望校の過去問のチェックを忘れずに行いましょう。過去問の形式をノートにまとめておくことをお勧めします。志望校で出ない形式の勉強をしている時間はもうありません。がむしゃらにやるのではなく、計画的に。浪人生は生活のリズムを崩さないよう、淡々と勉強を続けましょう。外野の声に振り回されないようにしましょうね。

難関大学の英語といえば

さて、難関大学の入試英語といえば英作文です。その中でも二つパターンがあって、問題文の日本語を英語に訳す和文英訳と、自分の考えを述べる自由英作文に分かれます。大抵の難関校は両方出します。

自由英作文の対策は、やはりどこかで添削を受けたほうが良いでしょう。思いの外自己流の書き方をしてしまう人が多いです(例えば、なぜか一文づつ改行していたり)。誰かに指摘してもらわないとなかなか気づかないことも多いので、学校や塾、予備校を上手く活用しましょう。

とはいえ、これまで僕は色んな難関大学の志望者たちの英文を読んできましたが、高校三年生の段階であっても上手く書ける人は多くありません。子供っぽい文を書く人がほとんどです。I like なんちゃら、 because なんちゃらっていう感じです。

札幌の高校生がよくはまる罠

これは札幌の高校あるあるなんですけど、北大は「最悪、英作文を書かなくても合格できるらしい」とか「設問では70語から100語で書けと言われているけれど、60語でいいらしい」といった都市伝説が実しやかに囁かれています。正直言って、札幌の子は北大舐めすぎです。大学側の本気を疑っても何一つ良いことはないですよ。100語で書けという大学側のメッセージを額面通り受け取るべきです。高校一年生の頃からそんなふわふわした情報に接していると、どうしても英作文に対して本気になれない子が多いようですが、僕が見てきた範囲では、そういう子は本番ひどい目に会いがちです(そしてあまり同情してもらえない)。

一方、北大ではない難関大学を目指す子たちは、だいたい和文英訳が出るので、英作文に対して割と早い時期から真剣であるように思います。自由英作文と違って赤本や参考書の正解が納得しやすいこともあり、対策にも手応えを感じる子が多いよと感じます。個人的にも教えてて楽しい問題形式ですね。僕の授業では文法事項の復習にも和文英訳を使っています。

和文英訳対策におすすめの参考書

勉強の手応えを感じやすい形式なので、受験に関係なくても学ぶ価値があると思います。そこでおすすめの参考書のご紹介。

木村達哉・柴原智幸著『キムタツ・シバハラの英作文、対談ならわかりやすいかなと思いまして』です。

この本は、受験生にお馴染みの灘高の先生であるキムタツ先生と、BBCの放送通訳やNHKラジオの英語講座講師を務めた柴原先生という英語の達人二人による対談本です。非常にユニークな形式で、達人のお二人が別々に同じ和文英訳問題の答えを書いて、対談しながらお互いに論評しあうという、かなり珍しい参考書です。問題を解くというよりは読み物です。

日本語と英語には本来何の関係もない

僕も授業で生徒さんたちにクドクド言うのですが、日本語と英語には本来何の関係もないのです。自転車とスパゲッティぐらい関係がない。だから、日本語の単語を英語の単語に置き換えるだけでは訳をつくることはできません。「今日は妙に腹がへる。」という日本語文を英訳するには、そのまま単語を置き換えて"Today is strangely hungry."としてしまっては意味不明です。まずは、誰がどういう思いでそう発言したのかを考えなくてはいけません。そうすると、例えば"I'm feeling hungry too often today."とかそんな感じに書けるでしょう。「妙に」が訳されていない、と言われればその通りですが、「too」にその思いを込めた、と言い返すことも可能です。和文英訳問題は、唯一の正解を探してお行儀よく答えるのではなくて、自分なりの正解を作ってそれを大学の先生に投げつける感覚が必要だと僕は思ってます。

とはいえ「今日は妙に腹がへる。」と"I'm feeling hungry too often today."の間にはかなり距離があるように感じますね。なんか進行形だし。この日本語文と英文の間をかなり詳しく説明してくれるのが本書です。言語はやっぱり人間の感情と結びついていますから、「その表現を選んだことで、どういう気持ちを伝えようとしているのか」という点がとても大切です。文法事項を意味や気持ちと結びつける勉強はとても有意義だと思うんですが、なかなか受験の参考書では強調されない点だと思います。

「こうきたらこう。」ではなくて、「日本語がこうだから、こういう感情が表現されているので、英語ではこうなる。」という訳のプロセスがよく説明されているうえに、本書はそれが二人分あるわけです。どんな言語でも、人によって場合によって気持ちの表し方は違うはずです。本書は「こういう言い方もあって、それはこんな気持ちを表現している。」というところを日本語で二つ同時に解説してくれるので、お勉強的には効率が良い。普通の読書体験としてもかなり楽しいです。

急げ! 受験生!

ということで、受験生の人は早めに読んだ方がいいでしょう。冬になってから手にとってもちょっと持て余してしまうと思います。栄養価が高すぎるというか。受験生じゃない人は、ちょっと腰を据えてじっくり読み込んでほしいですね。英語という科目にとどまらず、考えること全般のヒントが得られるかもしれません。お二人の着目の仕方の違いが結果として出来上がる英文をまったく別のものにしてしまう様子は、ある種の爽快感さえ感じさせます。論理的に考えることの威力を直に味わえるでしょう。

さらに、勉強の仕方に悩んでいる人にも発見が多いと思います。僕の経験上、勉強の仕方に悩む人というのは、ありえないくらい高効率な勉強法を想定してそれを追い求めている人が多いです。どんなに上手くできるように見える人も、実は単に情報を一つずつ処理しているんだ、ということを本書で知ってほしいですね。

あと、札幌の高校生諸君、くれぐれも北大をあなどらないように。

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